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第28話

催眠と聞いて思いつくものは人によって異なると思うが、現代で催眠状態というと「暗示を非常に受けやすくなったトランス状態」のことを指すらしい。なぜ急にこんな話をしたかというと、特に意味はない。だが、知っていて損はないだろう。


「で、俺と福宮さんはそういう関係じゃないから」

「…」

「なんで急にそんな根も葉もない噂を流したのさ」

「別に…」

「怒ってないんだよ?」

「嘘つけ」

「そう思うのは結構だけど、せめて理由くらいは聞かせてくれよ」


嫌がる小田さんを「仕事の話だから」と半ば無理やり食事に誘って、そして今に至る。こんなに美味しくない食事もなかなかない。


やはりこういう話の時は食べ物も喉を通らない。そう思って食べ終わってから話をし始めたが、これはこれで消化が悪そうだ。


「落合さ」

「うん?」


ようやくこちらからの質問以外で小田さんが口を開いた。


「私が潔癖なのって言ったことあるっけ?」

「いや、初耳だね」


小田さんはまだ秘密があるのか、いったいどこまで信じていいんだろう。


「潔癖だから間接キスもできないんだよね」

「?」

「気の毒だと思わない?」

「まあ、そりゃ、ちょっとは思うところはあるけど」

「でしょ?」

「でもその話は今関係なくない?小田さんが潔癖ってことを聞いたところで、俺には同情しかできないよ?」


そうだろう。確かに同情はするが、今そういう話をされたところで話題のすり替えにしか思えない。


「…してたでしょ」

「え?」

「福宮と間接キス、してたでしょ」

「あ…」


見ていたのか。なるほど、だからあんな噂を…。


これはちょっと面倒なことになりそうだ。


「普通付き合ってないのにそういうことする?」

「どうだろうね、現に俺と福宮さんは付き合ってないけどそういうことするよ」

「あのね、普通はしないと思うんだ」

「…」


さっきまでとはまるで逆、今度は小田さんが質問攻めしてくる。


「そもそも落合たちおかしいよ」

「おかしい?どこが?」

「普通さ、男女が2人で一緒にいたらそういう関係になると思うんだよね」

「うん」

「落合はずっと“そういう関係じゃない”って言ってるけどさ、正直信じられないんだよね」

「ほう」

「それでもまだ言う?“そういう関係じゃない”って」


もちろん言う。しかし、今ではない。今言うと話が非常にこじれそうだ。


「いや、ごめん。それは俺に落ち度があった」

「あ、ああ、そう」


素直に謝るとは思ってなかったんだろうか。少し拍子抜けしたような返事が返ってくる。


まあ、形だけの謝罪ではあるけれど。


「友達といえど、男女ということを意識しなさすぎた。線引きしなければいけない関係であったのを自覚していたのにそれを怠った。結果として小田さんに誤解させてしまった。申し訳ない」


これだけ謝っておけばきっと大丈夫。事実しか言ってないし、おかしなところはなにもないはず。


「ごめん、そこまで謝らせるつもりなかった」


今度は安堵したような表情で小田さんが謝る。どうやら一度の謝罪で納得してくれたようだ。しかし、少しホッとした。このくらいで許してくれるのなら安いものだ。

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