81 探索探索探索…ただ風景を眺めるだけ…が良かったです!!
皆さんは秘境の探索と言うと何を思い浮かべるだろうか?ロマン?感動するような大自然?始めて見る生き物たち?そんな風に思っていた時期が、俺にもありました…
『オーノー』
「ん?また攻撃を受けたのか?」
ウィィィィン、ガシッ
「ファイアー!」
この一連の流れでだいたいのモンスターは消える。まさかのマシンの底が開き、戦闘用の腕が何本も出るとは…おかげでこのマシンを攻撃したモンスターは、即座にそのアームに捕まり、砲身から放たれるビームを間近で受けることになる。
加減をした一撃だが、当然そんなものを喰らっては五体満足に済むわけはなく、大体『見せられないよ!』の看板で隠されそうな感じになっている。素材もろくに集められない…
そして、このムサビ―は樹海探索用マシンと言うだけあって、非常にスムーズに樹海の奥に向かって移動できている。
分かっている。効率を求めている点については俺も大満足だよ、でも探検の情緒が無い…
そんな感じでその日の探索は終了した。そして夕食後、食休みを取って見周りに行くことにする。
「じゃぁ夜の見周りに行っ「冬也君一緒に寝ましょう!」
リンが速攻でぶち込んできやがった?!なんか目がトロンとしているううう?!
「いやダメだろ!!男女7歳にして同じうせずだよ。もっと慎みを持とうよ!」
体が覚醒しきっていないから理性を保って居られるが、それでも腕が勝手に動く時があるんだ!
「それにほら!キチンと夜の見張りをしなきゃダメじゃん?!ここツニク大樹海だよ。」
俺は必死に夜は気を付けて、襲撃に備えないと!と説得した。同時に周りを見る。誰か援護してくれる人は…
駄目だ、セバスはフィアに付きっきり、あそこだけ何か雰囲気違う。りゅうは既に外に出てるし、アル達も一緒に付いて行っている。あいつら自由だな本当に!
九錠院は…窓の外を眺めて必死にこっちを見ないようにしている。おい!いくらなんでもそれは無いだろう!!
「このムサビ―は就寝モードを搭載しているから見張りは必要ないぞ?きちんと迎撃システムを組んでいるのだからね。」
マッドが要らんことを言う。ノルマ―!君は常識人だっただろう?リンを止めてくれ!!
「にゃああああああ?!」
あ、イルが何故かムサビ―のアームに捕まった。操作しているのはノルマ―だ…
「にゃあにゃあにゃあ♪うふふふふ…モフモフね…」
あれ?ちょっとお顔が赤いですよノルマ―さん。
「フフフ、彼女のおやつに少し…ね。お嬢様方も巻き添えを喰らったようだが…可愛らしいじゃないか?」
どうやらこのマッドサイエンティストは、自らの助手のおやつに何か盛ったようである…クズじゃねぇか!
「盛ったとは失礼な、アルコールの成分をおやつに掛けただけだよ…遅効性だから寝る前にはちょうど気持ち良くなってくるんだ。ぐっすりと眠れるぞ?完璧だな…クックックッ」
クッ…駄目だこいつ…早く何とかしないと…
って、よく見たらフィアが笑いながらセバスの肩をバシバシ叩いている。セバス…そうか…フィアの相手をしてくれていたんだな…面倒ごとから逃げたと思っていたよ…疑ってごめん。
「にゃああああああああ、あっあっあっ…」
とうとう捕まえたイルのおなかに直接頬ずりをするようになった。ノルマ―…君きっと、正気になったら悶絶するんじゃ…ちなみにリンは俺にスリスリと頬ずりしている。
あっ、イルがとうとうグデッっとなった。
「冬也君…リンは寂しいです…もっと構ってください…」
耳元で言うのは止めてください。
「マッド!お前このままじゃ明日また制裁を受けるぞ!それでいいのか?!」
すると、マッドは両手を肩まで上げてやれやれと顔を横に振っている。この状況じゃ無茶苦茶腹立つな!
