第23話
「オッチーお待たせ」
「めっちゃ待ったわ、遠いな、やっぱり」
「あははは、ごめんごめんわざわざありがと」
平日の午後4時に、車で1時間半かかる福宮さんの高校まで来たのはわけがある。単純の呼び出されたからだ。
「急に呼ぶんだもん、たまたまバイトが休みだったからよかったけど」
「ちゃんとシフト見てから呼んだんだよ」
「それは気遣いありがとう」
「で、なんで呼ばれたの?」
「怒ってる?」
「いや?普通に気になるから」
急に呼ばれたからと言って不満はない、どうせ休みなんてやることもないし、ちょうどいい暇つぶしだ。それも、楽しめる相手とだったら大歓迎だ。
「今日さ、教師から付き合わんかって言われてさ、流石に教師は嫌だったから彼氏いるんでって言って断った」
うわぁ…。この感じだとやっぱりあるんだな、生徒と教師が付き合うことって。
「それで彼氏役ってわけね」
「そうそう!あと、威嚇にもなるしね」
威嚇、というのは車のことだろうか、お望みとあらば少し吹かしてから出て行くか。
クラッチを切りアクセルに力を入れる。
「ちょ、うるさい」
「ごめんなさい」
確かにちょっとうるさかったかもしれない。下校中だと思われる高校生たちまでこっちを見てきた。
「さ、早いとこ退散しよ」
「もう、注目されるのは私だからね」
呼んだのは自分なのでは、そう言いかけたが心の奥にしまった。
「そういえば早川さんと同じ地区なんだってね」
「あーそうだよ、言ってなかったっけ?」
「言ってない」
「じゃあ多分聞かれてない、聞かれてたら答えてたと思うな」
そういう問題なのか。きっとそういう問題なんだろう、うん。
「同じ地区ならもうちょっと喋ってあげたらどう?」
「んー、別に話すことも特にない、それにオッチーが教育係でずっとついてるからそういう心配もいらないでしょ」
「まあそうかもしれないけどさー」
「そういえばご飯どうする?」
「え?」
「今日うち親いないからどこかで食べなさいって言われたんだよね」
ご飯のことまで考えてなかった。いや、考える必要がないと思っていた。家まで送っていって、終わりだと思っていた。
食べに行くにしても、もうバイト先はいいかな、あんなに注目されながらなんてご飯どころじゃない。
だとしたらどこだろう、幸いまだ太陽が沈む前なので地元に帰りながらでも考えよう。
というか、絶対彼氏役じゃなくてこっちがメインだったろ…。




