記された未来
俺は議論はしない、議論に勝っても人の生き方は変えられぬ
坂本 龍馬
第二章【記された未来】
「え!本当ですか!?空いてる!?」
誰一人として街で見かけなかったが、ようやく祥哉の気持ちが通じたのか、一軒の宿で泊まれることになった。
奇跡というのか、それとも祥哉の執念の賜物というのか。
冰熬と歩いていて、陽が沈んで行く中、祥哉はまた人影を見つけた。
しかしそれもまたすぐに隠れてしまったのだが、祥哉はそれでも諦めずに走り続けた。
どこに隠れてしまったかも分からなかったが、祥哉は動物の本能とも呼べる気配だけを頼りに進んで行くと、そこには灯りの灯った一軒の宿があった。
礼儀として戸を叩こうとも思ったようなのだが、叩いたりして逃げられたら野宿決定だと思い、ノックもせずに入って行った。
するとそこには宿の主人と妻なのか、男女がひっそりと暮らしていた。
そこで交渉をしてみたのだが、最初はやはり怪しまれていたということもあり、なかなかOKが出なかったようだ。
遅れてやってきた冰熬が、その状況をすぐに理解出来たようで、祥哉の方を親指でちょいちょいと指さしながらこう言った。
「こいつ、キレるとマジでやばい。いや、あんたらのことをどうするとかじゃなくて、多分この家一軒くらいならすぐ壊せるから。冗談じゃなくて。俺の家もこいつに壊されて、今宿を探してるんだわ。大人しく今日一日だけでも泊まらせてくれる?」
ただでさえ目つきが悪い祥哉を見て、その夫婦は小さく頷いた。
泊まらせてくれるだけで良いと言ったのだが、余程祥哉のことを恐れてしまったのか、食事の準備もしてくれた。
「なんだか騙した気分だ」
「人間なんて騙し騙され、そうやって成長していくんだよ」
「あんたが言うな」
「それに、あながち嘘じゃねえだろ?お前キレたらどうなるか分かったもんじゃねえ」
そう言いながら、冰熬は出された食事を次々口にしていく。
温かさと美味しさとゆっくり寝られるという安心と、色々な感情が混ざって、滅多に見ないような表情をしていた。
祥哉もぐう、と自分のお腹が鳴ると、残すのももったいないと思い、一口、また一口と口へ運んで行く。
お腹が満腹になると、祥哉はタオルを持って風呂場へと向かう。
冰熬と一緒に風呂に入ろうだなんて微塵も思ったことはないし、1人でゆっくりと風呂に入るのもいつものことだが、ただ1つ違うとすれば、いつもは冰熬が先に風呂に入る、ということくらいだろうか。
もちろん、冰熬には声をかけたのだ。
だが、今日に限って、冰熬は祥哉に先に入るようにと言ってきたため、無理強いすることもないだろうと、祥哉は先に入ることにした。
体力にはそれなりに自信があった祥哉だが、何日も野宿続きだったからか、温かい湯に浸かると大きな欠伸が出てきた。
身体と髪を洗って風呂場を後にし部屋に戻ると、どこから持ってきたのか、新聞を読んでいる冰熬がいた。
「どっから持ってきたの、それ」
「ん?店の人に持ってきてもらった」
「ふーん」
自分でもどうして聞いたのか分からないが、聞いたところで特には興味のなかった祥哉。
新聞を読んでいた冰熬もそのうち立ち上がって風呂場へと向かったが、なかなか戻ってこなかったため、先に寝ることにした。
いつもなら起きているのだが、風呂場に向かう際、冰熬に寝てて良いと言われたため、それに疲労も溜まっていたこともあり、祥哉はさっさと寝ることにした。
思っていたよりも限界に近かったらしく、横になるとすぐに瞼は落ちてしまった。
あれからどのくらい経って冰熬が戻ってきたのか、そして何時頃まで起きていたのかは分からないが、祥哉が翌日目を覚ましたとき、すでに冰熬は起きていた。
