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49 マリアスの後悔

第1話のマリアス視点


 全く救いの無い話です。見たくない人は飛ばしてください。




「え?」


 メリナの訃報を聞いた時、僕はしばらく何も考えられなかった。




 











 メリナ…物心ついた時から友人だった女の子…昔から体が弱かったけど、芯のしっかりした女性だった。






 メリナとタリア、そして僕達は同じ派閥の侯爵家で、同い年だった。そして、母親同士も学院時代から仲が良く、必然的に幼い僕達もよく合っていた。タリアは自分の領に居るので、基本的に数か月から年に1度会うというところだったが、メリナと僕は王都の屋敷に住んでいた。


「マリアス様、タリアともうすぐ会えますね。」


「ああ、楽しみだね。」



 自然とメリナと会う機会が多く、彼女を知れば知るほどに、僕の中で彼女の存在が大きくなっていった。いつか彼女と一緒になりたい。そう思えるほどに、しかし…







「メリナ!?」







 今日は天気が良かった。メリナの体調もよく、二人で出かけないかと誘った。結構ドキドキした。


「はい!」


 メリナも喜んでくれたみたいだ。誘って良かった…しかし、どうしても立場上二人きりに離れなかった。必ず数人のお供が付いてきた。まぁ、彼らは僕らに気を使って何も話さず、ただ見ているだけだったが…結果的に助かった。


 ランチを食べた後、メリナの様子がおかしくなってきた。顔だけでなく、手なんかも赤くなってきていた。


「大丈夫?熱でもあるの?」


「大丈夫です。ご心配なさらずに…」


 笑っているが、苦しそうにしているメリナ。


「今日はもう帰ろう。送るよ。」


「もう少し駄目ですか?木陰で休んでいたら少しは良くなると思います。」


 そうして、彼女をエスコートした。しかし、握った手はやはり少し熱い。


 しばらくすると、彼女の呼吸が荒くなってきた。


「メリナ?」


「ごめんなさい、少し疲れてしまいました。」


 そして、彼女はぐったりしてきた。


「メリナ?メリナ!?」


 それから急いでメリナを屋敷に送る。彼女は数日間体調が悪いままだった。





(僕が無理に誘ったから…)


 

 僕がしたいことに彼女を巻き込むと、彼女は無理をしてしまう…そう思い、僕はメリナに告白することに尻込みしてしまった。この国の貴族は、恋愛結婚も認められている。大半は13歳までに決まらなければ、親が相手を見つけるが、それまでに相手を見つけ、両家が納得すれば婚約することが出来る。


(でも、もしまた僕に合わせて彼女が無理をすれば…彼女の苦しむ姿は見たくない。)


 そして、いつしか僕は彼女に告白するということを諦めていた。胸が苦しいが…もっと彼女にふさわしい男をルーティラ家が見つけてくるだろう。



 そして、僕はメリナ以外の女性に目を向けることにした。タリアにも目を向けようとしたが、どうしても友人という意識が抜けず、恋愛対象としては見れなかった。








 ある時、王都のデパートに行った。人ごみを利用して、供の者を巻いたりして一人を満喫できた。そんな時、一人の少女と出会った。


「!?」


 メリナ以外で、初めて奇麗だと思った。もちろんタリアも奇麗だ。だが、異性として奇麗と感じたのは、この少女だけだった。彼女は友人と逸れたみたいで、少し涙目になっていた。そんなところも可愛いと思ってしまった。


 彼女は待ち合わせの場所が分からなかったみたいだ。だからそこまで案内した。もっと彼女と居たかったけど、何故かメリナの顔が浮かび、僕はそこで別れてしまった。





 その後、久しぶりに3人でお茶会を開いた。僕はある少女に一目惚れしたと話した。メリナへの恋心を断つために…メリナはそんな僕に対して、始終笑顔で祝福してくれた。真剣にアドバイスしてくれた。しかし、彼女のことを何も知らない、尋ねるのを忘れた。そう話したら、次に見た時にアタックしてみれば?と言われた。


 そうだね…思い切って言ってみようか…






 そして、パーティー会場で、その少女と再会できた。僕の体と口は勝手に動き、


「君に一目ぼれしました。私の妻になってください。」



 言った…言ってしまった…しかし、少女からは僕のことを全く知らないと言われた。当然だ、僕も自己紹介すらしていなかったからだ。慌てて名乗る。


 カトリーナ、彼女はそう言った…名前まで奇麗だと思った。



 そして、ビトレ公爵が僕たちを応援してくれた。


 その後、あれよあれよという間にカトリーナとの婚約が決まった。少し不思議に思ったが、僕は侯爵家を継ぐ立場にない。だから婿養子として、男爵家に入ることも、あまり気にしなかった。



 それからはよくリーナの元に遊びに行った。彼女の家は、フォーチャー家に仕えており、軍事とモンスターテイムを家業としている。軍事は彼女の父、アイギス義父様が防衛隊の部隊を任されているらしい、なんでも一騎当千の猛者もさだとか…



 僕にはあまり武術の才能がないので、テイムの方向で貢献しようと思った。リーナ自身は、両方に力を入れている。一度彼女と立ち会ったが…男のプライドを守るために、結果は言わない。



