表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白封大戦  作者: 十二支剣精
16/16

15話  大戦前



「……クローゼ」

 私たちの目の前に立つのは空気のように薄い雰囲気を漂わせる美少女であった。


 そのグラマーなスタイルはあらゆる視線を集めてもおかしくないし、なにより悪魔であるはずなのに誰も気にしないのだ。


 魔法……ですよね?


 でも、かなり特殊な………。

 存在の認識を薄める魔法なんて聞いた事がない。


 きっと、闇属性の一種なのだろう。


 クロンも闇属性を多用しているし……。


「お元気そうですね、スピィ♪ パパは見つかりましたか?」

「……霰山に向かったところまでは確認できたけど、白龍多過ぎ。倒しても湧いて出てきてキリがない。近づくの無理」

 気配の薄い無表情の美少女は無機質な声音で言う。


 とてもか細く聞き取りにくいはずの声音。


 しかし、はっきりと耳に届く。


 まるで強制的に聞かされたような感覚がある。


 これも魔法でなにかしたに違いない。


 影の薄い子ですね……。


 クロンとは全然違います。

 もしかしたら彼女に対する薄いという感覚は魔法のせいだけではないのかもしれない。


 白というよりは淡い髪は腰の当たりまで結ってあり、寝惚けたような眼の瞳は藍色。


 ほんのりと幼さが残る顔立ちとは相反し、この場の誰よりも非常にいい意味で肉付きがよく、言い方がアレだけど娼婦が羨ましがる事請け合いな身体付きをしており、とても強そうには見えない。


 でも、えっちです!

 非常に露出の多い服はこの北風の冷たい地方ではさぞかし寒いだろう。


 着ている本人は全く気にしていないようだけど。


「厄介ですね。………近々、霰山で行われる大戦の事については?」

「……把握済み。クローゼと行動する」

 クロンよりも背が高い美少女が、クロンをむぎゅっと抱きしめる。


 こうして見ていると姉妹のように見えなくもない。


 いえ、きっとクロンとスピィという子にとっては、お互いを姉妹のように思っているのだ。


「助かります」

 クロンはスピィの胸から顔を放しながら言う。


 そして、すぐに胸の中に顔を埋めてしまった。


 明らかに堪能している。


 クロンが胸の谷間で深呼吸しているのがわかる。


 羨まし……、コホン!


 っていうか、腹式呼吸までしていませんか!?


「……キリとリナ、リリはいない」

「ここにはですか? それとも、どこにも?」

 っと、そこでクロンが不思議な質問をした。


 みんなは特に気にした様子もなく、スピィの事を小声で話している。


 ………?


「……どこにも」

「把握しました。パパはどんな様子でしたか?」

「……いつも通り無表情で何を考えているのかわからない」

 それはあなたにも言える事では?

 っと、この場にいる全員が思ったに違いない。


 なんだか微妙な空気が流れ出す。


「……どうしたの?」

「いえ、深く考える事ではありません」

 クロンは素早く立ち直って返事をする。


 さすがにスピィとは付き合いが長いだけの事はあり、対応がスムーズだ。


 私と星華のような関係と言えばわかりやすいのかもしれない。


「……クローゼ、そっちの人達は?」

「あ、こちらはですね、なんと『重奏魔剣使い』のユーフィル・メリアスさんです!」

 クロンは私を指しながら元気よく紹介してくれる。


 っというよりも興奮気味である。


 私はいつからそんなに有名人になったのだろうか。


「よ、よろしくお願いしま」

「……むん♪」

 言葉を言い切る前にスピィが私の首に腕を回して、むぎゅっと抱きしめてきた。


 必然的に彼女の胸に顔を埋める事になるわけであり、おもわずクロンと比べてしまう。


 柔らかさはクロンの勝ちですが、ボリュームは圧倒的……。


 アイリスよりも全然ある!?

 ここまで旅をしてきた仲間は皆、胸が大きい。


 その大きさを順にするとアイリス、私、星華、クロン、リリスとなる(あくまでも私たちの順位であり、最下のリリスであっても凄い事になっている)。


 しかし、このスピィという子はその順位を書き換えるほどの大きさなのだ。


 反則です!

