第18話 ゴブリンとは別に不審者がうろつくような物語
「あ、やっぱり桃子きてたんだ」
「桃子殿おはようでございます」
「あ、吟子ちゃんに黄切ちゃんおはよう」
「おっはー! ゴブっち元気~?」
「喫茶ちゃんもおはよう~」
結局昨日のメンツが大体揃ってしまいました。そして吟子はパン類を、黄切はおにぎりを、喫茶はお菓子やジュース類をもってきてくれたのです。
「何か食べ物も飲み物も一杯揃っちゃったね」
「ゴブ~♪」
「これだけあれば暫くは大丈夫そうだな」
部屋の一角に小さな食べ物の山が出来上がりました。それを見ながらごきげんなゴブなのです。
「でも、ゴブちゃん食べ過ぎたら駄目よ」
人差し指を立て、桃子が諭すように言いました。コクコクとゴブは理解を示します。
「それじゃあゴブちゃん、また学校が終わったらよるね~」
「またなゴブ」
「ゴブっちまた後でじゃん、じゃん」
「う~んもうすっかりゴブっちから目が離せなくなっちゃったね」
「私は桃子殿と一緒ならどこでもついていくのです!」
「……黄切はそもそも風紀委員の仕事はいいわけ?」
「う!」
仰け反る黄切なのです。どうやら思い当たる節がありそうですね。
「ゴブ~」
桃子達が学校へ向かいます。ゴブとも少しの間お別れです。ゴブは自然と遠ざかる桃子たちに向けて手を振りました。皆も振り返してくれました。
そして完全に見えなくなってくると、少しだけ寂しそうな顔を見せました。
「ゴブぅ……」
元気の感じられない声で呟きます。ですが、皆には皆のやることがあります。ゴブの為に学業を疎かには出来ないのです。
ゴブは賢いゴブリンです。当然そのことも察しています。なので見送りが終わった後は大人しくツリーハウスに戻りました。
そして差し入れされた絵本を読みながら大人しく過ごそうと決めたのです。
◇◆◇
「ねぇ桃子~昨日はあれからどうしたの?」
「ゴブっちは結局どうなったの?」
「うふふ、桃子、困ったことがあったらいつでも私に言ってくださいませ。なんでも力になってさしあげますですの」
「あれ? 桃ちゃんいつの間に黄金院さんとそんな仲に?」
「うふふ、私たち判りあえましたの。しかも! お金など関係なくですのよ!」
「それ、当たり前のことだと思うんだけど……」
「むむむ! これはとんだライバルの登場であります!」
「一体なんのだよ……」
今日は朝から桃子を中心に大騒ぎです。やはり昨日のゴブのことが皆気になってるようですね。
勿論それは桃子も判っているのであれからのことを説明しました。するとそうこうしているうちにあっという間にホームルームの時間が訪れてしまいます。
先生が教室に入ってきたところで一旦全員が話を切り上げます。
そして朝の挨拶を終え、聖子先生が眉を引き締めました。何か真面目な話があるのかもしれません。
「今朝は一つ、皆さんの耳にいれておかないといけないことがあります。実は昨晩、裏山周辺で不審者が目撃されました」
「え? 不審者?」
「ゴブリンだ! きっとゴブリンが大量に山に現れたんだ~~~~!」
立ち上がり春男が大声で叫びました。クラスの皆が人差し指を立てて黙るよう示唆します。
「ゴブリン? 春男くん、それは一体なんですか?」
「はい! 緑色の肌をした恐ろしい化物です! 集団で人を襲う恐れがあって危険なんです!」
あのバカ、と赤也が頭を抱えました。きっと皆同じ気持ちでしょう。
「そ、そう。でも春男くん、昨晩目撃されたのはそういうツチノコみたいなのとはちょっと違うかな~」
「ツチノコではありません! ゴブリンです!」
「う、うん。ゴブリンね。ですが、昨晩現れた不審者さんはそんな妖怪みたいなものではないので、座ってお話を聞いてくれると嬉しいかな」
先生はどこか戸惑っているようです。成績優秀な春男だけにその発言が不可解でもあったのでしょう。先生は何も知らないわけですから当然といえば当然です。
そして見つかったのはどうやらゴブではないようですね。
「くっ……違うとは。僕としたことが少々取り乱してしまったようですね」
眼鏡を直しつつ春男が席に付きました。ホッと胸をなでおろす一同です。
それにしても春男はどうやら、こうと思い込むと周りが見えなくなってしまうことがあるようです。困ったものですね。
「話を再開しますが裏山で不審者さんがあらわれたんです」
「不審者さんって……」
「先生、さっきの春男の流れ引きずってるな」
不審者にさんをつけてしまったりと中々のうっかりさんです。
「え、え~と、とにかくそういうことなので、皆さん学校終わりなどは気をつけてください。不審者についてですが、見た目はここの皆さんと同年代の少年程度。そしてゲームの中から飛び出してきたようなコスプレをしていたといいます」
「コスプレをしているから不審者だなんて偏見だと思います!」
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