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27 コミカルパート、ブラックで

冬也は最近暴れ過ぎなので、気を引き締めるにはちょうどいい機会。

彼は怒鳴られるより、こういう風に接した方が身を引き締めます。







 さて、タリアとリーナのドレスを選び、それに嫉妬したリンにもプレゼントした。もちろんべた褒めしないと目から光が無くなるので、全力で褒めた。そしたら案の定リンのテンションが上がり、貞操危機一髪状態だった。選択肢を間違えたら犯されるなんて冗談じゃない…


 ところで素朴な疑問があるんだけど、他の人は大体どんな衣装を着てくるのか?適当に現代風にしてみたが、他と違って浮いてしまい、恥をかくなんてことになっては俺の心に良くない。


「ご心配なく、この衣装とそれほど変わりませんよ?」


「そうなの?リーナ」


「申し訳ありません。よく憶えてません。」


 まあ、リーナの記憶はマリアスに告白された場面しかなかったからな、それ以外は記憶から抜け落ちてしまったのだろう。


「ならいいけどね、もしその衣装が周りから浮いていて、二人に恥をかかせてしまう。っていうのは勘弁願いたいからさ。」


「うふふっ…ですから大丈夫です。もしそうなっても、それは私に全ての非があります。貴方は全力をもって、最高の衣装を用意してくださいました。感謝することは有れど、あなたが気に病む必要は全くありません。」


「そうか…まあ、俺も付いて行くことになってるし、周りと違和感があればお色直しもOKだ。任せてくれ。」


「はい、お願いします。」















 さて、いよいよ明後日がパーティー本番だ、そして俺は、今とても悩んでいる。そう、お凛のことだ。彼女が王都滞在中に共同共心を使って、動物達からの情報収集を頼んでいた。そこでふと思い出したのだ。


 あれ?リーナってパーティーに出さないようにするのが、当初の予定じゃない?


 そう、俺も今まで忘れていた。お凛と話しているときに思い出したのだ。どうしよう。子爵の謀反によりアイギスが途中で離脱し、マリアスとメリナをくっつけ、変態とのファッションショーと、非常にインパクトの強い事件が多く、頭から抜け落ちていた。


 目の前にはキレかけのお凛と、タリアと楽しそうにパーティーについて話しているリーナに、


「憶えてる?君ぱーてぃー出れないよ?」


って言わなきゃいけない俺の気持ち…どう表現すればいいのか…


「早くしないと傷つくのは彼女だよ。それにあの娘は実年齢は20を超えてるんだろう?きちんと話せば心配いらないよ。」


 クソっ、これも作者メタボが素で忘れてたからだ!最近リーナの影が薄いのもアイツの所為だ!!


「何現実逃避してるんだい。さっさと言ってきな。」


「はい…」














 とうとう来てしまいました。リーナの部屋の前で深呼吸して心を落ち着かせ、覚悟を決める。いざ!



コンコンッ


「冬也です。」


「はい、少々お待ちください。」







「どうぞ、トーヤ様。」


「お邪魔します。」


 そして俺は部屋の中に入る。一応俺一人ではなく、リンとお凜も一緒だ。だって一人じゃ不安だし。


「リーナ殿、本日は誠に重要な案件をお伝えしたく馳せ参じた次第。」


「い、いきなりどうしたのですか?」


「拙者、常日頃から「落ち着きな!」いてっ?!」


「悪いわねリーナちゃん。旦那がリーナちゃんに伝えなきゃいけないことがあるのさ、怒らずに聞いてやっておくれ。」


「…?はい。」


「いや…えーと…ほらあれだよ…いや、だから「いい加減におし!」あああああ、目が、目があああああ」


「旦那も男ならハッキリ言いな!時間がもったいないんだ!」


「ううっ…分かった。リーナ、ごめん。」


 俺は土下座した。


「え?え?」


「リーナ、悪いけどパーティーには参加しないでくれ!」


「……?はい?その予定でしたけど?」


「え?」


「?そういう予定でしたよね?」


「え?あ、うん」


「どうしてそんなに必死に謝られたのでしょう?」


「いや…へへへ…なんでだろうね?」


「旦那はすっかり、王都での予定を忘れていたのさ。」


「トーヤ様?」


「うぇ?でへへ?そんなこと無いよ?」


「あれだけ派手に暴れていて肝心なことは忘れていたのですか?」


「いえ、えーと、これはですね…」


「肝心なことは忘れていたのですか?」


「その…これには事情がありまして…」


「肝心なことは忘れていたのですか?」


「大変申し訳ありませんでした!!」


 俺は五体投地した。



「はぁ~、トーヤ様、頭を上げてください。」


「はっ」


「…貴方が、私のために動いていただいていることには誠に感謝にえません。その為に、いろいろ危ない目にも遭ったりして、私も心苦しいと思っています。むしろ、私自身がどうすればいいのか、未だに分かっていません。」