 世の中の貧しい胸の方に謝ってほしいくらい大きい(え? 私もですか!? またまたそんなご冗談を♪)。


「あぁ! ユフィーばっかりずるい!」

「お主、それしか頭にないのかぇ?」

 星華がいつも通りの容易に想像できる反応をし、リリスがこれまた日常に習った問いを言葉にする。


 胸の中であるため見えないけれど、アイリスに至っては立ちながらヨダレをたらして目を開き寝ている事だろう。


「だ、ダメですよ、スピィ! 初対面の方にいきなり抱きついちゃ!」

 クロンが私とスピィを引き剥がす。


 私はちょおっと、……本当にちょお~っとだけ名残惜しかったけれど、スピィの胸を離れる。


 お、落ち着きましょう、私!


 私に百合の性癖はない……はず。

 自信が持てないのが何故なのかは不明である。


「……じゃあ、そっちの子」

 そう言うと、今度はリリスをむぎゅりと抱きしめる。


 後ろに控えていたルー将軍が、リリスの背を押したように見えたのは、気のせいという事にしておく。


 その後、1人1人に対して、まったく同じやり取りを繰り返して、ようやく彼女の自己紹介まで漕ぎ着けた。


 なぜ、全員スピィの胸から顔を逸らすのでしょうか……。

 斯く言う私も視線を逸らしている。


 なんというか……、無防備過ぎてダメなのである。


 もう、そういう趣向ではない人でさえも誘惑する、とんでもない性質をアレは持っている。


 よって、私は悪くない。


 やっぱり……。

 よくわからないけれど、私や星華とどことなく似ている気がする。


 本当に気のせいかってくらい薄い感覚ではあるけれど。


「……時任スピィ。悪魔だけど悪くない。よろしく」

「言い得て妙ですね」

 私は思わず、零してしまう。


 スピィは特に気にした様子はない。


「なんかよくわからないけど、あたしやユフィーとどことなく似てる気がするんだよね」

「……そうだね」

 スピィは自分の顔を覗き込んできた星華に頷いてみせる。


 星華も私と同じことを?