いつもなら祥哉に起こされない限りはずっと寝ているというのに、変なところが繊細というか。
「起きたか」
「まだ眠い」
「まだ寝てりゃあいいだろうが。急ぐ旅じゃねえんだ」
「そりゃ急いじゃいないだろうけど、一度は反乱者と間違われて捕まったこんな国で、ゆっくり寝てられないだろ」
「そりゃそうか」
すでに用意されていた朝食を食べ始めながら、祥哉はまた新聞を読んでいる冰熬に気付く。
古民家などの拠点にいる場合、新聞などは買い出しに行ったときに拾ってくるか、定期的に訪れる新聞配達から買うかしていた。
正直、祥哉から言わせてもらえば、旅をしているのであれば、その土地、その国の情勢を知るためとはいえ、そこまで長居しない場所の情報などそこまで重要でもない、と思っていた。
だが冰熬が言うには、情報を得るために読んでいるのもあるが、それだけではないらしい。
時代の流れや人間の本質、それから暇つぶしであるという。
どのページを読んでいるのかと思って以前ちらっと見たときは、隅っこについている4コママンガを真剣に読んでいた。
そんな新聞を読んでいる冰熬を見ていた祥哉は、こうして見てみると、冰熬はただのおっさんだな、と思っていたようだが、口には出さなかった。
「なあ、いつまでこの国にいる心算なんだ?すぐにでも出て行った方が無難だと思うんだけど」
自分が捕まったこともあり、祥哉は早くここから出て行きたかった。
何が起こっているのか、これから何が起こるのか、それは祥哉には分からないが、長居出来るような土地柄ではないことだけは理解出来た。
「んー・・・」
聞いているのかいないのか、いやきっと聞いていないんだろう。
明らかに適当な返事だと分かる冰熬のそれに、祥哉は唇を尖らせる。
目玉焼きが半熟になっていて美味しいだなんて、その表情からは決して読みとれないだろうが、美味しいらしい。
黙々と食べていると、何やら外が騒がしい。
なんだろうと箸を止めて様子を見ようとした祥哉だが、それよりも先に冰熬が動いた。
「いつまで喰ってんだ」
「へ?」
兄貴だったら文句を言っているだろうし、弟だったら尚更だ。
しかし冰熬という男に文句を言おうとしても、先程のように華麗に聞き流されて終わってしまうのだろう。
まだ残っていた食事を一気に口に放り込むと、さっさと宿賃を払って出て行こうとする冰熬の背中を追いかけた。
リスの方に頬に蓄えていたそれらを流し込むと、ようやく尋ねる。
「いきなりなんだよ?さっきまで出て行こうとしなかったくせに。今更巻き込まれるのは御免ってこと?」
はあ、とため息を吐きながらそう言うと、冰熬はまた適当な返事を返すだけだ。
ふと、宿から少し離れた場所まで来たところで、いきなり大きな音がした。
「!?なんだ?」
この音には聞き覚えがある。
ほとんどの国ではその音が日常茶飯事の如く聞こえてくる。
それは爆音でもあり、銃声でもあり、人の悲鳴でもある。
昨日までは耳に聞こえてくることのなかったそれらの音に、祥哉は足を止めてあたりを見渡していた。
そのときだ。
「!!!」
いきなり腕を強く引っ張られ、祥哉はバランスを崩してしまった。
しかし、そのお陰で銃弾は祥哉に当たることなく、どこかの知らない家の壁に穴を開けた。
物影に隠れる形となった祥哉の頭の上に手を置いた冰熬は、まだ頭をあげようとする祥哉の頭をさらに強く押しつける。
「あんまり動くな。今度銃弾に当たって死んでも知らねえぞ」
「わかったから手をどけろ!動かねえって!!」
それでようやく冰熬の手が頭からどかされると、祥哉も冰熬と同じようにこそっと辺りの様子を覗く。
