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第13話 ゴブリンの住処を見つける物語

「ま。そりゃそうだよな」

「残念らし~らし~」

 

 珍しくしょげてる喫茶です。赤也はわかったように頷いてますが――実はあの後、喫茶はダンスをしていたメンバーからゴブを預かるのは無理だとお断りされたのです。


 ゴブを褒めたのは本心でしたが、彼らとはダンスの方向性が違うのと、きぐるみ(実際は違いますが)のままというのもスタンスがことなるため合わないということ。


 何よりメンバー全員バイトで生計をたてているような身なので誰かを養う余裕なんてとても持てないということだったのです。


「中々切ない話でありますな」

「まぁ、本気でプロとしてやっていこうとしているんだからその分苦労も多いんだろうね」

「うう~うう~」


 喫茶はこれで本当にゴブのことを考えての行動だったようです。だからこそあてがはずれて悔しいのでしょう。


「でも、喫茶ちゃんの友達いい人だったね。断る時もしっかり理由を言ってくれたし、何か申し訳なさそうで逆にもうしわけないぐらいだったもん」

「ゴブ~」

「そ、そうじゃん! みんないいやつじゃん! じゃん!」


 桃子に友達を褒められて嬉しそうな喫茶です。


「全くもう笑顔で単純だな喫茶も」

「くよくよしないことがあ~しのいいところじゃん! じゃん!」

「それ自分で言っちゃうんだ」


 吟子が口にし皆で笑いました。ゴブも、ゴブゴブ♪ と愉しそうです。


「でも、ゴブちゃん、本当にどうしよう……」

「ご、ゴブ~……」


 ここまで色々考えてきましたが、ゴブをどうするかの解決策がみつかっていません。

 

 ですが時間は刻々過ぎていきます。まず今夜どうするかから決める必要があるでしょう。


「……ふぅ、仕方ない。あそこに言ってみるか」

「暁くん、何か知ってるの?」

「あぁ、とにかくついてきてくれ」


 赤也が何かを思い出したように言い、そして皆を促します。

 なので桃子達はゴブを連れて今度は赤也についていくことにしました。さて、今度は一体どこに向かうのか。





「何かと思ったら学校の裏山?」

「あぁ、確かこっちだと思ったんだけどな」


 赤也についていった先は、高校の裏山でした。標高で言えば山というよりは丘といったところで、公園があったりもしますが、緑が多いのが特徴でもあります。

 

 山には広葉樹が立ち並んでおります。このあたりは広葉樹林で、高校生一人が潜れるぐらいの間隔で樹木が不正確な列を作っていました。


 見上げると広葉が掛かり空と緑のコントラストが映え渡ります。

 

 そして茶色い土の上を暫く進むと、あ、と赤也が声を上げました。


「あったあった。よかったまだ残ってた」

「うわぁ~ここなつかしいじゃん! じゃん!」

 

 手を翳すようにし、それを見上げて赤也が懐かしそうに目を細めます。隣に立った喫茶も子どものようにはしゃぎました。


「すごい木の上に家が建ってる」

「これ、もしかして暁くんが?」

「あぁ、子どものころに友だちや兄貴と協力して作った秘密基地さ。喫茶もいつの間にか加わってよく入り浸ってたよな」

「うんうん、お菓子とか~とか~持ってきて食べてたじゃんじゃん」


 ブナの木を利用して造られた秘密基地。いわゆるツリーハウスは中々に本格的です。広がる枝も土台に利用し、うまく水平を保っていました。


「あ、もしかして……」

「あぁ。ゴブが住むのに、どうかなと思ってな」

「へぇ~赤也にしてはいいアイディアだよね」

「ちょっと待て俺にしてはってなんだよ」

「ふむ、でもすぐに壊れたりしないでありますかな? そうだ、ここは剣道部兼風紀委員としてこの菊正宗 黄切が菊一文字で切って見ようではないか」

「待て待て待て待て待て! お前がそんなもので切ったら壊れるに決まってるだろ!」


 腰の竹光(菊一文字)に手を添え、構えを取る黄切を赤也が全力で止めました。

 

 勿論すぐ壊れるほどやわではなさそうですが、黄切の腕前はちょっとした物置なら竹光でも一振りで一刀両断にしてしまうほどです。


 そんな力で切られては、いくら丈夫に作っていようと結局は木製。一溜りもありません。


「とにかく上がってみてから判断してくれ。あ、でも流石に一度に全員は無理だから三人まででな」

 

 ゴブも入れると全部で六人、ですが、ゴブが安全に過ごせるかの確認の意味があるので、ゴブは必然的にあとになります。


 なので桃子もゴブと一緒にということになりました。なのでまずは1番詳しい赤也が吟子や黄切と登り確認。

 

 ツリーハウスまでは梯子が掛かっているのでそれを利用することになります。


「問題なさそうだ。俺たちが乗ってもびくともしなかったしな」

「思ったより中は広くてびっくりしたよ」

「菊一文字で切るのは許してくれなかったのだ」

「当たり前だ」


 無念そうにつぶやく黄切に半目で声を上げる赤也です。


「それじゃあ、ももっち、ゴブっち、一緒にいくし~し~」

「うん」

「ゴブ~♪」


 喫茶を先頭に、ゴブ、桃子と続きました。


「暁――下から覗いたら切る!」

「覗かねぇよ!」

「安心して、暁が変な気を起こさないよう見張っとくからね~」

「だからしねーっての!」


 赤也を挟み込むようにしてしっかりディフェンスに徹する2人です。赤也は心外だと言わんばかりですが。


「う~ん、昔と変わってないじゃん、じゃん」

「本当、結構広いよね~」

「ゴブ、ゴブ、ゴブ~」


 ゴブはどこかワクワクした様子で秘密基地の中を見て回ります。喫茶も懐かしそうにあっちこっちを触ってました。


「あ、やっぱりあったし~し~」

「うわ~ハンモックだね」

「ゴブ?」

 

 喫茶が基地の端から持ってきたものを見て、桃子が弾むような声を上げます。

 小首をかしげるゴブですが、桃子と喫茶が広げると目を輝かせました。


「これがあればゴブっちも寝れるじゃん? じゃん?」

「うん、でもちょっと洗ったほうがいいかもね」

「なら学校に戻って洗うじゃんじゃん!」


 そうだね、と決定し、一旦秘密基地を出ました。

 その後、基地の中の掃除担当と、必要そうなものを集める担当、ハンモックを洗う担当とに別れました。


 桃子はゴブと一緒に基地の掃除をします。喫茶と黄切でハンモックを洗いに、赤也と吟子が必要なものを取りに行きました。


 それから一時間が経ち――

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