「所長は今まで何を見ていたのかね?ノルマ―の制裁?そんなもの、とっくに受ける前提で行動している。」
ドヤ顔でそう宣言するクソ科学者、
「ねぇ、冬也く~ん…焦らさないで~」
リンがもうすぐ18禁な表現をしそうになっている。
「リン、こういうのは俺はあまり好きじゃない。女の子なんだからもっと慎みを持って!俺はもっと凛とした佇まいのきみをおおおおおぉぉぉぉっ?!」
リンがペロンと首筋をなめた。何故!?
「この味は!…嘘をついている『味』ね…冬也君!」
クソっ、進化してより厄介な方向に進んでる!何を言っているか分から分からねーと思うが、俺も分からない。ただ背中に感じる柔らかい感触が…嬉しいけどコミュ障には刺激が強すぎる~っ!
目の前のマッドに頼むのは意味がないと悟った。残るはリーナと山田だ!頼む、助けて!
「私…最近このままで良いのかな?って思うのです。同じ年代の子達は友達を作ったり、恋人を作ったり、婚約者を作ったり…それに比べて私は、戦闘訓練したり、魔術の訓練したり、樹海を走り回ったり…いくら体が若返っても中身は20を超えた女だって思うと、一体何なのかなって…フフフッ…」
まさかのダウナー系だった?!あれはダメだ。話しかけると厄介なことになる!
「俺も最近自分が何なんだろうって…訓練中に社長を裏切って、ギクシャクして…未だに恨まれているみたいなんす…最近もちょっとしたことで禿ゴブリンって…俺だって好きでハゲた訳じゃないのに…うっ…なんで俺だけ毛が無いんだよ!そんなひどいこと言わなくても良いじゃないか!!俺だって女の子とお話したいよ!!でも社長ばっがり~ハゲって言わないで~」
山田は号泣?!ごめん、あの裏切りの事はもう別にどうでも良いと思ってるよ!だから気にしないで!それにもうハゲって言わないから!?
と言うかお前、おやつ食ったのか?!緑っぽい肌が結構赤くなってるぞ!
「その気持ち分かります。なんかもう…世界が滅んでくれないかなって…フフフッ…」
リーナさん?!貴女まで暗黒面に落ちるのは止めてください!!?
酔っ払い共の無茶苦茶なセリフにツッコミが間に合わない。
「ハハハっ、この混沌とした空間、たまらないねぇ~」
いつの間にかリクライニングチェアを出してワインを飲んでいる。よし、俺決めた。こいつはここで消しておかないといけないやつだ。
「範囲異常解除」
本来は自然と酔いが醒めるまで待つ方が良いはずだ。血迷っていたと思ったらいきなり正気に戻ると、死にたくなるからな。
俺にもあるよ、黒歴史いたと思ったらいきなり正気に戻ったこと…三日は家から出られなかったよ…
「所長おおおおぉぉぉ!!!?なっ!何をするダァーーーーーーッ」
マッドがメッチャ慌てている。俺は徐々に素面に戻っていく女性陣を眺めた。リーナはどんどん顔を赤くしている。そして、とうとう両手で顔を覆って女子仮眠室に走り去っていった。
ノルマ―は白目で涎を垂らして気絶しているイルに謝りながら、涙目になっている。どうしようかと悩んで周りを見て…元凶を確認した瞬間に般若の顔になり、眼の光が消えていくと同時に無表情になっていった…怖っ!?
「おおおおおおおおおっ落ち着けノルマ―!猫と戯れる君はとても可愛かったぞ!!」
確かに可愛かった。だが、今はそれを言う時じゃないだろう。そこからはいつも以上にマッドを嬲るノルマ―が見えた。
「冬也く~ん♪」
リンは素面に戻ってもブレなかったああああああああ…
「今は中に入るべきじゃないと思うにゃ」
「きゅううううぅ」
「おいらもそう思うにゃ」




