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第48話

それから何日も何日も気まずい日々が続いた。福宮さんや早川さんは事情をある程度知っているからか、たまに冷やかすようにからかってくるが、なにも状況を知らない他の人たちからは「なにかあったの?」や「いつでも相談しなさいな」なんて本気で心配された。


中には「若いねえ」なんてニヤニヤしながら茶化す人も居たが、実際当人じゃなければそれくらいの意識だろう。でも、当人からすると割と深刻な問題なので言葉にしてほしくはなかったが…。


あれから既に、ひと月とちょっとが過ぎようとしていた。


店長からも小言を言われた。あまりこちら側に干渉してくる人ではないのだが流石に異常事態だと思われたのだろうか。俺だけじゃなく小田さんも呼び出されてなにか言われているようだった。


申し訳ない。


自分のせいで小田さんにまで迷惑をかけてしまったことが心の底から申し訳なく思えた。


店長は俺にあまり強くは言えないので「あんまり仕事に影響が出ないように」と軽く言われただけで済んだが、小田さんはもしかしたらきつく叱られたのかもしれない。かなりムッとした表情で帰ってきた。


叱られたばかりということもあり、店長がいる間は前とは違って「はい」だけではなく業務上最低限の会話はなんとか成り立った。


しかし午後9時を回ると店長もさっさと帰ってしまうので、その後の空気を考えると憂鬱な気持ちになる。


あぁ、嫌だなあ。


予想通り、というか定刻通りに店長は帰っていった。気まずいのを知っていながら、2人だけを残して帰るなんてあんまりじゃないか、代わってくれよ。


そしてまた無言でひたすら作業する時間がくる。店長に言われたからかは分からないが、今日は珍しく仕込みを手伝ってくれる。


この分なら早く終わりそうだな。つまりその分、なにもしない気まずい時間も長くなるということだ。まあもう最近は無言の時間にも慣れてきたし、ボーッとしてれば時間も過ぎるのであんまり気にしないことにした。


それだけ考えていると仕込みが終わった。やはり2人だと段違いに早い、なるべく間を空けずに締め作業に入ろうとしたが、小田さんの声がそれを遮った。


「落合」


久しぶりに小田さんの声で呼ばれた自分の名前に驚きを隠せなかった。なんだ、一体どんな風の吹きまわしだ?少し恐ろしささえ感じる。


「な、なに?」

「この後時間ある?」

「あるけど…」

「ちょっと駐車場で話そうか」

「え、うん、え?」


いったい何を言われるんだろうか…。皆目見当もつかない。


純粋に、小田さんの話を聞くのが怖いと思った。現在は午後10時過ぎ。第二次駐車場決戦まではあと2時間弱だ。

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