6話 保護者は辛いです!
きまぐれな勇者と迷子の女帝をパーティに加えて、非常にダメな旅が始まって以降、私の疲れときたら尋常なものではなかった。
普段、背負っている重い荷物をアイリスとリリス2人に分散しているのに、この疲れである。
よほど精神的にキてるのだろう。
寝ても疲れが抜けませんね……。
これは非常時に備えて用意してあるポーションの出番かもしれない。
そう思えるほどなのだ。
「ZZZzzzz……………」
「なぜ、こいつは全裸で寝とるのじゃっ!」
「いや、そういうリリスも下着じゃん」
「お主は寝相が悪過ぎて泥まみれじゃぞっ」
「あははははっ」
「……………………」
朝、3人?の会話を聞いていた私は無言で自分の身支度を整えていた。
3人が3人とも個性溢れるため、つっこみが間に合わないので諦めたわけではない。
それにしても美人、美少女が集まると映えます。
例え、全裸と下着姿、泥まみれであっても……。
「ふぅ……」
朝食ですね。
普段の私たちの朝食はパンを1つに干し肉だけの質素なものだ。
旅をしているので贅沢はできないし、朝食を作る気力がない。
女の子は朝に弱いのである。
それこそ緊急時でなければ朝早くには動けない。
「どうぞ」
私はきゃっきゃと騒いでいる2人と寝惚けている1人に朝食を配っていく。
「お~、今日は豪華だ」
星華はそう言いながら、龍の肉に被りつく。
そう、龍の肉だ。
昨日の夜、本気になったアイリスがブルードラゴンの子供を釣り上げた(3メートルほど…)。
結果、昨日は豪勢であった。
保存がしにくい臓物は鍋にして全て食べてしまったので、今ある物はそれの残り物だ。
「アイリスが頑張ってくれましたからね♪」
「丸焦げで気力を失ったアイリス1人に戦わせるとか鬼じゃ…」
「何か言いましたか?」
「なにも言っておらんのじゃっ」
リリスは私の問いかけに答えると龍の肉に被りつく。
アイリスに至っては配った肉がすでに骨だけになっている。
私は一口サイズに切り分けた龍の肉をフォークで食べ始める。
「1つ聞きたいことがあるのじゃがよいかのぅ?」
っと、そこで肉を頬張るリリスがこちらに問いかけてきた。
「はい、どうぞ」
「リコリスの街まではどれくらいで着くのじゃ?」
「ここからであれば6日くらいでしょうか」
アイリスが旅の仲間に加わって以降、星華との喧嘩が絶えず起こり余計な時間を費やしている。
そのため、予定よりも1日遅れているところだ。
まあ、大戦までには間に合いそうなので、少しくらいならいいのだけれど。
「うむ、そうか。大戦が始まるまでには、十分な時間がありそうじゃな」
「そういえばリリスは女帝なんですよね?」
今度は私の方から問いかける。
「いかにも」
「兵隊さんとかが探してるんじゃあ……」
「軍を動かす将軍は冷たい奴じゃからのぅ。わらわがいない事に気付いても探す事はせぬじゃろう」
「「将軍失格(だ)っ!」」
私と星華が同時につっこんだ。
彼女の国の軍隊はいったいどうなっているのだろうか。
そんな冷たい人たちの集まりが魔王の軍を退けたと?
……信じられない。
「キレる奴じゃからのぅ。わらわなら自力で着けると確信しておるのじゃろう」
リリスが自慢げに胸を張り出す。
もし鎧がなければ星華が胸をもしゃっと揉んでいた事だろう。
私がよくやられていたわけであるが星華の気持ちも今ではわからないでもない。
星華に毒されてますね。
私は自身の現状に嘆く。
きっと呪いのせいだと決めつけて忘れる事にする。
「迷子になってたくせに」
「うっ」
リリスが星華の呟きに固まった。
「シッ。……声が大きいです、星華」
「ごめんごめん」
星華は小さな声で私に謝ってくる。
だけど、時すでに遅くリリスは涙目になっていた。
女帝と言っても、まだ子供っぽさが抜け切っていないのだ。
……背的意味で。
「気にする事はない。私は1人だと常に迷子のようなものだから」
「自分の居場所がどこだかわかっていないんですね」
私はアイリスの言葉にため息をついてしまう。
もはや彼女にはつっこみを入れる気が起きない。
否、つっこみを入れる意味がない。
無限にボケを量産するダメ人間なのだ。
っていうか、
「服を着てくださいっ」
どうして全裸で胡座を斯くのだろうか。
いくら女の子同士だからといっても目のやり場に困ってしまう。
呪いのせいで、の・ろ・い・の・せ・いで気が付くと、彼女の下半身に視線を向けてしまうのである。
なんてはしたない!