「はい…」


「ですので、あまりにも貴方に私が頼りすぎました。ほぼ丸投げと言っていい状態です。」


「…そんなことは…」


「トーヤ様、私は貴方に感謝しています。そして、貴方が当初の目的すら忘れてしまうほど、私は何もかも頼りすぎました。私の方こそ申し訳ありません。」


 リーナが頭を下げる。


「貴方が子爵から私たちを守ってくれました。私たち家族を守るため、命がけで戦ってくれました。しなくてもいいのに、殺し屋から守ってくださいました。そんなご迷惑しかかけていない私に、真剣になって、とても素敵なかわいい服をプレゼントしてくださいました。本当にありがとうございます。」



 ああああああああぁぁぁ、やめてくれ!!俺が悪いのに、そんな感謝をしないでえええええ!!!



「これからもご迷惑をかけ続けてしまいますが、よろしくお願いします。」


「…はい、全力で頑張らせていただきます。」


「ふふっ、あまり羽目をはずし過ぎないでくださいね?」


「本当に申し訳ありませんでしたああああぁぁ」


 居た堪れなさ過ぎてジャンピング五体投地した。今はこの痛みが心地いい。




「ほら、いつまでも女の部屋で寝転んでるんじゃないよ!用が済んだらさっさと出て行きな!」


「はい…あれ?二人はどうするの?」


 二人は動こうとしない、というかリンは不思議と一言も話していない。


「私たちはガールズトークがありますので、さすがに冬也君でも聞いてはダメですよ。」




「分かった。それじゃあお休みリーナ。」


「はい、お休みなさいトーヤ様。」











 さて、最近調子に乗り過ぎた。あまりに乗り過ぎて、本来の目的を見失ってしまった。今回調べるべきは、誰が後ろにいるか?だ。


 王都に付いてからリンに探ってもらった結果は、まだ出ていないが、新たな情報が手に入った。


『猫の集会場』にお凜が行ったらしい。人語を話す猫の正体。それはなんと、ケットシーであった。なんとこの王都にはケットシーがかなりの数いるそうだ。普段は普通の猫として活動しており、時折、このような集会を開くらしい。そこで、お凜は彼らと情報のやり取りをするためになぜかそこのボスと一騎打ちし、勝ってしまったらしい。そして、この王都のケットシーは、全て彼女の傘下に入ったようだ。




 うちの女性陣強すぎない?そして、隣国の人間が何人かこの王都に居るという情報を得た。一般人旅行者ではなく…この国の何人かの有力者に接触しているようだ。



(隣国がこの国の貴族に接触している?ものすごい陰謀を感じるな)


 お凛には引き続きそのあたりを探ってもらうことにする。




 さて、俺は運が良いことに、付き人という立場だがパーティー会場には入れることになった。何らかの情報を得られればいいが…問題は…


(俺、コミュ障なんだよな…)























「さて、唐変木も行ったことだし、リーナちゃん、もう良いんじゃないかい?」


「何のことでしょう?」


 リーナはコテンっと首をかしげる。


「リーナ、此処には私達だけしか居ません。」


「??」


「泣いてもいいって言ってるんだよ。」


「何故泣く必要があるのです?」




 リンがリーナに近づき、その胸に抱き寄せる。そして頭をやさしく撫でながら、


「きゃっ?!何なんですか!」


「頑張りましたね。でも一人でいたら貴方はずっと我慢してしまうでしょう?だから私の胸で泣きなさい。」


「だからなぜ泣かねばならぬのです!」


「マリアス様のことです。」


「――っ」


 冬也のパーティーメンバーは、この世界に現界するとき、その理由となったリーナの追体験の記憶を有している。つまり、彼女とマリアスの因縁を知っている。







「無理しすぎです。貴女はもう一人ではありませんよ。いまなら泣いていいんです。」


「っ…泣か…ないっ…」



 カトリーナは前世で、常に一人だった。何年も何年も…そう、女の身で一人でずっと…少しでも弱みを見せると、生きていけないから。悲しいときや苦しいときに、泣けないようになっていた。