 っという事は、彼女は………。

 私はクロンの方に視線を向ける。


 するとクロンは口元で人差し指を立てて、ウインクした。


 これで私の推測は的中したと言ってもいい。


「お主ら、知り合いだったのかえ?」

「いや、一度も会った事はないんだけど~……。う~ん……、わかんない♪」

 星華は考えることを放棄して、屈託のない笑みを浮かべる。


 それを見たリリスは苦々しい顔をして、ちらりと私の方に視線を向けてきた。


 明らかに「心中お察しするのじゃ」っと言っているように見えてならない。


 そんな目で私を見られても………、なんというか………、困ります。


「……会議の時間が近づいてる。早く行った方がいい」

 っと、スピィは空を見ながらそんな事を言う。


 何を考えているのかわからない不思議な子だ。


「スピィは来ないのですか?」

「……うん。悪魔が居るのはまずいでしょ」

「「「「「あ~、うん………」」」」」

 この場にいる全員が納得した。

 こうして、新しいパーティメンバーが加わることとなった。






 この付近の各小国から集まった将軍たちとその直属の部隊。


 リリス率いる女性だけの軍団。


 そして招集に応じた多くの屈強な傭兵や名のある魔術師、勇者。


 その大雑把な三竦みの勢力の中の代表として、将軍のお三方、リリス本人と最強の将軍、勇者アイリスとその側近という形で私たちが酒場の奥の部屋に集まっていた。


 酒場の主人とは話がついているらしく、あっさりと奥に通してもらえた。


 なんだか知らない内に凄いメンツの中に組み込まれてしまいました……。

 私は冷や汗を浮かべながら席についていた。


 すでに会議は始まっており、将軍のお三方とリリス、アイリスが状況の確認を行っていた。


 こうして見ていると、2人がどれだけ凄い人であったのかはよくわかる。


 しかし、不意に思い浮かぶ旅の情景が、それを許してはくれない。


 ……なんだか複雑です。

 最も数分経ったところでアイリスは机に張り付いてしまったのだけれど。


「傭兵たちに関しては面倒だけど、私が指揮を執る」

 アイリスは机に突っ伏して、だるそうにしながら、そんな事を言う。


 リリスはともかくとして、各小国の将軍たちが怒らないのはアイリスとは面識があるかららしい。


 あのアイリスが指揮を執るだなんて……。

 なぜ、私の頬を涙が伝っているのかは不明である。


 別に母親でもなければ、育ての親というわけでもないのに……。


 でも、嬉しく思ってはいる。


「助かりますな。アイリス殿が指示を出して下されば、荒くれ共も文句は言いますまい」

 お髭将軍がうんうんと頷いている。


 この方は『紅蓮』の名で知られる爆破大好きな将軍だとか。


 悪魔狩りのエキスパートだという話も聞く。


「人員については、やはりコレが限界だろう。いや、よくここまで集まったものだと言ってもいい」

「うむ。やはり、リリス殿の参戦は大きいでしょうな」

「この件に関しては、わらわも無視できぬからのぅ。彼の『白龍王』と『灼炎龍君』が衝突すれば、大災厄そのもの。想定される被害は、この大陸の四分の一を火の海に変えるじゃろぅ。龍同士の戦いは苛烈極まる。それが王となれば言うまでもないじゃろ。っであれば、多少の被害を被ってでも片方を倒すほかあるまい?」

「おっしゃる通りですな。この場にはおりませんが、すでに我々三国の魔術師を三方に集結させ、大規模な結界を張る用意はできております。龍光咆などの広範囲攻撃は、これで対処できるかと」

 直線攻撃………その中でも最長距離を叩き出す龍光咆は、とりわけ頑強な障害物がなければレベル8の龍族でも20kmはあっさりと超える射程となるのだ。


 レベル15の火龍が放つ龍光咆が山々を貫通して国を跨いだなどという記録まで存在するほどなのだ。


「うむ、そうしてもらえると助かるのじゃ。わらわの手勢も千ほどそちらに回させてもらった。結界に関する神の魔導書を用意しておいたから十二分に役に立つはずじゃ」

「八咫鏡をお持ちに!? それは心強い。…………火龍の足止めには、魔王を倒した少年とアイリス殿を除く残りの勇者様が向かわれておる。問題はないはずだが」

 筋骨隆々な将軍が地図を指さしながら言う。


 おそらく、この指差している場所で足止めをしてくれているのだろう。


 少数精鋭にも程がある人数なのだろうけれど、魔王と戦ったほどの強者であれば、それくらいが丁度いいのかもしれない。

 

 弱い兵士は邪魔になるだけである。


 被害の拡大を避けたのだ。


「わしらは、わしらの戦いをするだけじゃわい」

 お髭将軍がお髭を撫でながら言う。


「ですな。しかし、今回の大戦はかなり不利になるでしょう。彼の龍王だけでも今の手勢で相手をできるか不安が残るのに、取り巻きに消龍が4体もいる」

 坊主の将軍が難しい顔でそんな事を言う。


 今の話で出てきた消龍とは、レベル15の白龍種であるバニッシュドラゴンの別名だ。


 白龍種最強にして『白龍王』の発生した種でもある。


「さらに聖龍まで居る始末だ」

 筋骨隆々の将軍が続く。


 聖龍はホーリードラゴンの別名。


 神や天使が振るう聖なる光を内に宿す極めて危険な龍である。


 この龍の亜種とは旅の途中で戦っている。


 ベーネスと名乗る聖水龍の事だ。


「唯一の幸運があるとすれば、九尾の存在でしょうかのぅ?」

 各国の将軍たちが言葉を並べていく。


 そんな中、1人の少女が立ち上がった。


「九尾?」

 その言葉に食いついたのは、私の後ろで会議の内容を聞いていたクロンであった。


 将軍お三方は、特に機嫌を損ねる様子もなく頷く。


「ドコとも知れぬところから、ひょんと現れた黒毛の妖狐が、霰山で白龍相手に大暴れしているのです。私の弓矢部隊を先に行かせ、妖狐を刺激しないように援護させながら逐一状況の報告をさせているのです」

