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第6話 ゴブリンが必死に身を隠すような物語

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「みんな~おはよ~」


 そしてゴブを用具入れに隠し扉を締めたところで白のブラウスに膝丈のフレアスカート姿の担任教師が教室に入ってきました。

 派手さはなくかといって地味でもないファッションは教師として丁度いい塩梅を保っていると言えるでしょう。

 髪型も肩まであるアシンメトリーなスタイルで清潔感も感じられます。


 彼女の名前は白藤(しらふじ) 聖子(せいこ)。見た目は童顔で可愛らしい面立ちと言えるでしょう。とはいえ胸部に関して言えばしっかり大人であることがアピールされてますが。


 女生徒からは友だちみたいと人気が高い先生でもあります。叱るときには叱る厳しさもありますが、基本的には生徒思いのよい教師です。


 教壇に立つと生徒はつぶさに教室を確認しました。そして誰一人欠けていないことを認めニッコリと笑顔で朝の挨拶を始めます。


 ホームルームは特に問題なく進められているように思えます。時間としてもそれほど長いものではありません。ここは無難に乗り越えたいところです。


 一方ゴブはというと用具入れの中でできるだけ動かないようにジッと息を潜めていました。勿論ゴブは生徒たちの言っていることを詳らかに理解しているわけではないでしょう。


 ですが、雰囲気的にここは騒いだり目立つようなことは控えたほうがいいと察した、つまり空気を読んだのです。


 ゴブリンはどうやら人間にかなり近い知能をもっているようです。もしかしたらあまり変わらない可能性もあります。


 とにかくゴブはジッと待つことにしました。とにかくこの扉が再度開くまでは大人しくしていようと決めました。


 ですが、そういったときに限ってトラブルは降ってくるものです。ほんの僅かだけゴブが動きました。ですが、その僅かな動きが外側に伝わり、それがモップに伝わったのです。結果、モップが傾きました。それだけならば特に問題はなかったかもしれません。


 ですが、なんたる偶然か、運の悪さが、モップの頭が外れストンっと落ちてきたのです。このモップは取外し可能なタイプで締めることで固定されるのですが、その締め付けがどうやら緩かったようです。

 

 落ちてきたモップの先はゴブの頭の上に乗りました。毛の生えてなツルンっとした緑色の頭に、黄色い髪の毛が生えたようです。

 

 ですが、問題はその毛がゴブリンの鼻に掛かってしまったことです。これがゴブの鼻を刺激し、当然そうなるなと――


「ゴブッシュン!」


 そう、くしゃみとなり周囲に発信されることとなったのです。一瞬にしてクラスの皆がフリーズしました。


「……え? あれ? 今なにか変な声が聞こえなかったかしら?」


 気づかなければそれで良かったのですが、流石にそううまくはいきません。聖子はゴブのくしゃみを聞き逃しはしなかったのです。


 どうやら用具入れには、まだ意識が向いてないようですが、このまま黙っていてはもしかしたら感づかれるかもしれない。


 教室内になんともいえない緊張感が走りました。

 う~ん、と悩む先生の目が教室の端に向きました。


 用具入れとは反対の端です。ですが、視線が少しずつ移動していきます。ゴブが焦って動いたりしたら危険ですし、例え黙っていても不信感を抱かれてはいけません。


「ご、ごぶっしゅん!」

「え?」


 ですが、ここで動き出した生徒がいました。黄切です。桃子の友達である黄切がゴブと似たようなくしゃみを発したのです。


「ごぶっしゅん! ごぶっしゅん!」

「え? 菊正宗さん大丈夫? もしかして風?」

「い、いえ、私、少々鼻がムズムズしてしまいましたのです。忝ない! ごぶっしゅん!」

「忝ないって使い方それであってたかな?」


 妙なところに細かい聖子でもあります。何はともあれ、この場は黄切の咄嗟の機転によって難を逃れる事が出来ました。


 こうしてちょっとしたハプニングはあったもののホームルームは無事乗り切ることが出来たのです。


「さっきは危なかったけど、黄切のおかげで助かったね」

「うん、ありがとう黄切ちゃん」

「桃子殿にそう言ってもらえると光栄の極み! えへっ、えへへへっ」


 黄切は桃子に感謝されてとても嬉しそうです。頭を手で撫でながら顔も蕩けてしまっています。


「黄切ってば、か~い~か~い~」

「な、よ、よせ!」


 そんな黄切を見ていた喫茶がぎゅっと抱きつきました。桃子にデレデレな黄切が喫茶からすれば愛らしくてたまらないようです。


「ところでゴブっちは大丈夫かな?」

 

 吟子が用具入れを気にします。どうやら彼女は喫茶の呼び方が気に入ったようです。


「ゴブちゃん大丈夫?」


 桃子が用具入れの扉を開けました。


「ゴブ~……」


 するとどこか面目なさ気なゴブがそこにはいました。くしゃみをしてしまったことを気にしているのかも知れませんが。


「……なんで髪の毛生えてんだ?」

「プッ――」

 

 なんとけなく言った赤也の言葉で黄切が吹き出しました。どうやらツボに入ったようです。


「本当、まるで髪の毛生えてきたみたいらし~らし~ゴブっち超イケてるし~し~」

 

 喫茶がゴブの髪、正確にはモップの毛をポンポンっと叩きながら面白がりました。

 それにつられて全員が笑顔になります。キョロキョロとゴブが全員を見回します。


「ゴブッゴブッ♪ ゴブッゴブッ♪」


 すると何を思ったのかゴブがその場で踊りだしました。奇妙な踊りですがどこか楽しくなる踊りです。


「ははっ、なんだこいつ踊れるのか」

「……面白い」

「おかわいらしいですわ~」


 踊るゴブをみて、どこかほっこりする時間が訪れました。とはいえこの休み時間は短いです。すぐに授業が始まるのでゴブは再び用具入れの中に戻りました。


 それから授業は進みますがこれといった問題もなく時間が進んでいきました。

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