第2話
「とうちゃーく」
「あー、腹減った」
「豚丼あるかなぁ」
バイト先からここまでだいたい10分くらい。これと言った会話もないうちに牛丼屋に着いた。
「あ、ほら!豚丼ありますだってー、意外とそういうところしっかりしててよかった」
店外パネルを指差しながら小田さんが言う。しっかりしている、と言うのは牛肉を食べれない人にも配慮がされているということだろうか。
「いらっしゃいませー、何名様でしょうかー」
「2人です」
「お好きなお席へどうぞー」
午前1時30分にもなろうかという時間だったが、店内にはまだチラホラ人が残っていた。
「さー、なに食べようかなー」
「俺このキムチ牛丼にしよ」
「はやっ!落合辛いの好きなの?」
「別に好きってわけじゃないけど...なんとなく美味しそうだったから」
そんなもんかぁ、と呟き小田さんはメニューに視線を落とす。どうやら来るのが初めてのようで、かなり迷っているようだ。
「うーん、普通の豚丼にしよ」
「え、あれだけ迷ってそれ!?」
「だってとりあえず普通のやつ食べないと他のトッピングとかとの相性わかんないじゃん」
その割には結構迷ってたような...まあ、あまり気にしないでおこう。
注文してすぐに出てくるのがここの良いところだ。待つ時間が少なくて済むのは食事をする側にとっては非常に大事なことだ。
人によっては待つ時間も楽しいなどと言うかもしれないが、今はバイト終わりで疲れてる。そんなこと言ってられない。
「いただきまーす」
「いただきます」
流石にお腹が減っていたので、2人とも無言でかきこむ。小田さんも普通に食べれてるし、彼は少し安心したようだ。
「はー、美味しかった」
食事の分は彼が全額負担し、再び車に乗り込んだところだった。
「小田さん、明日は昼間なにか用事あるの?」
「え、ないけど?」
「じゃあちょっとドライブしない?」
「うーん、いいよ!」
「半島一周でいい?」
「いいよいいよー」
彼らの住んでいる地域は小さな半島になっていて、一周するのにおよそ2時間半ほどかかる。少し長めに話す時にちょうどいいくらいだ。
一周してきたら解散の口実にもなるので、切り上げるタイミングを見失ってダラダラ話し続けることもない。
「じゃあ行こうか」
「いいねー、行こ行こー」
2時間半、どんなことを話そうか。