「昨日も聞いたね?」
「毎朝ですっ」
私は手に魔力を集中し、魔法の式を構成し始める。
実体化した炎が揺らめいているのを見たアイリスは顔色を変える。
「今すぐ着ますっ」
アイリスはそう言うと、大急ぎで自分のバックから服を取り出して着始める。
教育は飴と鞭である。
「あ~、もう~、また前と後ろが反対です……」
私は服を着たアイリスを見て、ため息をつくと彼女の服に手を掛ける。
そんな私とアイリスの様子を傍から見ていた星華とリリスはじっとりとした目をしていた。
「甘やかしておるのぅ」
「あっちの方が断然子供だよね? 何歳って言ってたっけ?」
「二十歳と言っておったのじゃ」
「二歳の間違いじゃない? 十は飾りなんじゃ……」
「あながち間違っておらんと思うのじゃ」
「っていうか、羨ましいっ」
「ぬっ、いきなり血涙したのじゃっ」
「アイリスの柔肌に合法的に触る事ができるチャンスとユフィーに服着せてもらうチャンス、どちらもおいし過ぎる……っ」
「うむ、後者の方は確かに……」
「え?」
「っ……、なんでもないのじゃ」
2人は非常に仲よさげに会話をしている。
「……下着女帝と泥女も身形を整えましょうね~♪」
「「はいっ」」
下着姿の女帝と泥まみれの女が私の方を見る前に、自分のバックから衣服を出して着始める。
どうやら私の魔力を感じ取ったらしいので私は手の魔力を散らす。
……悪戯っ子や手のかかる子を持った母親とはこういうものなのでしょうか。
私は花嫁修業をしている気分になりながら、自分の朝食に戻るのであった。
ふと自分と妖狐さんの子供がいたら、という妄想をして頬を染めてしまう。
…………はしたない。
私も人の事が言えない程度にはえっちなのかもしれない。
それにしてもこの人たち……。
「いや、こっちだよ」
「そんなことはあるまい。こっちの方が寒い感じがするのじゃ」
「え、でもこっちの方が道がしっかり踏み固められてるよ~」
星華、リリス、アイリスはお互いに全然違う方角を指さしながら睨み合っている。
彼女たちの、道を決める争いはいったい何回行われるのだろうか。
分かれ道になる度にこんな事ばかりをしている気がする。
「………」
本当に大丈夫なんでしょうか。
誰1人として正しい道を指差している人がいない。
私は地図を見ると彼女たちが指差している方には永久凍土であったり、死神の谷川であったり、死者の毒沼であったりと全然関係ない所にしかいけない。
っていうか、死にます!
