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白封大戦  作者: 十二支剣精
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2話  剣握る2人の少女



 あたしの目に映ったのは桜色の髪をした少女が白龍に向かって走っていく姿であった。


 彼女のその姿はなんとも美しいモノであったが、白龍の口から迸る光がいかんせ邪魔であった。


 故に私が取った行動は1つ。


「見辛いでしょうがっ、鬱陶しい!」

 あたしは手にしたガラティーンを思いっきり振るい、水の刃を飛ばす。


 水の刃はすっぱりと白龍の首を切り落とす。


 瞬間、まっ白な光が迸り、その場で爆散した。


 まぶしっ……。

 あたしが目を開いた時には直径20メートルくらいのクレーターが出来上がっており、白龍の姿はどこにもなかった。


 クレーターの近くには、風龍……ウイングドラゴンと親友のユフィーがいる。


 ちなみにユフィーは渾名だ。


「大丈夫だった?」

 あたしはのんきにそんな事を聞きながら、ユフィーに近づいていく。


「星華!? ……あなた、どうして」

「いや~、運が良くてさ」

 あたしと戦ったレッドドラゴンはすでに龍同士の戦いで傷を負っており、消耗していたのだ。


 おかげで短時間の内にカタが付いた。


 どうやらユフィーを追っていた龍の方が大物であったらしい。


「あなたはどうして戦いの緊張感を……」

 ユフィーはあたしを見ながら、ため息をつく。


 しかし、ウイングドラゴンへの警戒は一切解いていない。


「……まずかった?」

 あたしは少し気になってしまい怖気気味に問いかける。


 一方のユーフィルはあたしの様子を見ると肩を落とす。


「いいえ……。おかげで助かりました」

 ユフィーは笑顔でそう返してくれる。


「ホント?」

「はい」

「よかった~……、っていうか、なにっ、その手ッ!」

 あたしはユフィーの左手は見る。


 細くて綺麗な白いてが切り傷だらけでボロボロになっていた。


 彼女は少し苦い顔をしながら魔法を使う動作を取った。


「ヒールグリーン」

 緑色の輝きが発生し、ユフィーの左手を包む。


 すると左手の傷がゆっくりと塞がっていく。


 魔法を使うために隙を作ってしまったユフィーに向かって、ウイングドラゴンがブレスを吐こうとする。


『終わりだ』

「あたしがいるのに、そんな簡単に倒せるわけないじゃん?」

 今回は火炎玉タイプのブレスであった。


 あたしは水を纏わせた大剣でソレを弾き飛ばす。


 腕に結構な負担がかかる。


 威力重視の形はこれだから嫌だ(人の事は言えないけど……)。


『水の魔剣か。鬱陶しい……』

「ありがとうございます」

「このくらいお安い御用よ」

 あたしは防ぎ切れたことに安堵しながら息を吐く。


 彼女はあたしを信頼しているからこそ油断の生まれる回復魔法を使ったのだ。


 あたしが守ってくれるとわかっていたから……。


 これくらいお安い御用っ!

 あたしは痺れた手を握り直す。


「それでは最後の1体を倒しましょう。覚悟はできていますか、星華」

「ダイジョブダイジョブ~♪」

 あたしはユフィーに頷く。


 そんなあたしたちを前に、ウイングドラゴンが鼻で笑う。


『ははっ、いいではないか。ならば、龍の底力を見るがよい。羽虫では到底勝てぬ、真の龍を!』

 あたしはウイングドラゴンの言葉を聞いて悟った。


 命懸けかっ。

 運がよかったとはいえ、3体の龍を倒しているあたしたちを相手にするのだ。


 命を懸けるに値すると思ったに違いない。


「星華……」

「わかってるって……。ここからは慎重にいくよっ」

 あたしはガラティーンを手にウイングドラゴンの周囲を回り込むようにして走り出す。


 ユフィーが幻術を使ってくれるはずだ。


 2人揃えば、どんな龍だって葬れる。


 あたしはそう信じ、魔剣に魔力を込めるのであった。






 どちらが化け物なのかわかったものではないな。

 我は2人の小娘を相手取りながら、底知れない力強さを感じ取っていた。


 あの桜色の髪の小娘、まったく魔力が減らぬ……。

 龍である我と魔法合戦をしているというのに、身体に纏っている魔力が減っている様子がない。


 この我でさえも若干ながら消耗し始めているというのに、なんだというのだろうか。


 おまけに相手が小さ過ぎて、狙いが定められない。


 これならば同じ龍族の方が戦いやすいほどだ。


『戦い慣れているな、小娘ども! 我ら龍族を何体屠ってきた事か……っ』

「あなたもその内の1体になるんですよっ」

「そうだ! あたしたちの手に掛かれば、あんたなんて、ちょちょいのちょいなんだからね!」

『その割には腰が引けているな、小娘!』

 我は元気な小娘の大剣を爪で止めて、しっぽで打撃する。


 ゴッ!

