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尻尾と耳と私と主  作者: 青を刻む朱雀
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第10話 お誕生日なのです!(1)

「旦那様、その服は…」

「南部の島国の服だ。アロハシャツと言うらしい。どうだ?似合うだろう?」


 こう言うときどう返せばいいのでしょう?ハッキリ言ったら多分失礼に値するのでここは穏便に…


父様(とーさま)、ダサいです」

「ごはっ…」


 お嬢様は率直感想を告げ、その言葉に旦那様は膝を折って地に手をつかれました。


「あ、アリアの分も買ってきてるんだぞ?」

「「…」」


 私達は冷ややかな目線で旦那様を見下す。お嬢様にそんなダサい服を着させるつもりだったんですか旦那様…


「くれあ、ごはんにしよっか…」

「はいお嬢様」

「あぁ…愛しい娘に冷たくあしらわれる…これはこれで新しい扉が…はっ?!」

「あらあなた、こんなダサい服をアリアに着せようだなんてよく思ったわね?それに新しい扉なら私が開いて差し上げますわ」

「ちょ、アナスタシス!待ってくれ!そっちの方の新しい扉は開きたくな…」


 旦那様は奥さまによって部屋に連れ去られお嬢様は席に着かれた。

 30分後、何があったか知りませんが、満足そうな笑みを浮かべた奥さまを伴って旦那様はげんなりと席につく。

 ヴェント様、エトナ様、フェリナ様は学舎を昨年卒業なされ、ヴェント様は王宮で騎士として、エトナ様は宮廷魔導師に、フェリナ様は王立魔法研究機関にて魔法開発をしているため、邸内に残るお二人の子はアリアお嬢様のみとなります。


 旦那様は一旦食事の手を止め、お嬢様に問いを投げる。


「アリア、来週誕生日だろう?何がほしい?新しい杖か?服か?」


 そうです!来週はお嬢様の誕生日じゃないですか!これは聞いておかないと!


「父様、ありあの今の望みは1つだけです」

「ほう?」


 旦那様と奥様はお嬢様の言葉に興味津々という表情で口に赤ワインを含む。


「くれあが同じ席について一緒のごはんを食べたいです」

「「ぶっ」」


 2人して口に含んだ赤ワイン吹き出した。メイド長と副メイド長は冷静にかつ迅速に周囲のメイドに指示して周囲をきれいにする。

 私も危うく吹き出しそうになりました。しかしお嬢様のことです。こう言う私を巻き込む難題を持ち出すことは容易に想像できました。現に去年は「くれあ()と風呂に入るけんり」を要求してきましたので…

 普段は私共侍従は主人の食事の後、侍従棟で食事をとるのが通例で、その内容も料理人たちが主様方の食事を作る片手間で作る簡素なものばかりです。

 そして貴族として食事とは侍従と主を隔てるある種の壁のようなものでお嬢様はそれを取っ払おうと言うのです。

 旦那様と奥様は顔を見合わせ困ったような顔をする。


「お嬢様?無理をいってはいけませんよ?私はメイド、お嬢様は上にたつべきお人…食事は隔てておくべきものなのですよ?」


 流石に見てられず、お嬢様を諫める。

 私の言葉に旦那様も奥様も顔を明るくさせ、「そうだもっと言ってやれ」とばかりに目配せする。

 ちなみに去年、「ダメだ」の一点張りをしたところ、誕生日会当日に自室に鍵をかけ、光魔法で鍵穴の内部構造をねじ曲げ、扉も光魔法で歪曲させた上に光魔法特有の補助魔法によって強度も底上げされ、さらには扉の内側に調度品のバリケードを積まれた上に固定化させてまでの徹底籠城戦を繰り広げたのです。エトナ様とフェリエ様は光魔法での応用の仕方に戦慄してましたが…。

 流石に誕生日会に主役が居ないと話にならないため旦那様も奥様も、ましてや私でさえも匙を投げ、お嬢様の要求を呑みました。

 お嬢様は頬をリスのように膨らませ、いかにも「不機嫌です」と言いたげな眼差しで私を見る。

 ここが傍付きとしての腕の見せどころです。私は心の中で腕捲りをする。


読了感謝です。

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