91 非日常との遭遇
またリーナ達の寝室に侵入者が現れたらしい、フォーチャー家の館は今大騒ぎのようだ。
「今度はリーナが起きていたはずなのに…」
ステータス的には中隊級並みのリーナだが、彼女は数年間実戦の中で生きてきた猛者だ。気配を察知する能力は相当高い、そんな彼女が近づいてきた侵入者に全く気付くことが出来なかったようだ。相手は本当に人間なんだろうか?樹海の住人クラスの隠形技術だ…
俺はリンとフィアにしばらくの間リーナや、念のためにタリアに張り付いて守ってもらえるように頼んだ。それに合わせて、お凜にはケットシー達と共に夜間の警戒もお願いした。
ケットシーは猫妖精だ。その妖精ならではの視点で侵入者に対して警戒してもらう。
「早くに目が覚めたが目が冴えちゃったな…きょうの予定を考えるか…」
予定では学院への体験入学が2日後に予定されている。学院へは俺は行く予定はない。つまりタリアが学院へ行っている間は自由行動となる。なのでその間にパークの知り合いに会いに行くとするか。まずはアポ取りだな…そして新たに召喚したパートナー達『撃滅部隊』のレベル上げが完了次第、ヘルクと合流させる。
さて、リンとフィアには今日からリーナについてもらうことにしたら、セバスもフィアに付いて行くだろう。念のため、リーナと仲の良くなったアル達も付けるか…彼女も最近よくあいつらを撫でたりしているしな…
つまり今日から暫くこの館に滞在するのは、俺、山田、田中、佐藤、マッド、ノルマ―となる。丁度いい、暫く邪魔が入らなそうならマッド達にいろいろと便利な電子機器を作ってもらうとするか。
俺は朝食の時間までどう行動するかを考え、早速マッド達に色々と開発してもらうことにした。
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「ハッ…ハッ…」
俺は息を切らせながら走る。相当距離があったが姿を見られたかもしれない。奴らは人間じゃない!すぐここから離れないと皆と同じように…
「あっ!」
俺は脚をもつれさせ転んでしまう。派手に転んで積んである箱とかを倒してしまった。
「いたっ…もうやだ…」
転んだ拍子に足を怪我してしまったようだ。もう、心が折れそうだった…
「大丈夫ですか?」
「?!」
そんなことを考えていた時、そこには倒れた私に手を差し伸べる可愛い女の子が居ました。
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夜中の出来事を受け、暫く私に護衛が付くことになりました。そして、女性である私の事情を考慮し、リンとフィアも協力してくれます。しかし、私が守られる側になりましたか…あの頃では考えられないことですね。
そして今、タリアお姉さま達と共に買い物に来ています。王都百貨店に向かっていますが、馬車での移動が困難になるほど人通りが多いため、私達は歩いています。
「なぜこんなに人が多いのでしょうか?」
タリアお姉さまが不思議そうにつぶやきます。
「ここ最近暗殺事件が立て続けにありましたからね。なんでも馬車に乗りこんでから屋敷に着くまでになくなっていた方が、ここ1月ほどの間に10名以上になりましたから…」
最近は体調が崩れることもなく、気軽に外に出かけられることになったメリナ様も一緒です。
私達が帰ってから、王都では大事件が立て続けに起こっていたようです。中には馬車の中に護衛が一緒に乗っていたにもかかわらずに気づかれずに暗殺されたという事件もあったようで、人目に付くように往来を護衛を連れたまま歩く貴族が多くなったようです。
「それでこの大混雑ですか…」
「ええ、伯爵家などの重要人物が何人も無くなっていますからね…私たち侯爵家でもこうやって歩いていますので、下級の貴族も気軽に馬車で移動できなくなっていますから…」
確かに上位貴族が歩いて移動している中で、男爵や子爵などの家が馬車で移動しているとなると、悪目立ちしますね。しかし、そういう方たちは当然護衛の数も多くなるので、このように混雑になっていると…
それに、この大通りの建物の上には、一定の間隔で衛兵たちが展開しているようで、地上は自分たちの護衛に任せ、上空は衛兵たちが見張っているため、馬車よりは安全だそうです。
「しかし、何故そんな事件がこんなに立て続けに?」
「…噂ではありますが、スラムにある犯罪組織の抗争が原因だと言われています。」
お姉さま方がそんな話をしています。
「ヘルクさんの事ですかね?フィアはどう思います?」
「うーん、それよりも最近壊滅したっていうアウゲイアース関連かも知れないのだ。ダンナ様もそんな話をしていたのだ。」
相変わらずトーヤ様はいろいろと動いているようですね。しかし何ですかその情報!いつの間にそんな危険なことに関わっているんですか!
