第20話 しばしの別れです(4)
「どうしたの?」
真後ろから声をかけられ、ビックリして後ろを向くと、温和そうな私と同じ銀髪銀毛の細目の狐系獣人の女性が立っていました。
女性の服は東にある獣人の国の民族衣装“着物”というゆったりとした服装で、青地で服のあちこちに花の紋様が散りばめられている。
「いいい、いつからそこに?」
「ついさっきよ?それでなぜここでおどおどしてるの?」
「こ、この先に王様がいて、どう挨拶すれば良いかわからなくて…」
女性は一度首を傾げ、なにか思い付いたように手をポンと叩いて言った。
「なら私も入るからそれを見てるといいわ」
そう言って女性は瞑っているかのよう細い両目を目一杯開け、引き戸に手をかけた。
「え?ノックは…」
私の言葉を遮るようにして女性は音を立てて勢いよく引き戸を開け放つ。
女性は王が堂々と座る部屋にずかずかと入り、着物の懐から身の丈ほどの紙製の扇のようなものを取り出した。よく入りますね…。
その紙製の扇を振り上げて女性は言った。
「そんな顔で娘を迎えたら怯えるに決まっとろうが!」
驚くことに女性は紙製の扇を王の頭に勢いよく降り下ろした。
「何をする!ワシはキチンとお主の言う通り“笑顔”で静かに見ておったのだぞ?紙製の扇で叩かれる謂れはないぞ!」
すると再び王様の頭にハリセンと呼ばれた紙製の扇が降り下ろされる。
「仏頂面のどこが“笑顔”よ!鏡を見なさい!他国の王族相手ならそれでいいわ!せめて娘には口角を上げて、目尻を下げて眉は吊り上げず…そんな表情をなさい!」
「こ…こうか?」
ここからでは銀髪銀毛の女性が間に入って見えませんね…少し間から…
直後また女性がハリセンで王をぶっ叩く。
「それじゃあ『そんな貧弱な装備でワシに勝とうと言うのか?笑止!』と嘲笑ってるようじゃない!もっと穏和に!」
「え゛ぇ゛〜」
王の呆れの声と共にハリセンが気持ちのいい音で振るわれる。
しばらく放置され、私の存在に思い出されたのは1時間後の話でした。
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