 坊主の将軍が言う。


 黒毛の妖狐……。

 覚えがある。


 旅の途中で黒龍から助けてくれた人の姿に狐の耳と八本の尻尾を生やしたあの妖狐だ。


 彼は確か九本目の尻尾を出現させるために、日夜戦いに明け暮れていると言っていた。


 もしかしたら……。

 過去の言葉を思い出し、予測を広げ、この地で戦う妖狐が私の知る妖狐と同一の人物であると淡い希望を確信へと変えていく。


「………情報に感謝します」

 クロンはふと目を閉じて頭を下げると、後ろに下がる。


「『黎剱』殿にそう言っていただけるのは光栄だね。………今回の作戦の要は、おそらくこの九尾になるだろう」

 どうやらクロンは小国の将軍たちの間でも有名なほどに、やんちゃな事をしていたらしい。


 まあ、黒のコートなんて目立つ格好をした年端もいかない少女の戦士で当てはまるのなんてクロンくらいだろうけど。


「援護部隊を増やして、揺動とするのですな」

「九尾の目的は不明瞭だが、こちらにとっては好都合。九尾が霰山の中腹で暴れている内に我々は逆側から一気に急襲をかける!」

「反対側には最低でも消龍が2体いる。今回集まった軍勢を半分に分けて当たるのが妥当ですかな? もちろん、今回集まった全軍を持ってしても1体ですら倒せるか怪しいものですが」

 この場に集まる強者を抜いた場合での計算なのだろうが、間違ってはいない。


 消龍とは、そういう次元の存在なのだ。


 この無謀過ぎる大戦が計画されたのも、それ以上の脅威があってこそだ。


 でなければ、誰が龍王を相手取ろうなどと考えるだろうか。


 ……いえ、クロン辺りなら、もしかして。

 勝ち負けの問題ではなく、うっかりとやらかしそうだ。


 真面目な性格とは裏腹に、かなりの無茶無謀を平気な顔で躊躇せずやろうとする。


「女帝殿の軍勢は、我々がかき集めた部隊全てと釣り合うくらいか……。後は各有名どころの使い手を割り振ればよいじゃろう。下手にそちらの軍と交ぜて、諍いを起こしては元も子もないからのぅ」

「うむ。わらわたちもその方が動きやすいのじゃ。消龍を倒し次第、狼煙をあげる。もう片方が狼煙を上げ次第、『白龍王』ファーヴニルへの総攻撃としようぞ」

「全軍の指揮は」

「わらわの将軍がお三方に指示を出し、各部隊に広めてもらえばよかろう。即時の対応が急がれる場合は、その限りではないものとすればよい」

 リリスは手馴れた様子で言葉を並べる。


 この場で自分の将軍を最高責任者に据える発言をさらっとしているが、おそらく反対意見は出ないだろう。


 なにせ、ルー将軍のネームバリューは、それほどまでに強力なのだ。


「ふむ……」

「魔王時代に不敗を誇り、国境を守り切った最強の将軍とあっては我々も従わざるおえませんな」

「いや、まったく……」

「今回はメンツにかまけているほどの余裕もないしのぅ」

 将軍たちはお互いに笑い合う。


 これが各国の王であったならば自軍の将軍を、と強く押すのだろう。


 こうしてトップではないが屈強で理智的な面々が集められたのは、会議でのいざこざを無くすためなのだろう。


「ユフィーたちはどこにつくのじゃ?」

「わ、私たちですか!?」

 私と星華、クロンはお互いに顔を見合わす。


 リリスはルー将軍と共に自分の軍隊を従えていく。


 アイリスはお三方の将軍とは魔王時代に共に戦っているという事だし、そちらにくっ付いていくと思われる。


 私たちの立ち位置であれば、どちらにも面識があるので上手く戦える気もするのだけれど……。


 ……………………………………………………………………………………。


 …………はあ~、答えは決まっているようなものですね。

 私はある方向に視線を向けて、心の中でため息をつく。


「う~ん………。あたしたちは九尾の方に回ってみるよ」

 星華はそんな事を言う。


「お主は相変わらず馬鹿じゃのぅ。彼の魔物は刺激しない方がよい。下手に刺激して、こちらまで標的にされてはかなわぬぞ」

 そんな事になれば大乱戦は免れないだろう。


 そして、耐久力の問題で、私たちは確実に敗北する事になる。


「それはわかってるんだけど、クロンがちょっと気になってるっぽいし」

 星華はクロンの頭を撫でながら言う。


 クロンは星華の顔を見ると、表情を柔らかくする。


 星華はにっしっし~と悪戯っ子のような顔をして返す。


「クロンが?」

「確認したい事があるだけです。それに残りの消龍が九尾と戦っているとは限りません」

「つまり、クロンの用事が済んだら、少数精鋭で消龍の相手をするために駆け上がる、っという事です。山の前面には白龍の宝物庫もあるとか。きっとこの戦いで役に立つ秘宝もあると思うんです」

