第13話 お誕生日なのです!(4)
「…と言うわけでよっぽどの理由でない限りお嬢様の傍を離れることは出来ません」
「…ふむ…まぁ話を聞かれないよりはマシか。クレア、君の両親についての所在は知ってるかい?」
私は首を振って答える。
「初対面の時、説明しました通り、私は捨て子です。生後間もないときにアンティ教会の前に捨てられていたのです。」
「…まぁ色々あって教会前に捨てられた。という訳なんだが、君の生まれは実は海をわたった先にある獣人の国シェラディード王国の現王クリア・フェルト・シェラディードの一人娘ということだ」
…段々雲行きが怪しくなってきましたね…
「何を根拠に?」
「君のその体毛…銀髪、銀の耳、銀の尻尾それらは全て王家の血筋の証なんだとか…」
…決めた。
「お断りします」
「まだ本題に入ってないぞ?」
「大方、先方の王家の使いの者が探し出した結果、旦那様のメイドをやっていると言うことを知り、大金と今後の利権をやるから会わせろまたは引き渡せと言った所ですかね?」
「…大正解…」
「それって1週間で戻ってこれる事案じゃないじゃないですか!」
「だが断れる事案でもないんだ。相手は大国の王。下手すると海を越えての戦争になる…それにな」
旦那様は大きく息を吐いて言った。
「脅迫に来てるのが君の親なんだ」
「…なん…」
海の向こうの大国の王が私の親で、今脅迫に来ているのが私の親…つまり海の向こうの大国の王が直々にきてるだとぉ?!
「シェラディード王国は戦いに長けた国と言うのは知っているか?」
「…そんな国の王がお忍びで来たとでも言うんですか?一種の侵略行為ですよ?」
「それが今回来た目的はこの国の王と会談のためとのことでな…」
「暗殺されればいいのに」
「…出来れば戦いに長けた国になんてならないだろう。毒殺しようにも鼻が利くから手を付けないし、耳が良いから死角からの不意打ちも通じないし、目が良いから太刀筋を見切れるし、膂力が人間の倍近く有るから指先で剣を止めることなど造作もないだろう…そんなものを相手にクレア、君ならどう殺す?」
「詰んでますね」
もはや乾いた笑いしか出ない。
「くれあ…」
心配そうにお嬢様が私を見つめる。
「流石に避けられないですね…」
私が静かに言うと口をへの字に曲げ、席から飛び降り、部屋から出ていった。
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