この3人は旅させちゃいけない人種だ。
「だって、こっちの方がいい匂いするよ?」
星華、それは毒の香りなんです……。
死毒を扱う魔獣が棲む沼は旅をしている時にも何度か小耳に挟んだ。
毒の腐食を受けない財宝があると言われており、多くの者がその地を訪れ、死に絶えている。
行けば、骨すら残る事はないでしょう……。
「嫌な臭いしかせぬではないか。その点、わらわの指差した方角は完璧じゃ!」
寒いからと言って、北であるとは限らないかと。
そこは噂によると氷の龍王の居城がある永久凍土であったはずだ。
彼の龍王は、支配下にある龍を戦いに赴かせ、自らは戦いに興味がないと聞く。
それ故、人々はあえて手を出す事は無いとしている。
そういえば、氷の龍王は姿を見た者がいない事で有名でしたね。
やはり、白龍王のように堂々たる姿なのでしょうか。
気になるといえば気になる。
行ってみたくもあるけれど、今は別の目的がある。
立ち寄るのは白封大戦の後になるだろう。
止む負えない事情ができたら、ではあるけど。
「なんか鋭い冷気を感じるよ。いくら北が寒くてもこっちは違うよね? でも私の方は大丈夫。だって、北風が吹いてるもん」
北風ではなく、谷を吹き抜けてきた風ではないかと。
おまけに本物の死神まで古の結界で、その土地に縛り付けられていると聞く。
谷に立ち入った者は例外なく死に絶えると……。
「風から死臭がするんだけど? 気のせいかな?」
星華も気付いたらしい。
「気のせい」
アイリスは親指を立てながら、ジト目を輝かせる。
「いや、気のせいじゃないじゃろ? 噂が正しければ近くに死神の谷川があるはずじゃ」
女帝のリリスの耳にも噂とかは届くらしい。
不思議なものである。
それであれば、永久凍土の龍王の事も知っていてほしかった。
「よくご存知ですね。では、永久凍土地帯が近くにある事も知っていますか?」
「う、む……。そうじゃな……」
リリスは顔を背けながら頷く。
どうやら、私が言いたい事がちゃんと理解できたらしい。
本当によかった。
「それから毒沼などもあったりします」
「…………あっれ~」
星華が頭を掻きながらにへらにへらとしている。
この子には何度も地図を持たせているのだけど、未だに地図の見方を覚えていない。
何度も教えているのに地図を見る事すらしないのだから悲しい事である。
「あっれ~じゃありません! 死にたいんですか!?」
「人はいつか死ぬものです」
「星華はいつ死んでもおかしくありませんね……」
私は嘆息しながら正しい道へと進んでいく。
3人は後ろで会話を始める。
「いや~、惜しかったな~」
「それを言うなら、わらわの方じゃぞ?」
「ははは~、次は負けないぞ~」
「…………」
この人たちは懲りもせず、まだやる気ですか?
先が憂鬱である。
これほど強力なメンバーともなると1回1回の戦闘時間がものすごく短いものである。
例を挙げるのならば、私と星華が半日掛かりで倒した龍がいる。
そんな驚異的な耐久力を見せてくれた龍もこのメンバーで挑むと、わずかに20分足らずで終わってしまう。
「シャインドラゴンを相手に20分か。思ったよりも早くカタが付いたね」
アイリスは四段階目まで、強化された『心剣』を手放しながら言う。
心剣は塵となり、どこへともなく消え去る。
あの剣は折られる度に強くなる能力を有するらしい。
「うむ。リジルの一太刀を受けておるからのぅ」
きんぴかの鎧姿のリリスが装飾された輝かしい宝剣リジルを鞘にしまう。
龍族特攻は強力ですね。
あのリジルは龍殺し(イヤー)の能力を有した魔剣で龍族に絶大なダメージを与える代物だ。
最初に見た時、私たちの魔剣と同格だと思ったのはこの能力のためである。
特定の種族に特攻を持つ剣は他の属性に対しては、ほとんど効果が無いけれど、龍殺しに関しては、どの種族にもそれなりの特攻を持つらしい。
「私とユフィーが戦った時は半日くらいかかったのに……」
「心配しなくてもいいと思う。私1人だと1日は掛かっただろうし」
アイリスはそう言いながら、腰に差していたナイフで龍の肉を切っていく。
さすがにこの巨体を運んでいくのは無理なので、おいしい部分だけを持っていくようだ。
少しは学習したようでなによりですね。
教えるのに、だいぶ苦労をしたけれど。