だからこそ、私達がその気持ちを吐き出させてみせる。だって、このままだとずっと苦しいままですもの…


「タリア様や、メリア様には見せられないでしょう?冬也君なら尚更です。でも私ならば…見せても大丈夫でしょう。」


 リンが幼子をあやすようにリーナの背をトントンと叩く。


「もう、我慢しなくていいの。」


「う…うぅ…」


「ヨシ、ヨシ」







「私、本当にマリアス様が好きだったの…」


「うん」


「あの人のために頑張った…お父様と…お母様が亡くなってから…ずっとあの人が支えてくれたの…」


「それでどうしたの?」


「だから頑張って…頑張って…あの人の横に居ても笑われないように頑張ったの…ううっ…」


「そうね…頑張ったね…」


「でも…でもっ…いつからか……あの人は私を見てくれなくなったの……ヒクッ……」


「……」


「それでも……またいつか見てくれるように……私もっと頑張った!」


「……」


「なのに……なのに婚約破棄なんて……」


「大変だったね……」


「えぐっ……ふっ……だがらぁ~……一度は諦めでだのにぃ……」


「諦めたのに?」


「あの人が笑っでだのおぉぉメリナざまにぃぃぃ…ああああぁぁぁん」


「ヨシヨシ、それで?」


「わだしじゃない人に…ひぐぅっ…笑って…なんでわだしじゃないのおおぉぉぉ!!」


「…そうそう、もっとはきだしちゃえ…」


「ぎおぐがなぐてもぉ、わだじにまだわらっでくれるってじんじでだぁ…なのに…見向ぎもしないでぇぇぇ…めりなざまだけみてぇ、笑っでだぁああああ…ああっ…いやだよっ…わだじをみてよおおおぉぉっ!!!なんでわずれでるのおおおぉぉぉ…えぐっ…もう一度…リーナって笑っでよぉぉぉうわあああああぁぁぁぁ!!」



「そうだね、あれだけ好きだったマリアス様に忘れられて悲しかったね…」


「ああああああああああああああああああぁぁぁんすきだよまりあすさまあああぁぁぁ」



 ただただ泣き叫ぶカトリーナに、リンドブルムとお凜は優しく寄り添っていた…

























「ぐすっ…ひっくっ…ううぅ…」


「泣き疲れて寝ちゃった…」


「このまま寝かしてあげよう。私たちは帰ろうか…」


「そうですね、冬也君の所に帰りましょう。」


「自分の部屋に帰りな…」


「リーナの叫びを聞いたら無性に冬也君を抱きしめたくて…」


「まったく…お姉さんぶるなら最後まできっちり決めな…」


「はーい」




 そして二人はリーナの部屋から出る。


「リーナは大丈夫ですか?」


「タリア様…」


「あの娘、昨日から無理してたでしょう?」


「ええ、…今は泣き疲れて寝ています。」


「…なら起こさないようにしないといけませんね。…少し話をお聞きしても?」


「ええ、構いません。」


 私達は人気の無い所まで歩いていきます。


「……………」

「……………」

「……………」



「昨日、あの娘がマリアスと会った時から妙でした。」


「……………」

「……………」


「取り繕っていましたが、嬉しそうな…それでいて戸惑っているような…地に足がついていない感じがしました。そして、マリアスとメリナが結ばれた時、明らかに動揺していました。」


「……………」

「……………」


「もちろん、彼らのことを心から祝福していたでしょう。でも、どこかで酷く悲しんでいたような気がします。」


「それは…」


「そして、トーヤ様とジェントルマンのファッションショーの間、メリナとマリアスが親しげにする度に、どんどん俯いて行きました。彼女はマリアスが好きだったのでしょうか?」


「……」


「そして、トーヤ様に服を選んでもらっているとき、見ていて痛々しいまでに明るく振舞っていました。…一体彼女に何があったのですか?」


「…」


「どうしてリーナは私には何も言ってくれないのです!私ではリーナの力になれないのですか!?」


「…」


「何故…私を頼ってはくれないのですか…」


「…タリア様、彼女は貴方を間違いなく頼りにしています。」


「では何故何も話してもらえないのですか!」


「これは貴女だけではなく、アイギス様やティア様も含めた、近しい方にこそ言えないのです。」


「何故です。」


「女の意地です。」


「意地?」


「今は理由をお話しできません。そして、話すとすればリーナの口から語られるでしょう。ですので、今は彼女を信じて待っていてもらえないでしょうか。」


「…」


「お願いします…」


「はぁ、分かりました。彼女が話してくれるまで待つとします。」


「ありがとうございます。」


「それではごきげんよう。夜分に申し訳ありません。」


「いえ、お休みなさいタリア様。」






「私たちも冷えない内に戻るとするかい。」







 今日、ようやく一人の女性が前に進むことが出来た。




今日のリンは、リンドブルムとして振舞う。

いつもと違い、慈愛と包容力を遺憾なく発揮。

ヤンデレとは別の面の彼女でした。

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作者の別作品もよろしくお願いします。 終末(ヘヴィな)世界をゆるふわに!
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