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第10話

「はー、美味しかった」

「落合、この前もまったく同じこと言ってたよ」

「いいじゃんいいじゃん、キムチ豚丼はどうだった?」

「んー、私にはちょっと辛かった」

「あはは、辛いの苦手なんだね」


例のごとく彼の車に乗り込み、半島一周ルートをドライブする。あの後2時間ほど殆ど喋ることなく仕事をし、さっきまた豚丼を奢り、他愛もない会話を交わし、いつの間にか小田さんはさっきまでのことは気にしなくなったようだ。今日の話題もまた、恋愛話に変わりつつある。


「落合は人を惹きつけるなにかがあるよね」

「え」


急に何を言い出すんだこの子は...


「そんなものがあったら今頃アルバイトなんてやってないよ」


実際そうだろう。人を惹きつけるということはつまりカリスマ性というやつのことだろうし、そんなものがあれば少なくとも今現在、片田舎の飲食店でアルバイトなぞに勤しんではいまい。


「いやいや、今日あの新人にカッコいいこと言ってたじゃん」


今日から新しく早川さんという女子高生が入った。高校2年生らしいので福宮さんとかと同い年ということになる。


「カッコいいこと?なんか言ったかな?」

「なんだっけ?『ミスをするかどうかは大勢に影響はない、ミスをどうカバーするかの方が大事で、そっちは俺や店長の仕事だから、思いっきりやってみよう』って言ってたじゃん」


「なんだっけ?」という割にはえらく鮮明に覚えているな。


「それはだって、失敗せずに一人前になる人なんていないからさ、みんなの前でああ言っとけばミスした時に誰も咎めないかなと思って」

「落合は優しいなぁ、あの子絶対落合に惚れたよ」

「それは困る」

「なんで?女子高生だよ?嬉しくないの?」

「女子高生は法律的にアウト」

「あ、そういえばそうかー」


だいたい、女子高生をそういう目で見るのはかなり抵抗がある。福宮さんのように友達ならいいが、恋人となると...。持論だが、高校生なんだから同じ高校生と付き合った方が後々綺麗な思い出として残るような気がする。

いや、そもそも惚れられたわけでもないのに何を考えているんだろうか。


「小田さんはそういう話が好きだね」

「好きだよ!人の恋バナとか大好き!」

「自分の恋バナはしないんだ?」

「うーん...」


表情が一瞬曇る。今回はそれを見逃さなかった。


「あー、今日は小田さんの恋バナを聞く会にしようかな」

「いやいやいや、面白くないよ」

「それは聞いてから判断するよ」


ニヤリと笑って小田さんに目を向けた。戸惑ったような表情をしているが、誰だって自分の恋愛事情なんて話したくないものだ。


予想通り、今夜も長くなりそうだ。

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