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第2話 ゴブリンが女子高生と触れ合うような物語

 この時、既に桃子の中では警戒心というものが消え去ってました。

 ひとしきり踊り終え、じ~っと桃子を見上げてきました。最初は驚きましたが、よく見ると可愛い顔をしているな~と桃子は思いました。


 手をそっと伸ばし、そのツルンとした緑色の頭に触れてみました。肌はとてもすべすべしていました。そして感触はぷにぷにしてます。


 頭をなでてみると気持ち良さそうに目を細めました。犬や猫をなでているようです。ちょっと変わっていますがこの時点で危険な生物ではないと桃子は確信します。


「あ、桃子おはよう早いね~」

「桃子殿、おはようなのである」

「あ、吟子ちゃん黄切ちゃんおはよう~」


 すると教室に少女が2人入ってきました。2人とも桃子の友達です。


 一人は桃子の幼稚園からの幼馴染、亜留美(あるみ) 吟子(ぎんこ)。癖のあるセミロングな髪とパッチリとした瞳が印象的な活発な女の子。


 もう一人は高校に入ってから仲良くなった剣道少女、菊正宗(きくまさむね) 黄切(きぎり)

 濡れ羽色の黒髪をアップで纏めたキリッとした女の子です。


「あれ? え? 何その生き物?」

「むむっ!」


 そして、当然ですが二人共、桃子の側に立つその存在に気が付きます。


「桃子殿危ない!」

「え? キャッ――」


 声を張り上げ、黄切が床を蹴り、瞬時に桃子を背中側に回します。そして腰に帯びた刀を抜き、その生き物を正面に見て構えました。


「ご、ゴブゥウゥウウゥウ!」

「おのれ物の怪! 桃子殿を襲うとは不届き千万! そこのなおれ! この菊一文字で成敗してくれよう!」

 

 黄切が鼻息を荒くさせ勇ましい口上を述べました。尤も刀と言っても彼女の持っているのは竹光。剣道部であり風紀委員でもある彼女は常にこれを腰に帯びているのです。


 勿論菊一文字も彼女がそう名付けているに過ぎませんが、しかし、代々伝わる武士の家の出だけありその腕は確か。竹光とはいえ彼女が扱えば幅50cm厚さ10mmの鉄板であっても一刀両断に出来てしまいます。


 それだけの腕を持つ彼女だからこそ、未知の生物、黄切曰く物の怪が相手であっても物怖じすることなく立ち向かえるのでしょう。


「駄目! 黄切ちゃん!」

「え?」


 とは言え――すでにこの生き物を危険とは思っていない桃子は流石に黙ってはいられません。

 すぐに割って入り、逆に緑色の肌の生き物を庇い立てました。


「桃子ちゃん、駄目です! 危険です!」

「危険じゃないよ。ゴブちゃんは人に危害なんて加えないもん!」

「ふぇ? ゴブちゃん?」

「ゴブ~……」

「な、何を言ってるんですか桃子殿! どう見てもそれは異形! 妖怪! 物の怪! 妖の類ではあるまいか! 風紀委員として見過ごすわけには行かぬであります!」


 黄切はキッとその生き物をにらみながら、桃子にどけるよう説得します。構えを解く様子はありません。


「駄目! いじめちゃ!」

「へ? 虐めるって、そんな、私は桃子殿が危険ではと思って……」

「黄切ちゃん……めっ!」

「が、がーーーーーーん!」


 桃子の発言に黄切はショックが隠しきれませんでした。この世の終わりのような顔をしています。肩を落として項垂れてもいます。


「嫌われた、桃子殿に嫌われた……」

「桃子、その、え~と、なんだろ? ゴブちゃんでいいの?」

「うん、ゴブ~って喋るからゴブちゃん」

「そうなんだ。それで、そのゴブちゃんは桃子のペットか何か?」

「違うよ~あのね。朝から教室に来たらこの子がいたの」

「いた? そのゴブが?」


 吟子が桃子の足元を見ます。小さなゴブは桃子の後ろに隠れながら顔だけひょっこりさせて吟子を見てます。警戒心を抱いてはいるようですが、桃子にはなついてそうです。


「ふ~ん。それにしても随分と変わった生き物だよね~」

「嫌われた……桃子殿に嫌われた……」

「黄切ちゃん。私、黄切ちゃんのこと嫌ってなんて無いよ~」

「え? ほ、本当か? 私の事、本当に嫌ってないのか?」

「うん」


 桃子の返事を受け、黄切は瞳をランランと輝かせました。


「そ、それじゃあこれまで通り友達でいてくれるのか?」

「勿論だよ。私、黄切ちゃんのこと好きだし」

「す、好きぃいいぃぃいいぃい!」


 顔を真っ赤にさせて頭からぷしゅ~と湯気が上りました。そのまま卒倒しそうな黄切です。


「本当、黄切は桃子のこと大好きだよね。でも、私だって大好きなんだからね!」


 そういいながらギュッと桃子を抱きしめる吟子なのでした。


「ゴブ~」


 そんな吟子を桃子の足元のゴブが不思議そうに見上げます。


「でも、本当不思議な生き物だよねゴブ」

「うん、でも大人しいしいい子だと思うよ」

「へ~おわ、肌ぷにぷに」


 しゃがみこんでゴブの体をつんつんと突っついた後、頭をなでました。


「き、危険はないのでありますか?」

「安全だよ~」

「か、噛まないでありますか?」

「大丈夫だって。黄切もなでてみなよ」

「そ、それでは」

 

 黄切もしゃがみ、ゴブの頭へ手を伸ばしますが。


――サッ! じーーーーーーと逃げるように桃子の後ろに隠れて警戒心のこもった目で黄切を見てきます。


「がーーーーん!」

「はは、きっと第一印象が悪かったんだよ」

「刀を取り出したのがいけなかったのかな~?」

「か、刀と言っても竹光であります!」

「いや、それでも怖いって」


 確かに竹光とは言え、突然武器をもった相手を見たら怖がるのも当然かも知れません。


「オッハー♪ オッハー♪」

「おはよう」


 すると、また2人教室に入ってくる生徒の姿。今度は男女です。

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