「いきなり戦争・・・?」
「歯車なんて、いつ外れてもおかしくねぇもんだ」
「歯車・・・?」
息を殺し気配を消しながら、2人は戦争と化したその場に留まった。
それから何時間かすると、休息なのか、シン、と静まり返る。
それは先程までのざわめきから一変、いっきに音という音が全て無くなったのではないかと思うほどの静寂だ。
すると、冰熬があたりを見ながらも動き始める。
「今動いたら目立つだろ」
「お前は目立つように動くのか?」
「・・・・・・」
祥哉は子供のように頬を膨らませ、眉間にもシワを寄せながらも、冰熬の後ろを大人しくついていく。
道の真ん中を堂々と歩くなんて馬鹿なことは勿論せず、影を太陽に作らせないように、物音を発しないようにと、足元にも頭にも気をつけながら進む。
あ、と祥哉は足元に人形が落ちていることに気付き、思わずそれを拾おうとしたそのとき、背後から何かを感じ取ったまでは良かったが、振り向くよりも先に、自分の首元に何かをあてがわれたのが分かった。
反射なのか、生唾を飲み込むのと同時に。
ピタリと当てられたその冷たいものの正体を突き止める前に、冰熬の声が聞こえてきた。
「俺の連れだ。とりあえず、それをひっこめてやってくれるか」
「あんたは・・・」
冰熬がそう言うと、首元にあった感触は遠ざかって行った。
すぐさま後ろを振り返ってみると、そこには緑の髪に黒のタートルネックを身に纏った男がいた。
「確か、ジェイドだったな。一旦そっち行っても良いか?」
「・・・わかった」
どうやら冰熬とその男は知り合いのようで、祥哉はひとまず安心した。
そして連れて行かれた場所は、なんとも秘密基地のようなところで、そこには他にも数人の男女がいた。
リーダーはレイタと名乗り、その横には冰熬に慣れ慣れしく話しかけるワーカーという男、それから少女たちもいる。
「いきなり戦争仕掛けるたぁな。たまげたよ」
「準備は進めてたんだ。今日は前国王のモンタナが亡くなった日だから、戦いを挑むなら今日だって決めてたんだ。あんたに言わなかったのは悪いと思ってるが」
「別に言おうが言うまいが、それはそっちの勝手だ」
「それより、そっちは?」
冰熬に着いてきたのは良いが、自分と同じくらいの歳の男、しかも自分よりも冰熬に会ってまもない男は、冰熬という男にも屈することなく話しかけていた。
リーダーのレイタはただ黙って腕組をしているだけだ。
「ああ、祥哉だ。捕まったっていう、俺の知り合いのガキだ」
「こいつが」
挨拶でもしろ、と冰熬に言われたが、祥哉は警戒心をマックスにしていた。
一向に口を開こうとしない祥哉に向かって、ワーカーはまず自分たちの紹介を始めた。
1人1人言われたところで全然覚えられないのだが、それでも、全盲の少女がいることや、怪我をしている者、家族を人質に取られた者などがいることが分かった。
「さ、俺達のことは話した。次はお前の番だ」
「・・・祥哉」
名前だけを口にした祥哉に、ワーカーは突っかかる。
「お前何?喧嘩売ってる?俺たちがどういう集団か分かってる?」
「なんで初めて会ったお前達に、俺のことを根掘り葉掘り教えなくちゃいけないんだ?それに、お前らのせいで俺は捕まったんだぞ?土下座の1つでもしたらどうだ?」
祥哉の言葉に、今度はワーカーがピクリと眉を潜ませた。
「俺達は国に立ち向かう新月軍だ!戦争に巻き込まれたくないなら、さっさとお家に帰りな、弱虫!」
そんなワーカーの言葉にピクッと血管を浮き上がらせた祥哉を見て、冰熬はため息を吐きながらも止めることはしない。
ただ隅の方に座ると、欠伸をする。
