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帽子男の短編集

大陸の砂時計

作者: 帽子男

 小さな大陸の中心に大きな砂時計があった。その時計の砂がすべて落ちきってしまうとその大陸は終末を迎えるという言い伝えがあり、もう少しで砂が砂がすべて落ちきってしまうという状況まできてしまった。


「まずいな、あと数週間もすれば砂時計の砂は落ちきってしまうだろう」


「しかし、このまま黙って見ているわけにもいくまいどうすれば良いのか」


 といくつかの国の賢者達は集まり相談した。このまま見守って終焉を待つのか、いっそのこと砂時計を壊してしまうのか、このまま砂が落ちきっても人類は滅亡しないという者までいた。しかし、ここで画期的な意見が出る


「砂時計に砂を継ぎ足していけば良いのではないか?そうすれば私たちはとりあえず死なずに済むし、砂ならどこからでも取って来ることができる。まずは私の国が砂を集め、時計の頭に上り、穴を開け、そこから砂を足してみよう」


 なるほど、賢者達はその案に賛成した。それから、少しでも作業がはかどるように近くの国の者も集まってきて砂を運ぶ作業を手伝った。砂を集める作業は順調に進んだ。唯一心配だった砂時計に穴を空ける作業も問題なく進みいよいよ最終段階、時計の中に砂を入れる作業が始まる。大量の砂が時計の中に入っていき、特に問題はなく終わる。そして、数週間経ち新しく入れた砂が問題なく落ちるか、世界は終わらないかなどの不安要素を確認するため賢者たちはまた集まった。


「計算上は砂が通れないという事はありません。しかし、外部の砂を時計が受け入れてくれるかどうかは別問題です」


「もし、だめならどうするのかね」


「時計を壊すか、終末を何とかやり過ごす方法を考えるしかないでしょう」


 と話していた。結果は問題なく砂は時計の中を上から下に通り、世界も終わることなく続いた。その事に各国の人は喜び、かなり長い間お祭り騒ぎが続いた。そして、数週間してまた賢者たちは集まっていた。


「今度はなんだね、もう時計の件はいいのだろう。我々の国は救われた、これからも時計には適度に砂を入れていく何か問題はあるのかね」


「実はですね、今回は私たちの国の砂を大量に入れたのでもうこの国には砂は無いのです。ですから、次は違う国から砂を集めてきて入れる必要があるのです」


「なるほど、確かにこれからも砂を入れていくとなりますと一つの国からでは賄いきれないかもしれませんな」


「その通りです。なので、これからはこれを大会のようにしませんか」


「大会とな?」


「はい、国同士の大会にしてしまうのです。毎年、砂を国から持って来て一番多く持ってきたものが優勝、名誉として砂時計に砂を入れてもよいのです。また、砂を入れた国はその年他の国から賞金がもらえ、次の年には大会に参加できない。面白そうではありませんか?」


「なるほど、作業として入れるのではなく大会にしてしまうのか。面白そうではあるな」


 この提案は直ぐに決まった。それから毎年彼らの国は競い合って砂を時計の近くの国に持ってきた。そして、測り重さを競い合った。その為各国は勝つために自国の石や岩を削っては砂にした。しかし、困ったことにそのような行為をしていては自国の地盤が不安定なりこれ以上の大会は危険であるというのでまた各国の賢者が集められた。


「これ以上は災害の危険がある」


「しかし、砂が無ければ時計がいつ止まってしまうか分からないですよ」


「それならば違う大陸の国を探索すればいいのではないでしょうか?」


「海の向こうになんて国があるのか?」


「伝説には私たちと同じような大陸がいくつもあると言い伝えでは残されています」


「しかし、そう簡単に砂を分けてはくれるかね?」


「それはきっと大丈夫でしょう。私たちと同じような大陸があれば砂なんて沢山思います、それに仮になくても石や岩までないという事はないでしょう」


 と賢者たちは言った。さっそく、国の人たちは木を切り、加工し、大きな船を造った。そして、新たな大陸を目指すべく各国は海に飛び出した。そして、一年がたったある日一艘の船がボロボロになりながらも戻ってきた。そして船の中には砂が入っていた、国の人々は大喜びでその砂を時計の中に入れた。しかし、船の砂だけではやはり今まで取れていた量には全くとどかない。もっと砂が無ければまずいと新しい大陸を見つけた船を船頭にし砂を取って来るようになった。

 そして、またさらに一年後船は戻ってきた。今度は有り余るほどの砂を大量に運んできた。


「これで砂の安定供給が可能になった。もう自分たちの国から砂を入れなくて済む」


「そうですね。しかし、また今砂をもらってる大陸から砂がなくなれば砂を提供してくれる大陸を探さなければなりません」


「そうか。それは困ったな」


 と賢者たちが頭を悩ませているとこの国の兵隊が入って来た。


「失礼いたします。今貿易をしている大陸の長が話をしたいと船でやってまいりました、いかがなさいましょう?」


 「通してくれ、失礼のないようにな」


 と言って長を迎え入れた。長は入ってくると軽く会釈をして椅子に座った。賢者たちは会議を一度中断し長としばしの談笑を楽しんだ。しばらくして、長は前から疑問にも持っていることを聞いた


「そういえば少し貴方たちにお聞きしたいことがあるのです」


「何でしょう」


「なぜ貴方たちはわが大陸の砂を大量に持ち帰るのでしょう?」


「それは終末から逃れるためです」


「終末?」


「ええそうです。わが大陸には大きな砂時計がありその砂がすべて落ちてしまうと大陸は終末を迎えるという言い伝えがあるのです」


「なるほど…私にもその時計を見せてはもらえませんか?」


「ええ、いいでしょう」


 次の日、貿易をしている大陸の長と賢者たちは砂時計のある国へ向かった。砂時計の周りにはたくさんの砂があり、まるで砂漠の様であった。


「すごい砂の量ですね」


「ええ、この大陸とあなたのあなたの大陸の物ですよ」


「時計も大きい建物のようだ」


「ええ、これが止まらないようするのが私たちの使命です」


 と賢者の一人が誇らしげに言った。長は少し考えるポーズをしてこう言った。


「これ、逆さにすれば砂を足さなくてもいいんじゃないですか?」

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