そうしながら歩いていると、血の匂いがしました。フィアやリンも気づいたようです。
「タリア、メリナ、止まってください。」
「どうしましたリン?」
「何かありましたの?」
「嫌な感じがするのだ、皆この場を離れるのだ。」
お姉さまもメリナ様もこのような空気に馴染みが無いためか戸惑っていますが、これは戦場の匂いです。すぐにこの場から離れた方が良いでしょう。
護衛の方にもそう伝え、皆でこの場を離れようとした時、
ボンっ!!
と凄い音がしました。
「爆発だ!」
「建物が吹き飛んだぞ!!」
「ママ―!!」
どうやら近くの建物が爆発したようです。被害のほどは分かりませんが、大混乱しています。
「直ぐにこの場から離れるのだ!」
フィアがそう叫びましたが、混乱した人の波が、その場から逃げるために押し寄せてきました。
「「「きゃあっ」」」
その人ごみの中で、タリアお姉さまやメリナ様は無事に護衛やリン達に保護されていましたが、未だ成長期の来ないこの小さな体では、その人ごみの波にさらわれるしかありませんでした。
「リーナ!!」
「リーナちゃん!!何処ですか!!」
「うそ!?リーナ!返事して!!」
「今すぐダンナ様に連絡するのだ!!」
相当離れたところでようやく人波から離れることが出来ました。しかし、未だに多くの人が逃げ交い、あの場所に戻ることは出来ません。
「タリアたちと離れてしまったにゃ」
「皆と合流するまではわっちらが頑張るにゃ」
「箱舟に乗った気で安心するにゃリーナ!」
何気に豪華な船で、ほっこりします。アルちゃんたちを付けてくれたトーヤ様には感謝ですね。しかし、今すぐには人が多すぎて移動できません。
どうしよかと思っていた時、ガシャン!!と路地裏から物音がしました。
「なにかしら?」
「行ってみるにゃ」
「危険ならすぐ逃げるにゃ」
音の方向に警戒しながら行ってみると、子供が倒れていました。どうやら転倒した際にけがをしたようです。
「大丈夫ですか?」
「?!」
ぼろぼろの服を纏い、短めの髪がボサボサになっています。恐らくスラムの子でしょう。
「っ!何でもない!それじゃあ!!」
そう言って路地の奥に走って行きました。
「待って!」
王都だけあって非常に建物が多く、路地裏ともなれば非常に入り組んでいます。そして、今の私よりは大きいですが、まだ成人していない子がこのような所に居るとなればその身が非常に危ういです。私はあの子を追います。
(リーナ無事か!!?)
どうやらトーヤ様が念話を繋げたみたいです。
(はい、ご心配をおかけしました。私は無事です。しかし今困ったことになっていて、ケガをした子供が路地裏に入ってしまい、心配で追いかけています。)
(無事なら良かった。確か百貨店の近くだったね?今から俺も向うよ。リン達にはタリアたちの護衛をしてもらうから、この間渡した鈴を持っているね?それを鳴らしておいてくれ!)
この間トーヤ様に渡された鈴は、ケットシーとの繋がりを示すものらしく、近くにいるケットシーが寄ってくるというモノらしいです。
「あっちに行ってみたいにゃ」
「ここを曲がったようだにゃ」
「あっちに匂いが続いているにゃ」
もともとこの王都に住んでいたアルちゃんたちですので、土地勘ばはっちりです。指示通りに付いて行くと、体力が尽きたのか、さっきの娘が蹲っていました。
「ケガは大丈夫ですか?」
「?!何で来たんだ!!直ぐにここから離れろ!!」
その子は必死な形相で私に訴えます。
「どういう事?」
と事情を聞こうとした時、
!!?
尋常じゃない者の気配がしました。
「ああ、もう…終わりだ…ごめんね…お父さん…」
そう呟く子を横目にその気配のある方に向きます。
ザっ、ザっ
近づいてくる影は、
「魔族?」
どうやら通りすがりでは無いようです。私は戦う覚悟を決めました。




