第17話
太陽は今ちょうど天頂の位置だろうか。さっき軽くお菓子を食べたとはいえ、お菓子程度じゃ食欲旺盛な20歳のお腹はふくらまない。
「そろそろカラオケでも行く?」
あれ?お腹が減ったことを考えていたのになぜカラオケという選択肢が出てきたのだろうか。
「あー、いいね、久々に行こうか」
まあカラオケにも軽く食べれるくらいのご飯はあるし…。
前はよく2人で行ったものだ。流行りのデュエット曲なんかを2人で練習して、歌ってほしい曲があればお互いリクエストしたり、知らない曲をリクエストされれば次の機会までに練習したりしていた。
「俺あれ練習してたよ、ほら前に福宮さんが聞いてた曲」
「おー、早速聞かせてよ」
「ま、まずは喉を作ってからやね」
「ここ懐かしいね」なんて話しながらよく行っていたカラオケ店に入る。ちなみに彼女はジョイサウンド派で俺はDAM派だ。なお、2人で行くときは決まってジョイサウンドになるのだが…。
幸いなことに待ち時間もなく希望の機種の部屋に入れた。大体察している人も多いと思うが2人ともカラオケが大好きなのでフリータイムが終わるまで歌い続ける。
5時間後、かれた喉でカスカスになった声を必死に張り上げながら会計を済ませ、この後夕食をどこで食べるかを話し合っていた。
「どこ行くよ?」
彼女が問う。
「どこでもいいよ」
彼が答える。
「どこでもいいが一番困る」
彼女が言う。
「そうだなあ」
特に食べたいものもないのでなんとなく遠くを見つめて考えているフリをする。彼女がなにか食べたいと言うまで待つことにした。
「もー、いつまで経っても決まらんね、バイト先に食べ行く?」
「え!?あ、でも良いねそれ」
まさかまさかの思わぬ提案だったが断る理由もないので普段働いてる店に食べに行くことにした。
ん?待てよ、今日は小田さんがシフトに入ってたような…。多分、おそらく、気のせいだろう。胃のあたりが痛みそうだったので無理やりそう思うことにした。




