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ツイッタリア戦姫譚Ⅰ

1 戦場の華と風


そこは戦場にありながら、絢爛なる舞踏会の様相を呈しておりました。


「臣民には恩寵を!逆賊には鉄槌を!」


 回転式銃身から生み出される無慈悲な弾丸の奔流で敵を薙ぎ払いながら戦場に舞う華。


 木漏れ日の筋なす光の中で長い金髪を踊らせながら圧倒的存在感を放つ華こそが我がツイッタリア帝国が誇る皇女殿下であり、私がお仕えする姫様にございます。


 白と紅を基調とした豪奢な衣装を身に纏い、端正な御尊顔を泥化粧で汚し、口元に不敵な笑みを浮かべる姿は残酷で美しく、現代に蘇った戦乙女を彷彿とさせるのです。


「よし、道は拓かれた!我に続け!」

「流石は姫様だぜー!皆、続けー!!」


 この戦場で初めてまみえた戦友達をも虜にして、戦乙女――姫様は自身で切り拓いた道を細い体躯からは想像もできない膂力で駆け抜け、新たな敵を求められます。


 御味方の勢いも増し、まさに破竹の進撃となっておりましたが、森を抜けた先に敵の強固な防衛線が現れたことで状況は一変致しました。


 複数のバリケードと塹壕で構成された守りは固く、正面突破を挑んだ者はもちろん、側面攻撃を試みた者も敵の凶弾に倒れていきます。

 

 戦乙女の加護を受けたとばかりに快進撃を行っていた御味方の表情にも不安の色が浮かび始めました。


「このままではジリ貧にございますな。姫様、如何なさいますか?」


 主の判断を試すような発言に咎があるかと思いましたが、それは杞憂にございました。


「兵も限られ、時間も限られれば、成すべきは1つよ!」


 姫様は背負われていたミニガンを地面に捨てられると、抜き放った2丁の機関拳銃を宙に掲げられました。


 華美な装飾があしらわれた銃ではなく、艶のない黒塗りの武骨な銃を好まれるのが姫様らしく、そのことがあの方――亡き皇太子殿下の忘れ形見であることを強く思い起こさせるのです。


「血と鉄と油によって道はつくられ、軍靴によって固く踏みしめなければならない!我らの屍は後に続く臣民の道標!先に逝くぞ!!」


 古きより帝国に仕える者達にとって、それは雷に打たれたかのような衝撃でした。かつての大戦の窮地で我らを奮い立たせた玉音。


 過ぎし日に共に戦場を駆けた鼓動と熱が蘇り、この方こそが私が仕えるべき主なのだと改めて思い知らされます。


 決意と覚悟をもって握りしめた拳銃が微かに震えたのを見逃すは執事の名折れ。


 この主の想いに今応えずして、いつ応えるというのでしょうか。


「姫様に続けー!ここで遅れるは末代までの恥ぞ!」

『応!!!!』


 そして、我らは再び戦場の風となる。

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