 それからしばらく経ち、大事件が起こった。ツニク大樹海のモンスターの氾濫だ。この事件で、アイギス義父様とティア義母様がお亡くなりになった。リーナはひどく悲しんでいた。彼女を支えるため、より一層彼女の元に通うようになった。


 彼女も辛かったのだろう。勉強、自己鍛錬、礼儀作法など休む暇もないくらい没頭していた…このままでは体を壊す。そう思い、偶に樹海に行き、彼女と(供も一緒に)モンスターテイムの技術を磨いた。







 それからまた月日は流れ、学院に入学する時が来た。リーナには手紙を送ることを伝えた。






 どうも最近メリナの体調が思わしくなく、学院に出席することも珍しくなっていた。彼女のことはタリアからよく聞いている。そんなに悪いのか…




 そして、ある日、メリナの訃報が届いた…視界がひび割れ、色を無くし、自分が立っているのかさえ分からなかった。彼女の葬儀に参加し、棺の中で眠る彼女を見ると、発狂しそうだった。そこから先の記憶が途切れ途切れだ…




 メリナ、メリナ、メリナ、メリナメリナメリナメリナ…彼女との思い出だけが甦ってくる。数日間本当に彼女との思い出の中で過ごした。




 もし…もしあの時メリナに自分の気持ちを伝えていれば…彼女が死ぬ運命にあったとしても、最後の瞬間まで一緒に居られたんじゃないか…何故あの時伝えなかったんだ…メリナが居なくなって初めて知った、狂おしいほどのこの思い…絶望感で一杯だった…喪失感でぽっかり胸に穴が開いたようだ…「好きだ」そう一言言えれば…そんな後悔が頭の中を占める…















 リーナが学院に入学してきた。良かった…彼女と再会できた…ぽっかり空いた胸の穴が、少し埋まった気がした。だが、リーナは少し変わった…僕が話しかけてもどこか上の空で、勉学や自己鍛錬に没頭していた…もっと彼女と触れ合いたいのに…






 リーナ…メリナ…リーナ、メリナ、僕は婚約者と、今は亡き友人のぬくもりを求めていた。だが、リーナとの距離は少しずつ離れ、メリナはもういない…



「ああ…ああ…」


 僕は部屋のベッドに潜り込み、ただただそんなうめき声をあげるしかできない…



 それから何日経ったのだろう…ある時僕の目の前に一人の少女が出てきた。人間ではないと思う。体が透けていたから。


(幽霊?メリナの幽霊ならよかった…)


 頭の中でそう考えていた。既に僕は正気では無かったんだろう…



(はじめまして)


「はじめまして」


 そんな挨拶を交わした。どうやら彼女は妖精らしい、寂しそうな気配を感じて僕の前に現れたようだ…


(私がその友達の代わりになってあげる。そのリーナってこと結婚するまでね?)



 ははっ…久しぶりに笑った気がした…


「君の名前を教えてくれる?」


(私は×ア×△◆…だめ…名前が…)


 名前が無いのかな?なんか「ア」って聞こえた。


「そうだな…じゃぁ…」


 僕はどうかしていた。メリナの顔が浮かんだんだ…だから、彼女を「アリナ」と呼んだ…彼女が言っていた「ア」とメリナの代わりに「リナ」という名前をくっ付けて「アリナ」だ…いや、どうせなら苗字もルーティラにしよう。


「君は、アリナ・ルーティラだ。」


(アリナ…)


「ああ、昔から僕の傍に居た大切な…友人…でも君とは違うから…少し変えたんだ…」


(あなたがそれでいいなら、私はアリナ・ルーティラよ!)


 こうして、僕はアリナと出会った。









 最初は周りから奇異の目で見られた。僕は目の前に居る彼女に話しかけているだけなのに何で?


 しかし、徐々に周りも彼女に話しかけるようになった。


 そんな日々が続いた…リーナ、友達が出来たよ…君にも紹介したい…だから、また僕を見てほしいんだ…





 しかし、僕の周りの級友たちは、リーナに色々言っているみたいだ。違うんだ!アリナはただの友人なんだ!僕が愛しているのはリーナなんだ!!


 そう皆に言ったが、皆は違う受け取り方をしたようだ。どうして!リーナは何も悪くないのに!本当に今愛しているのはリーナなんだ!




 僕はなんと彼女と会おうとした。しかし、何度も妨害を受ける。それだけじゃなく、彼女の近くに来た時に、なぜか彼女に会うという目的が無くなる。なんでだ?!何で彼女に会えないんだ!!



 そして、リーナと久しぶりに会った日、



「マリアス様…話は聞いております。私は…側室でも構いません。アリナ様と…」


 そんな言葉は聞きたくない!!僕は君を愛しているのに!!!




