第3話
「バイトはどう?慣れた?」
聞きたいことが特にあるわけでもなく、このまま帰るのがもったいないからという理由でなんとなくドライブに来てしまったため、とりあえず当たり障りのない話題から話し始めた。
「いやー、まだ全然わからんところ多いねー、落合が教えてくれるから結構助かってるよ」
「そう言ってくれると嬉しいよ、ありがとう」
「落合は高校生たちからも慕われてるし、良い先輩だよね」
「そう?俺からしたらみんな良い後輩だから助かってるけどね」
実際彼は歴もそこそこ長く、バイトリーダー(厳密には彼のところはバイトリーダーという役職はないがそれに近い立ち位置)である。
「小田さんみたいにほぼ毎日入ってくれる人ももちろんだけど、土日だけの高校生もみんな頑張ってくれるしね、本当、助かってる」
「福宮とか?」
「そやね、福宮さんも頑張ってくれてるよ」
福宮さん、とは彼が特に仲良くしてる高校生の女の子である。休みが合えばよく2人で遊びに行ったりもする。
他人からはそういう仲だと疑われがちだが、少なくとも彼は良い友達として上手く付き合っている。
「このまえ福宮からなんか貰ってなかった?ほら、落合の誕生日の前の日」
そう言って小田さんはイタズラに笑う。どうやら小田さんも疑ってる1人のようだ。
「あー、あれね。普通のマグカップだったよ」
本当は手作りのお菓子をもらったのだが...そんなことを言ったらまたからかわれそうなので少しだけ嘘をついた。
「本当にー?福宮のことだから手作りプレゼントとか女子っぽいことするんじゃないの?」
小田さんは適当に言っているつもりだが、少しばかり鋭いようだ。彼の顔も一瞬動揺したように見えたが、すぐに平静を装った。
「俺と福宮さんは仲は良いけどそういう関係じゃないよ」
「どうかなー?この前も遊びに行く約束してたじゃん」
「あれはだって、今度カラオケ行こーってだけで...っていうか聞いてたんだ」
「だって休憩室の前で喋ってればいやでも聞こえるし」
これに関しては人に聞こえるところで話していた彼が悪い。そもそも聞かれても問題はないのかもしれないが、からかわれたくないならもう少し場所を考えるべきである。
「落合って、福宮のこと好きなの?」
「え?」