「弱虫じゃない!だいたいな、縁起担いでんのかゲン担ぎなのか知らないが、こんな天気良い日にいきなり戦争仕掛けるなんて、馬鹿じゃないのか!!そもそもなんで新月なんだよ!?満月でも三日月でも良いだろ!!」
「天気良いとか関係ねぇだろ!!なら雨の日にでもすれば良かったのか!?」
「雨の日は大人しく部屋で本でも読んでろ!!洗濯物も干せやしない!!」
「洗濯物なんてそれこそ晴れの日にすればいいだろ!!ピクニックに行くんじゃねぇんだぞ!!!」
「ピクニックなんて楽しい響き出すな!持ってくのはサンドイッチかおにぎりか迷うだろ!!」
「迷わねえよ!!俺は断然おにぎり派だ!」
「そんなの興味ない!!」
「お前が言いだしたんだろ!!それから、新月にもちゃんと意味があるんだからな!!」
「別にどうでもいいね!新月だろうと満月だろうと!!月であることに変わりはないだろ!候補に太陽とか星とかあったならまだちょっとは興味あるけど、月限定なら好きにすればいいだろ!!」
「太陽は遠いだろうが!!地球に近い月の方が身近に感じるだろ!!お前にはそういうロマンは無いのか!!」
「ロマンとかマロンの問題じゃない!!それに、月は太陽と違って、地球の灯りを受けないと輝けないんだぞ!!」
「モンブランの話なんてしてねぇよ!!なんで俺がモンブラン好きなこと知ってんだよ!!」
「月のとこは無視か!お前がモンブラン好きだなんてこれっぽっちも興味ないし知らない!!俺はモンブランは苦手だ!!和菓子派なんだよ!!」
「ははは!和菓子って、お前じいさんかよ!!若者は洋菓子だろうが!!」
どんどんズレていく論点だが、ワーカーの発言に、レイタが「俺も和菓子派だ」とボソッと呟いていたことに、ワーカーは気付いていないだろう。
その近くにいた冰熬はというと、そういえば祥哉は苺大福が好きだな、といつだったか、苺大福を勝手に食べて怒られたときのことを思い出していた。
正確には、苺大福の苺の部分を、だが。
「やれやれ。いつも以上にワーカーのネジが緩んでるな」
「祥哉はいつも通り緩んでるぞ」
冰熬とレイタの会話を遮るようにして、祥哉たちの言い争いはヒートアップしていく。
「そもそも、なんでお前男のくせにそんなに髪の毛長いんだよ!!?洗う時面倒じゃないのか!!」
「面倒に決まってんだろ!!けど黒髪で顔にもこれといった特徴がねえんだから、こうやって髪とかで自分をアピールしねぇと、俺が誰だか分からねえだろうが!!!ちなみにな!これはピアスだって言ってるけど、本当は穴なんて開いてねぇんだからな!子供でもつけられるイヤリングなんだからな!!」
「確かに特徴はないな。それにイヤリングって・・・」
「なんで急に哀れような目で見て来るんだよ。ピアスなんて痛いだけだろ!!なんで開ける必要があるんだよ!!」
「まあ・・・。けど個人の自由だからな。痛くてもやりたいって人はいるんだろうし、今時イヤリングの方が恥ずかしいんじゃ」
「何が恥ずかしいんだよ。言ってみろ。全世界のイヤリング使用者と所持者が納得するように説明してみろ!!」
「だって、ピアスするには痛いから嫌なんだろ?その点イヤリングなら耳に穴を開けなくていいからつける。それって、お洒落したいけどイヤリングどまりで良いってことだろ?」
「そんなこと言ってないだろ。というか、イヤリングをピアスよりも下みたいな言い方するな。同等だからな。耳につける装飾品って意味では同等だからな。痛みと伴うか伴わないかだけだ。お前は何も分かってない!」
「分かるか。俺はどっちもつけてないんだ。てか、耳に何かつけるって邪魔じゃないのか?外し忘れて風呂に入ったら錆びたり壊れたりしそうだし、どっかに置き忘れることも有り得る。そう考えると、お前よりも俺の方がそんなことを気にせずに風呂に入れるからゆっくりと浸かれる」