「貴様は私を愚弄するのか!!子供の時とはいえ、王家主催のパーティーで言った言葉に嘘はない、そんな私に対し、家の再興が叶うならばなどと我が家の権力だけが目当てであるかのような物言い、非常に不愉快だ!!」



 彼女は違うと言っていたが、頭に血が上った僕は、普段使わない言葉で彼女を罵った。冷静になって、物凄く後悔した。彼女は何も悪くないのに…リーナに無性に会いたい。会って謝りたい。また以前のように手を繋いで一緒に歩きたい。


 だが、心無い言葉を彼女に言ってしまった。その後ろめたさのせいで、彼女に会うことが出来ない…





 ある時、黒い男?が部屋に居た。何だこいつはと思った。アリナは…今はいない…その男もいつの間にか居なくなった。



(一体何なんだよ!!)



 その日、僕は荒れに荒れ、飲んだこともない酒を飲んだ…





 その後、学院にこんな噂が流れた。リーナが、アリナに報復を行っている。そして、彼女を守ろうとした者に暴力を振るっていると…


(リーナが?!あり得ない!!)


 僕は暴行を受けたという生徒や教師に話を聞いた。確かに彼女に暴行を受けたという。痣も見せられた。そんな…彼女が…


 アリナにも話を聞いた。


(違う!!そんなことされてない!!彼女を信じてあげて!!!)


 アリナは必死にそう言う。その姿がかえってリーナの行った悪行が真実だと確信させた。何でだリーナ!!なんでそんなことを!!!


 もはや彼女に対して憤りしか感じていなかった。彼女を愛していた分、彼女が憎かった。今すぐにでも彼女の所に行き、この激しい感情のまま罵りたかった。しかし、またタイミングが悪いのか、彼女の元には行けなかった。だから、卒業式の後のパーティ…そこなら彼女は来る。


(マリアス止めて!!彼女は何も悪くない!!本当にあなたを愛しているの!!!)


「大丈夫だよアリナ、君を守って見せるからね。」


(マリアス…なんで…あなたまで…)


 アリナを泣かせるなんて…リーナ!!




 そして、卒業の日、




「カトリーナ男爵令嬢、あなたとの婚約は破棄する。」


 言った。とうとう言ってしまった。そのままはこの激しい怒りをぶつける。




「アリナ侯爵令嬢に対する数々の嫌がらせ、そして、彼女の友人に対する暴力、成績を維持するためにクラスメイトに暴力や脅しなどを行っていたそうだな。数々の証言が教師の方々や、令嬢たちの侍女、ほかのクラスの人間からも出ている。」




 証言者たちも次々と彼女にされたことを言い、彼女は学院を退学になった。僕は王都から離れ、自領の別荘に今住んでいる。



「あははははははっ、一体何なんだ…僕のこれまでの人生は!!」


 あとから冷静になって考える。リーナは違う、何かの間違いだと必死に訴えていた。だが、僕は全く取り合わなかった。


 なぜ彼女の訴えを聞かなかったんだ?彼女を失ってそう思ってしまった。彼女が本当にあんなことを?なぜあんなに彼女が悪いと決めつけていたんだ?


 僕はそう、今になって考えだした。あの時は彼女が悪いと…何故か頑なに思っていた。そして、彼女を断罪し、退学にまで追い込んでしまった。いま、彼女は何をやっているのだろう…



 そして、暫くした後、彼女の現状を知った。僕の家と、ルーティラ家が彼女を訴えたそうだ。そして、彼女は国への奉仕義務が課せられた。それも、最も過酷と言われるモンスターの間引きだ。


「何故だ!!あまりにも重すぎる!!!?」




 ほとんどの者が数か月で命を落とすほど過酷な罰…彼女をそんな境遇にしてしまったのか…あんなに家のために頑張っていた彼女を…



「僕は…一体何をしたかったんだ…」



 これまでの人生…メリナを失い、愛する婚約者まで失った…しかも彼女のことを一切信じずに…



「アリナ…何処に行った…?」



(マリアス…)


「アリナ…僕は…どうしたら…」


(マリアス…ごめんなさい…あなたとはもう…一緒に居られないの…)


「!?どういうことだ!!!?」


(ごめんなさい…○◆△●…)


 最後の方は聞き取れなかった。そして、彼女も僕の前から消えた…



「ハハッ……アーーハッハッハッハッハッ!!!なんだ!みんな僕の前から消えたぞ!!!」


 そして、別荘にあった酒をこれでもかと飲む、今は使用人たちは離れに居る、止められることもなく、浴びるほど飲む。



「ハハハっ…苦しいな…」


 顔が濡れている…酒を被ったのか…ぼたぼたと頬を流れ落ちている…左手には、ワインのコルクを開ける栓抜きが握られていた。


「もう…いいだろう…」


 僕はその尖った栓抜きを胸に突き刺す。何度も、何度も…そして、勢いよく血が流れる。


「ああ…なんて人生だ…リーナ…ごめん…メリナ…今君の元へ…」



 そして、意識を失う瞬間メリナに会った気がした。でも彼女は、悲しそうな顔をして、背を向けて去って行った…









だからこそ、冬也の暴走が、彼らをハッピーエンドに導きました。

きっと冬也に降魂した者が彼らの幸せを願ったんでしょう。

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作者の別作品もよろしくお願いします。 終末(ヘヴィな)世界をゆるふわに!
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