今までどうやって旅をしてきたのか聞いてみたら、どうやら途中までは同行者がいたらしいけれど、はぐれてしまったとか……。
その人たちとは、大戦を優先して、迷子になったら置いて行ってくれていいと伝えてあったらしい。
「わらわなら1時間程度じゃろうがなっ」
「リジルのおかげでしょ?」
星華はそう言いながら、リジルを指差す。
確かに星華が言っている通りだ。
彼女自身の実力は私たちと大差はない。
それでも1時間程度というのは、リジルの龍殺しの能力のおかげだろう。
「ぐぬぬっ……、痛い所を突いてきおるのぅ」
リリスはむっとした顔でそんな事を言う。
そういう姿は女帝というより見栄を張る子供のようだ。
歳は1つしか変わらないのですが……。
きっと、育ちの関係上、子供っぽくなってしまったのだと思う。
まあ、どんなふうに教育されてきたのかは知らないけれど……。
やはり影響があるんですよね……。
それに魔王時代の影響もあってか、昨今の子供は大人びている子が多い。
リリスの国は、悪魔たちに虐げられていなかったので、その事ともあるのかもしれない。
「ですが、みなさんがいるのは本当に助かります。今日だけで3体も現れていますし」
私は今日、襲ってきた龍の数(今倒し個体を含む)を思い出しながら言う。
「厄介な事だよ。龍王の縄張りに入っていくごとに敵が現れる」
アイリスはそう言いながら、遠くの空を指差す。
そこには数十の白龍が移動をしていた。
幸い距離があるため、こちらには気付いていないようだ。
………群れで動くなんて。
きっと、他の龍の群れと争うために数を揃えての出陣なのだろう。
いくら、私たちが龍を退治するために旅をしているとしても、あの群れを敵に回すのには無理がある。
「救いといえば、単独行動をしている龍にしか出会っておらんという事だけじゃろうな」
「後、そこまで強くない龍だって事です」
私たちが倒してきたのは白龍の中では下の位のものなのだ。
「想像したくもないよ。レベル15の白龍なんて……」
消龍……、バニッシュドラゴンはどんな所であっても姿を消す事ができ、空間を切断すると言う。
「うむ、わらわの3000近い軍もここまで来る途中で一度鉢合わせたが、たった1体を倒すのに1日は掛かったのぅ。死人が出なかったのは奇跡としか言えぬな」
「3000の軍勢で1日掛かり……」
強さがまともではない。
龍はレベルが1上がるだけでも飛び抜けて強くなるのは今までの旅で理解していたけれど、レベル15がそれほどのものとは……。
私は背筋が凍りついたような感覚を覚える。
しかし、そもそも私たちはレベル14の黒龍に敗北を期した事がある。
まったく歯が立たなかった。
それを思えば当然なのだろう。
ですが、これから戦うのは……。
そんな化け物のよう龍達とそれを上回る強さの龍王なのだ。
勝てる見込みなんて、まるでないと言えるだろう。
無謀な事をしようとしているのは自覚している。
しかし、それ以外に道はないのだ。
「わらわは手を出しておらんがのぅ」
リリスはそう言うけど、それでも十分な脅威と言える。
今回の大戦は本当に勝てるのだろうか。
「バニッシュドラゴン……。別名『消龍』。確認されているだけでも『白龍王』の周りに4体はいる」
アイリスはバックから紙を取り出して、目を落としながらそんな事を言う。
どうやら事前にいろいろと調べてきたようだ。
アイリスって、じつは真面目?
「おそらくホーリードラゴンもいるじゃろうな……。まったく……。面倒な世の中になったものじゃ。せっかく、悪魔どもを魔界に追い返したというに……」
「そうですね」
私的には、世の中で活躍する強者と呼ばれる人たちが皆、どこかおかしい事の方が面倒でならない。
真面目である事が辛くなるなんて世の中どうかしている。
この先、不安です……。
「あ、金切り蜂。こんな寒い地法にもいるんだ……」
っと、今まで後ろを歩いていたアイリスがぴたっと止まる。
私たちが後ろを振り向くと、彼女の周囲を1匹の虫が飛んでいた。
「かなきりばち? それはなんなのじゃ? このちっこい虫が危険じゃと?」
リリスは興味深そうにぶんぶんと飛ぶ金切り蜂を眺めている。
どうやら女帝様はご存知でいらっしゃらないようだ。
コレほど素晴らしい虫をっ!
