第12話 お誕生日なのです!(3)
「今年のプレゼントは…くれあがそばつきとして主役席の隣にいてほしい…」
「「………………」」
嬉しいけども!嬉しいけども!
たしかに同じ席について食べるよりは譲歩してますよ?!でも私のような獣人で侍従が主役席の隣?!どんなイジメですか?!
「やっぱりダメ?」
私が頭を抱えているとお嬢様は心配そうに私を見る。そんな顔されたら断れないじゃないですか!
「それは…」
「良いんじゃないか?なぁアナスタシス」
「さっきの提案よりまだマシね。それに去年のこともあるし顔を会わせづらいのでしょう。クレア、あなたがいればアリアにとっては100人力よ」
わたしに味方してくれる人はいなかった…
「あぁそれはそうとアリア、しばらくの間クレアを借りるぞ?」
「ヤです」
まぁ至極当然の反応ですね。
「誕生日当日までに返すから」
つまり最大1週間わたしと会えなくなるわけですから答えは当然…
「ヤです!」
…ですよね
「クレアの事で少し野暮用が有ってな」
「ヤです!!」
旦那様は困った顔でわたしに目配せする。『なんとかしてくれ』と。本来ならお嬢様は頑として聞かないので首を横に振るんですが、私が必要とする案件に少し、否かなり気になります。
ので助け船を出すことにしましょう。
「お嬢様、せめて話を聞くくらいにはしましょう?そのあとででも返事をしてもいいと思いますよ?」
「ヤだ」
これは予想外。では…少し本気を出しますか…
お嬢様の目をしっかりと見つめ、軽く深呼吸して告げる
「…聞き分けのないお嬢様は嫌いになりますよ?」
「うっ…」
昔、奥様に「依存しすぎている」と言うことを逆手に取った脅しなんですが、これはそう何度も使えるものではなく、今回のように本当に駄々をこねてるときのみ使う本当の意味での必殺技です。
この技は諸刃の剣であまり使いすぎたり、私に依存してないと全く効果がありません。
さてどう出ますか?お嬢様…
「…ヤだ…」
か細い声で答える。
「くれあが1週間もわたしから離れるのも、くれあがきらいになるのもヤだ」
「せめて話を聞くだけでもしましょうと言ってるんです」
お嬢様はポロポロ涙を溢しながら首を振る。
「でも聞いたら1週間わたしから離れちゃうんでしょ?」
「お話次第です。もしかしたらお断りするかもしれませんよ」
「…でも…」
お嬢様はそれでも言い淀む。
「私の中での優先順位は1位がアリアお嬢様で、2位がアリアお嬢様で、3位もアリアお嬢様です」
その言葉にお二人が反応した。
「…そ、それでは私達は?」
「旦那様と奥様は…旦那様が11位で同率位で奥様ですかね」
「ま、まさかベスト10全てアリアで埋まってるわけではなかろうな?」
「まさか、そんなことあるわけないじゃないですか」
2人は安堵の溜め息を吐く。
「第5位から10位までがチーズを挟んだ白パンです。それより上は全部アリア様です」
「なん…だと」
旦那様と奥様は目を大きく見開いたかと思うと落胆した。
「ハルム国有数貴族、クーノル家の当主たる私が銅貨3枚で買える程度のチーズを挟んだ白パンより優先順位が低いとは…」
旦那様は肩を落としながら呟いてますが何か不味かったでしょうか?
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