 見事に直撃しているが、あの小娘ならばこの程度では死ぬまい。


 普通の人間であれば、今のをくらえば即死しているのだが、魔力量が格段に多いため、防御力もかなり高くなっている。


 それに無駄を無くすために攻撃される瞬間のみ、体に待とう魔力量を増大させているのは龍眼が捉えている。


 小賢しいが、か弱き人間には相応しい戦い方だと言えよう。


「げほっ、げほっ………。うぐぅ~、めちゃめちゃ痛い……」

『くたばれ! エアランス!』

 我はしっぽで吹っ飛ばした小娘に、間髪入れずに魔法を放つ。


「させません! アースウォール!」

 桜色の髪の小娘はすぐさま土の壁を構築して、風でできた槍を阻んだ。


『ふん! その程度の壁などすぐに壊して』

「その前にあたしが壊す!」

 土の壁の後ろで先ほどの小娘がそう叫ぶと、風の槍でヒビが入った壁を強引にぶち破ってくる。


『っ!?』

 壁の破片が勢いよく、こちらに飛んできて視界を奪っている。


 確かに風龍の視界は360度をカバーするが、遮蔽物は当然、見透かす事ができない。


 2人の小娘はこの時を待っていたと言わんばかりに攻撃に転じてくるだろう。


 防御手段をそのまま攻撃のための使ってくるとは……。


「「はあっ」」

『ハリケーン!』

 小賢しいのでレベル5の風属性魔法で周囲諸とも吹き飛ばしてやる。


「きゃあああああああああああああっ」

「のわあああああああああああああっ」

 2人の小娘は強風の飲まれて吹き飛ばされていく。


 自分自身をも巻き込む事によって、特攻してきた小娘たちは回避できずに巻き込まれた。


 風龍は風属性魔法への耐性が極端に高いのでダメージを負わないが、小娘たちは相当なダメージを負ったはずだ。


『この程度で終わりではあるまいな?』

「………んくっ。………ヒールグリーン。……当然です」

 桜色の髪の小娘は自身と元気な方に回復魔法を掛けて立ち上がる。


 ………人間にしておくには惜しい強さだ。


 そして、もう1つ惜しかった。


 我が万全の状態であったなら、勝つ事もできたであろうに……。






 時間にしておおよそ3時間であった。


 私は星華と共にウイングドラゴンと戦った。


 もちろん勝つ事ができた。


 私たちは倒した龍の傍らで腰を下ろしながら、息を整える。


「少し危なかったですね」

 私は大の字になって寝転んだ星華に感想を求める。


 彼女はうんっと私の方に向きながら答える。


「ホントよ。ここまで手こずるなんて思わなかったわ~」

 気が抜けた返事が返ってくる。


 これは悔しがっているのだ。


 私との2人掛かりであったというのに、これだけ時間が掛かったのは初めての事だ。


 相手が防御と速さを主体とするタイプであるため、仕方がないとも見れる。


「悔しいですか?」

「む~……、当たり前だよっ」

 やっぱり……。

 私の問いかけに彼女は叫びながら答えてくれた。


 とても悔しそうな顔をしている。


 だけど、それは私も同じ想いである。


 これはまた、修行に付き合ってあげないといけませんね……。

 もちろん呪いに蝕まれてさえいなければ、もう少し余裕があったはずだ。


 私と星華は数日前に黒龍との戦闘で大敗を期し、呪いを掛けられてしまったのだ。


 あの方が戦闘に乱入していなければ、私たちは生き延びる事はできなかっただろう。


「反省点はありますか?」

 私は星華に問う。


「相手の魔力に威圧された…」

「アレは慣れることができませんからね…」

 龍の威圧……それも覚悟を決めた龍の威圧は何度体験しても慣れない。


 あれは恐怖そのものを刺激する類のものだ。


 多くは語らない。


 アレは受けた者にしかわからない類のモノだ。


「龍光砲は未然に防げたけど、それ以外は全部ダメ……」

 彼女が思っている事は正しい。


 今回の戦いは運が良かっただけだ。


 もし、4体がお互いに傷つけ合っていなかったなら私たちは負けていた。


 このままではいけませんね。早めに対策を考えないと………。

 もちろん、呪いを解くことさえでいればそれで解決だけど、単純にそうというわけでもない。


 より強き龍はいくらでもいるのだから。