「かなり危険ですね。あの高振動する羽に触れると、刀どころか大剣ですら切り飛ばすほどの切れ味があるんです」
「化け物じゃ!」
「1匹を傷つけるか殺すと、瞬く間に集団がやってきて、みじん切りにされちゃいます。集団行動時の金切り蜂はレベル10くらいはあるでしょう」
凄まじい手数となんでも切り裂く羽は驚異そのものだ。
魔法使いのように範囲魔法で一網打尽にできるならば問題はないけれど、魔法を使えない戦士にとっては死そのものだとすら言わしめる。
「はよ、逃げるのじゃ!」
「逃げたくても逃げれない。動くと刺されるし、切られる」
アイリスの頭の上に金切り蜂が止まっている。
これでは動く事もできないだろう。
ちなみに金切り蜂の針には麻痺毒があり、やられると3日間は動けない。
薬がないので刺されると荷物が増える事になる。
……失礼、荷物なのは変わりませんね。
「ユフィー」
「はい、わかっていますよ」
私は星華の呼びかけに応じると、
「せいっ」
アイリスの頭に乗っていた金切り蜂を叩き落とした。
瞬間、リリスとアイリスの顔が真っ青になる。
「なにしてるの!?」
「嘘じゃ! 嘘じゃと言ってくれ!」
「まあまあ、落ち着いてって」
星華はそう言いながら金切り蜂に止めを刺す。
なお、飛び散った体液から発せられる臭いには仲間を興奮状態にさせる効果がある。
大変危険なので良い子のみんなは真似をしないようにしましょう。
なお、私は良い子だけれど、そうしなければいけなかったのである(使命感)。
「落ち着けるわけない! いったい、どれだけの規模かわかってるの! 次の剣抜いてる暇なんてないんだよ!」
「来たのじゃ! 何百とおるではないかぇ!?」
アイリスとリリスが珍しく取り乱している。
一方の私たちは蜂が飛んでくる方向に視線を向ける。
問題は数よりも飛んでくる方角だ。
「あちらのようですね」
「よっしゃ! 特攻開始~」
飛んでくる蜂を回避しながら(当たったら切り刻まれる)、目的地………金切り蜂の巣にたどり着く。
大樹の根元に握りこぶしくらいの穴が空いており、中から甘ったるい香りがする。
「うわっ、うわっ、囲まれた!」
「どうすんのじゃ、これ!?」
アイリスとリリスが必死の形相で金切り蜂の羽に触れないように攻撃し、避けている。
一方の私たちはと言うと、
「金切り蜂の別名はシュガービー。おいしい蜂蜜が有名なんです」
「まったく手の加えられてない天然の蜂蜜は特に絶品!」
蜂がいなくなった巣の中に手を突っ込んで、蜂蜜を掻き出して舐め始める。
通常の蜂蜜に比べるとさらさらしており、ぽたぽたと服に落ちてしまうけど、気にしない。
この蜂蜜の香りは蜂は呼ぶけれども、逆にモンスターを遠ざける事ができるからである。
「ぺろぺろぺろ……、くちゃ……………、くちゅ…………んん、あ」
「あむっ、ぴちゅ………、ずずず~………ふぁ~……、ぴちゃぴちゃ」
私と星華は競うように蜂蜜を頬張り続ける。
なお、私の体から赤い魔力が滾るように纏われており、虫である蜂は火属性に近づく事ができない。
一方の星華は水そのものを周囲に浮かばせており、近づいてきた蜂をそれで撃退するという彼女にしては珍しく細かい芸をしている。
水は切れませんからね。
しつこく襲ってきても窒息させればいいため、星華の水は相性がいいのである。
「2人ともずるくないっ!?」
「わらわたちの分も」
「いやで~す♪」
「これに関してはユフィーも手を緩めないよ。だって、美肌効果があるんだもん」
「関係ありません♪ ぴちゃ、ぴちゃ、ちゅうううううう」
私は容赦なく蜂蜜を舐め続けるのであった。
コレでお肌もつるっつるです♪
愛しの妖狐さんもきっとイチコロである。