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第21話

「あ、小田さん」

「どうした?」

「年末年始きつかったでしょ?お疲れ様会みたいな感じで久々にどっか食べに行かない?」

「いいよー、どこ行く?」


まだ疲れが抜けきっていないのか、気だるそうな返事が返ってきた。


「ラーメンは?美味いところ知ってるよ」

「あ!私ラーメン好きだよー」

「じゃあそこにしようか、また俺の車でいいでしょ?」

「あー、今日は私が出そうかな」

「え、いいの?」


いったいどういう風の吹きまわしだろう。小田さんが自分の車を出すなんて。


しかしまあ、冬はエンジンのかかりも悪いし甘んじて受け入れることにした。


小田さんの車は、年頃の女の子とは思えないくらい質素なものだった。今時BluetoothではなくFMトランスミッターで音楽を聴き、カーナビもついてなかった。車好きの彼からするともったいない気持ちでいっぱいだった。


「ごめんね、私車に興味ないんだ」

「俺に謝られても…」

「いや、怒ってるかなって思って」

「怒らないよ、趣味なんて人それぞれじゃないか」


実際彼の年代くらいで車が趣味という人はどれくらいいるのだろう。少なくとも2人のバイト先には1人もなかった。


「案内してよね」

「分かってるって、ちょっと入り込んだところだから集中しててよ」


車が走り出す。

彼イチオシのラーメン屋は誰が食べても美味しいはずだ。


「んー、美味しい!この鶏皮ギョーザ」


…美味しい…はずだ。


「あ!もちろんラーメンも美味しいよ!」


よかった。好評のようだ。


「最近忙しかったからね、たまにはこういうのもいいでしょ」

「いやー、落合ほんといい先輩だわ」


最近やたらといい先輩だと言ってくる。この前福宮さんと食べに行った時からくらいだろうか。特に、深い意味はないと思いたい。


「今日はこのまま帰る?」

「ドライブ行こー!と、言いたいところだけど、あんまりガソリン入ってないんだー」


あはは、と申し訳なさそうに小田さんが笑う。


「あ!そのかわりお代は私が出すから!」

「え?いいよそんなの」

「いいからいいから、いつも落合に出してもらってるしさ、今日は私が出す番!」

「んー、じゃあせめてワリカンにしようよ」

「ダメ、それならむしろ全部払ってもらうから」


「そこまで言うなら」ということで了承した。女の子に奢ってもらうのはあんまり慣れてないのでなんだか変な感じだ。一度奢ってもらうと癖になりそうな気もしたが張り合うのも面倒なので次は自分が出そうと心の中で誓った。


「明日からは多分暇だし、ゆっくり体を休めて、ある程度落ち着いたくらいにまた来ようか」

「そうやねー、次は醤油ラーメンにしよ」


軽く締めの挨拶まがいのことを話し、今日は解散ということにした。

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