 私も星華に習い、クロンの頭を撫でながら思う意見を口にする。


 そんな私たちの言葉を聞いたお三方は、口をぱっくりと空けている。


 どれほど無謀な事をしようとしているのか理解し、それを口にできる私たちに驚いているのだ。


 普通に考えれば愚か者だ。


 しかし、私たちには各地で成したそれなりの実績がある。


 最低でも時間稼ぎくらいはできるはずだ。


「うむ、おぬしらならば信用するに足る」

「それでいいと思う」

 リリスとアイリスは納得してくれたらしく、頷いてくれた。


 この場でもトップクラスと思われる実力者の2人が納得している以上、お三方の将軍も口を挟む事ができない。


「そうだ。今回の大戦の要になる魔導書は?」

 っと、そこでアイリスがお髭将軍に視線を向けながら問いかける。


「抜かりはありませんよ。我が王宮魔導師達が総力をあげて、かつて初代魔王を人の身に封じ込めた術式をさらに発展させました。………いいのですな、アイリス殿」

「「アイリス!?」」

 私と星華は声をあげる。


 つまり白龍王を封印する大戦とは、そういう事なのだろう。


 文献に大雑把に記載されていた初代魔王を封印した伝説の術式を、再現して使用する。


 封印に際し、ある程度弱らせる必要があるため、大戦をするという事だ。


 そして封印するためには檻となる人間が必須。


「うん。この戦いに勝つにはこうするしかないからね」

 アイリスもやり切れないといった表情をしている。


 勇者でありながら、龍王を倒し切る事は不可能。


 そんな事実が、彼女に苦渋の決断を取らせたのだ。


「本当にいいのじゃな?」

 リリスは真剣な瞳でアイリスを見つめる。


 きっと、リリスはこの事を最初から知っていたのだ。


 でなければ、きっと私たちと一緒に声を上げている。


「覚悟が揺らいじゃうじゃん。聞くのやめよ?」

 アイリスが頬を膨らめて言うと、リリスもため息をつく。


 彼女の方こそやり切れないといった表情をする。


「タイミングはこちらの方で判断する故、とにかく『白龍王』にダメージを与えてくだされ」

「果たして龍王クラスにダメージが通るのかは疑問ですが」

 ルー将軍はまじめな顔で呟く。


 おそらく、龍王クラスの龍の衣の硬度を気にしているのだ。


 私たちが戦った龍たちでさえも、かなりの硬度があった。


 生半端な攻撃では弱点でなければ、まともな傷はつけられていないほどだ。


 あの時見た『白龍王』は戦闘態勢に入っていないのに龍の衣を纏っていました。


 っという事は戦闘態勢を取れば、少なくともあの倍の濃度の粒子魔力を纏うはず……。


 相当な覚悟を決めていかなければ、魔力による威圧だけで心臓が止まってもおかしくない次元だという事は、妖狐さんとの出会いで理解できる。


 八尾の妖狐は、天災レベルと呼ばれる規格外の領域に届くという。


 つまり、龍王たちと同じ次元という事だ。


 もっとも魔力の量や濃度は龍の方が比較にならないほどではあるけれど。


「過去に神装を行使して、龍王に傷をつけた逸話もあります。必ずや」

「まあ、そういう事にしておこう」

 ルー将軍も頷く。


 そんな自分の将軍を見たリリスは、コホンと咳払いをして口を開く。


「ふむ。では各自に準備を整えるものとしようぞ。進軍は明日、日の出と共に! 我らに勝利を!」

「「「「我らに勝利を!!」」」」

 この場にいる全員がリリスの言葉に習って声を揃える。


 こうして、白封大戦の会議は終わり、各自、陣営へと戻るのであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