第16話
男嫌い、か。周りから見たら男好きに見える福宮さんとは正反対だな、なんて考えたりもした。
「男嫌いねぇ、別に俺に対しての接し方が変わらないなら機にすることはないかな」
「でも引き際は考えといた方がいいかもね、どう思われてるかわかんないよ?」
「んー、それはその時に考えるよ」
彼女が買ってきたお菓子も食べてしまったし、話がひと段落したところで車に戻ることにした。流石に長時間外に居ると寒くてたまらない。
「はー、あったか」
寒かったので自販機でコーヒーを買ってあげた。やはり彼女も寒かったのであろう、缶コーヒーを頬に擦り付けている。こうして見ると、まだまだ無邪気な高校2年生だ。なんなら、ペットにすら思えてくる。
「…なに笑ってんの?」
「え?いや、別に」
危ない危ない、顔に出てしまっていたようだ。こういう些細な表情の変化に彼女は敏感だ。よく見てくれてるのは嬉しいがたまに怖くなる。
「でも小田さんもさ、好き好んで男嫌いなわけじゃないと思うよ?」
彼女が嫌っている相手というのは分かっているが、彼にとっては仲の良い友達である。「好きになれ」とは言わないが、嫌っている相手にも良いところはあるんだよ、というつもりで話を振ったところだった。
「もうさ、その話やめん?」
「あ、うん…」
最初に俺に聞いてきたのは福宮さんじゃなかったかな?まあ、彼女がやりたくない話をいつまでも続けるわけにもいくまいし、この話はここまでにするか。
「じゃあさ、福宮さんなんで彼氏と別れたの?」
「お、聞きたい?」
聞きたいか、と言われても実はそうでもない。ただなんとなくこの場を切り抜ける話題が欲しかっただけだ。
「まあちょっとは…」
「まあねー、私はもう冷めてたんだけどねー」
「冷めてた、じゃなくて元から熱くなかったんじゃない?」
「あはははは、言えてる」
別れた話だというのに淡々と、笑いながら話してくる。こういう適当さが俺にもあればなあ。
「なんかめっちゃ会いたいっては言ってくるんやけど、いつも会う時は朝8時とかに起きてさ、正直そんな楽しくないしわざわざ私の時間を使うほどじゃないなって思った」
「えー、付き合ってるのにそのくらいの認識でいいの?」
「いいんじゃない?あ、でもまだ連絡はくるけどね」
「返してるの?」
「面白いから返してあげてる」
ケラケラ笑いながら軽くそう言う姿を見て、つくづく彼女に対して恋愛感情がなくてよかったと思った。




