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第9話 ゴブリンが初めてプールを見るような物語

「あの馬鹿! ゴブは見られちゃいけないってわかってるのかよ!」


 桃子、吟子、赤也、黄切が葵を追いかけます。しかし、葵は中々足が早いです。


「なんであの子水着なんだ?」

「あぁ、C組の葵だろ?」

「そういえば、よく水着で走ってるな」

「ところで今、小脇に変なの抱えてなかったか?」

「そうか?」


 そして赤也の心配どおり、確かに葵は目立っていました。しかし、彼女の場合校内を水着で走っているという点でのインパクトの方が強いため、肝心のゴブにはそこまで目が行かないようです。


「よかった、桃子、どうやらあの水着が目を引いて逆にゴブを目立たなくしているようだぞ」

「うん、良かったね。結果オーライだよ」

「あ! でも前から聖子ちゃんが!」

「これは厄介なのである」


 聖子先生は普段は聖子ちゃんと親しみを込めて呼ばれていたりします。その聖子先生が前からやってくるのが見えました。これはピンチかもしれません。


「海駕さん! またそんな格好で、駄目ですよ~」

「うん、でもすぐプールにいくから~」

「もう、そういう問題じゃありません! て、あれれ?」


 海を泳ぐマグロの如く快速で横切る葵を聖子先生が注意します。しかし、そこで顎に指を当てキョトン顔を見せました。


「待て葵!」

「あ、廊下を走っちゃいけません!」

「ごめんね先生」

「もう! あ、それと今、海駕さん、何か抱えてなかった?」

「気のせいです」

「幻です」

「ぬいぐるみです」

「残像だ」

「へ、へぇ~……」


 先生を置き去りに遠のいていく四人を目にしながらぽか~んっとする聖子先生。

 ですが、まぁいっか、と歩きだすのでした。


 一方宣言通り葵はプールにやってきてました。桃子達もなんとか追いつきます。


「よっし! ゴブっち! 一緒に泳ごうな!」

「ご、ゴブ?」

「いっくぞ~~~~~~!」

「ゴブ!? ゴブウゥウウゥウウウウウウ!」


 そして葵がゴブを抱いたままプールに飛び込むと、バッシャーーーーんと大きく水しぶきがあがりました。


「ゴブちゃん!」


 それを目にした桃子がゴブの名を呼びながらプール際まで駆け寄ります。


「あはははは! どうだゴブっち~泳ぐのは気持ちいいだろ~」

「ゴブ~! ゴブ~! ゴブブブゥ!」


 笑いながらプールを猛烈に泳ぎまくる葵です。しかし、肝心のゴブは手をバタバタさせて顔をアップアップさせてました。


「ちょ、ちょっと! ゴブっちこれ、泳げないんじゃない?」

「葵ちゃん! ゴブちゃん溺れてる!」

「え~? はは、まさか~」

「ゴブっ! ゴブっ! ゴブっ!」

「う~ん? あれれ~? おかしいな~?」

「おかしいなじゃねぇよこの馬鹿!」


 赤也が上着を脱いでプールに飛び込みました。どう見ても溺れているゴブを助けるためです。


「なんだよゴブっちお前、泳げなかったのかよ~」

「ゴブ~……」

「ブホッ!」


 しかし、赤也が飛び込んだとほぼ同時に、葵がゴブを抱きかかえて救出してました。それを認めた赤也は飛び込みながらズッコケます。


 結局そのままドボンっと水の中に赤也の体が沈み込んでいきました。


「お・ま・え・なぁ!」

「うん? 何怒ってるんだ? 水の中にいるのに~」


 ヌッと水の中で立ち上がり怒りを彼女にぶつけます。ですが葵は不思議そうに首を傾げました。


 葵にとっては水の中≒楽しいことなので、赤也が怒っている意味が理解できなかったようです。


「暁くん大丈夫?」

「体は大丈夫だけど、無駄に濡れちまったよ……」

 

 びっしょびっしょになった赤也はやれやれといった表情でプールサイドに出て、シャツも脱いでみせました。


「ちょ、女の子がいる前であんた」

「別にいいだろ下半身を脱いでるわけじゃないんだし」

「いや、まぁそうかもだけど」

「う~ん、やっぱり暁くんは引き締まった体してるよね」


 頬を染めて返す吟子。一方桃子は特に遠慮することもなく赤也の肉体を褒めた。


「……なんかそういう言われ方すると照れるな、いたぁあああ!」

「この不届き者! 校内でしかも桃子殿を誘惑しようなどとは不届き千万!」

「いや、待て待て、誰が誘惑したんだよ!」


 黄切が竹光で赤也を切りつけました。バスケで鍛えた柔軟な筋肉の持ち主でもさすがに素肌にこれは痛いのでしょう。


「黄切ちゃん落ち着いて。私は別に誘惑されてないしなんとも思ってないから」

「そ、そうなのでありますか?」

「清々しいぐらいはっきり言われたな。てかなんだこの殴られ損な感じ?」

「ゴブ~」


 愚痴をこぼす赤也。一方ゴブリンは何をしてるんだろう? という目で皆を見ていました。


「皆ここにいたし~たし~」

「あ、喫茶」

「あれれ~? あれれ~? 赤也ってばてば、こんなところで露出中らし~らし~」

「いや、変な言い方するなよ。あとなんでさわんだよ」


 プールに新たに姿を見せたのは喫茶でした。すぐに赤也が気が付き、そんな赤也に近づいて腕などをペタペタと触りだします。


「う~んう~ん、まだまだ先輩に及ばないけど、中々いい体になってきたじゃん、じゃん」

「……んだよ、放っとけよ」


 褒められているようにも思えますが、何故か不機嫌になる赤也なのです。


「喫茶もせっかくだし泳ごうぜ~」

「おっけ~おっけ~」

「いやいやおっけ~じゃねぇよ!」


 制服の裾に手をかけ捲り上げる喫茶でしたが、赤也からストップがかかりりました。


「なんで止めるし~し~」

「なんでって、お前その中水着じゃないだろ!」

「う~ん、ん~そうだけど~だけど~」

「いや、そんな当たり前みたいに……つまりそれ脱いだら下着ってことだろ?」

「大丈夫大丈夫、見られて減るもんじゃないじゃん? じゃん?」

「大丈夫じゃねぇって! 大体帰りどうすんだよ!」

「脱いでけばへ~きへ~き」

「平気じゃねぇ!」


 喫茶の突飛な行動に頭が痛そうな赤也です。


「暁も大変そうね」

「でも、仲いいよね」

「そう?」

「むぅ、惜しむべきは今この場で桃子殿の水着姿がみれないことか!」

「ゴブ」


 そんなやりとりを皆がしてる中、ゴブは足だけ水に浸しパシャパシャさせながらなんとなく相槌を打っていました。

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