「なにが必要だと思いますか?」

 私はこれから先に、何が必要になると思っているのか聞く。


「対応力かな……。相手の攻撃を回避してから攻撃に転じることができる機会はいっぱいあった……」

「そうですね」

 その通りだ。


 彼女は私のように速度があるわけではないので、回避の際に後ろに跳び、相手との距離を取る癖がある。


 それを直すことができたら、もっと有利に戦うことができるはずなのだ。


「私ってダメだな~」

「星華は行き当たりばったりですからね」

「バカにしてる?」

「まさか……。それより今日はどうします?」

 私は話題を変える事により逃げた。


 彼女ならこの程度でも十分に話を変えられる。


 だってバ……、頭が少しだけ弱いところがあるから。


「荷物を取りに行ってから、お風呂に入りたいっ」

 確かに彼女も私も動きっぱなしだったため、汗でびっしょりだ。


 少しずつ体が冷めてきているのがわかる。


 服も脱ぎたくなるだろう。


 蒸れて張り付いた服の感触が呪いのせいでより鮮明に感じ取れる。


 擦れただけでコレですか。

 私はお臍の下部がきゅんと熱くなるのを感じて奥歯を噛み締める。


 っと、そこで衣擦れの音で我に返る。


 星華が装備を外し始めたのだ。


「服を脱ぐのが早過ぎます!」

 私がそう言っても彼女は聞かない。


 星華は鎧を外し、服を脱いで下着だけの姿となる。


 膨らむところが膨らんでおり、張りのある体は本当に美しいものである。


 ただ、もう少し慎み深さを持ってほしいものである。


 ごくり……。

 この高まりは呪いのせいである。


 の・ろ・いのせいである。


 断じて私にそのような趣味があり、興奮しているわけではない。


 私はあくまでも普通だ。


 ただ、惚れた殿方にちょっと狐の耳や尻尾が生えているだけだ。


 偶然なのだ。


 私はノーマルなのだ。


「いいじゃない、誰もいないんだし」

 彼女は雑に頭を掻きながら言う。


 どれだけ乙女らしい仕草を教育しても実行してくれない。


 困ったものである。


「よくありませんっ」

 私は抗議する。


「この土地は地図の中でも結構上の方なんだよね~」

 彼女は目を細めながら私を見つめる。


 何を言いたいのかはわかる。


 確かに肌寒さを感じている。


 しかし、替えの服も今は手元に無いのに脱ぐことはできない。


 そもそも服を脱いだ方が寒いはずだ。


「さ、寒くなんてありませんよ…」

 よって私はそう言う。


 星華は今も細い目をやめない。


「えいっ」

 星華は私の防具を力任せに剥ぎ取る。


 速度重視の軽装備である私の防具は重装備とは異なり、剥ぎ取りやすいのだ。


「なっ、ちょっと……」

 私は抵抗するけど、彼女の方が腕力に覚えがあるせいで装備を服を剥ぎ取られる。


 ただ、私は厚着をしていたため、まだ素肌を曝していない。


「相変わらずガードが固いね」

 星華が私との間合いを取りながらそんなことを言う。


 私は次の攻撃に備える。


「あなたほど安くはありませんっ」

 私ははっきりと言ってやった。


「言ったな~」

 星華は私に跳びかかってくる。


 私は回避しようとするが足を滑らせる。


 本当にタイミングが悪い。


 龍との戦いの疲れと呪いが下半身にキていたのだ。


「きゃ、ちょっと~……、ダメですぅ」

 星華が私の服を脱がし始める。


 しかし彼女も手馴れている。


 毎回、じゃれ合っているけれど、勝てた例がない。


 彼女はなぜか、こと服を脱がせる事に関しては名人なのだ。


「嫌がっても体は正直~」

「そんなことありませんっ」

 私は強く言うけど、彼女の手を止めることができない。


 本当に回数を重ねる度にどんどん上達していく。


 こんな事よりも戦いの上達をしてほしい。


 本当になんて力ですか……っ。

 泣きたくなってしまう。


「せいっ♪」

「嫌~~~~っ!」

 私はついに服を剥ぎ取られてしまう。


 私は反射的に平手を振るい、彼女の頬を張ったのであった。



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