第38話
「そういう仲じゃないって言うんならちゃんと一線は保った振る舞いをしてよ!」
あの後最悪な雰囲気のままアルバイトを終え、家に着いても小田さんの言葉が頭から離れてくれなかった。
今までだって福宮さんとの距離の近さに違和感を抱いたことはある。
ただの友達のはずなのにこんなに仲良くしてていいのか?なんて思ったことも一度や二度ではない。
もちろん最初から今のように仲が良かったわけではない。最初は、ただの先輩後輩だったはずだ。
*
「今日から入ってもらう福宮さんです」
「…福宮です。よろしくお願いします」
「(緊張してるなあ)」
*
「あぁ福宮さん、16卓にお客さん通すからバッシングお願い」
「はい」
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「落合さんこのメニューなんですけど」
「うん?」
「ハンディの場所がわかんないです」
「それならおつまみ・揚げ物の…」
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「最近バッシング早くなってきたね」
「そうですか?」
「うん、土日だけなのにすごいじゃん」
「…えへへへ」
*
「落合さんこの前彼氏が…」
「まーたなんかあったんか」
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「今度ご飯でも行こうか、俺が出すよ」
「え、いいんですか?」
「いいっていいって」
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「落合でいいよ」
「え、でも」
「もう友達みたいなもんじゃん」
「じゃあ…オッチーで」
「それは近すぎない?」
「ダメ?」
「全然いいよ」
*
「オッチー今日学校でー」
「もうしょうがないな~」
*
「友達と喧嘩して」
「うん」
「私が悪いのかな?」
「そんなことないよ」
*
「カラオケでも行くか」
「あ、私カラオケ大好き」
「よーしよし連れてってあげる」
*
「次いつ遊ぶよ」
「日曜なら暇だけど」
「じゃあ日曜ね」
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「オッチー今日暇?」
「暇だよ」
「学校まで来てくれん?」
「いいよー行くよ」
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「風邪引いた」
「大丈夫?」
「まあ多分大丈夫」
「お母さんにお粥でも作ってもらいなー」
「今日親いない」
「なぬ」
*
縮まりすぎた仲。
一線は…どこかのタイミングで知らないうちに超えてしまったのかもしれない。
やっぱり、他の人から見たら付き合ってるように見えるのかな?今まで誰も触れてこなかっただけで案外みんなそう思ってたのかもな。
まあどちらにせよ、福宮さんも高校3年生だ。大事な受験の時期を邪魔するわけにはいかないので少し距離は置く予定だった。そうなれば、小田さんもとやかくは言わないだろう。