腕組をしてうんうんと頷いている祥哉に、またしてもワーカーは反論する。
「もうこれは俺の身体の一部なんだよ。だから絶対に忘れねぇ」
「身体の一部って。それ、眼鏡かけてる奴がよく言う台詞だな。一部っていうなら一生外すなよ。身体から離すなよ」
「お前、ひねくれてるって言われるだろ」
「お前ほどじゃない。それに、別に捻くれてるわけじゃなくて、お前が言ってることを冷静に考えるとそういうことだろ?俺も前に比べると大人になったもんだ。こうしてお前みたいな奴にまともな意見を言えるようになったんだからな」
祥哉のそんな言葉を聞いて、冰熬はそこまで大人になってないぞ、と思ったが、祥哉の機嫌を損ねても面倒なため、そのままにしておく。
さっきまでは互いに牽制し合い、どうでも良いことを言い争っていたというのに、意気投合したらしく、祥哉とワーカーは最後にはガシッと握手をしていた。
よく分からない友情が出来上がったところで、レイタが口を開く。
「あの2人は良いとして、俺達はこれから本格的にあの城を、あの女を攻め落とす心算だ。あんたらは国には関係ないんだから、今すぐ出て行くことをお勧めする」
アルベージュが即位してから早2年半。
落とすことなんて簡単だろうと思っていたあの頃の自分が憎いと、レイタはささやく。
アルベージュに加担する人間がいるなんて思ってもいなかったが、モンタナが亡くなってからというもの、長い物には巻かれるというのか、それとも別の理由なのか、敵対する者の方が少なかった。
それでも一度は落とせると思ったのだが、それは甘かった。
アルベージュが即位するまではそれほど目立たなかった男、ビルダが頭角を現した。
「俺達はもともと、兵士として国に仕えていた」
モンタナ時代に兵士だった者たちは、モンタナには多大なる感謝と敬意を持っている。
親に捨てられ、売られ買われ、ゴミを漁り、動物のように生きてきた彼らにとって、差別をせずに接してくれたモンタナは、親よりも大事な存在だった。
アルベージュが嫁いでからというもの、没落していくだけの国を見ていることは出来ず、なんとか支えようと頑張ってきた。
しかし、モンタナは日に日に衰弱していき、それでもアルベージュは看病の1つもせず、好き勝手にしていた。
「兵士は国王を守るために存在する。だが、俺達は国王を守ることは出来なかった。ならせめて、国王が守ろうとしていた国を守る。それには、どうしてもあの女を落とさないといけない」
「俺達はどういう手段を使ってでも、今回で決着をつけるつもりだ」
祥哉との喧嘩も仲直りも終わったワーカーは、レイタの横に立つ。
「街の人も出来る限り避難はさせたの。これはあくまで私達の戦いであって、私達の意思。街の人を巻きこむわけにはいかないもの」
そう言うのは、武闘派のソルミだ。
兵士にしては珍しく女性で、部隊を1つ任せられたほどの実力者だそうだ。
「街が壊れても、例え俺達の中の誰かが倒れても、それでも勝たなくちゃいけない戦いなんだ・・・」
レイタのその言葉に、その場にいた全員が口を閉ざしてしまった。
この男以外は・・・。
「犠牲を作っても国を守るか。兵士らしい考え方だな」
「なんだと・・・?」
これまでの話を聞いていたのか分からない程眠たそうにしている男、冰熬は、自分に向けられた冷たい視線も空気も、さして気にせず話す。
「お前等のいう“守りたい国”ってのは、国王がいた頃の国と、お前等のことだろ。今となっちゃ、あの女を倒したところで、街並は戻せても時間までは戻せねえ」
「戻せないことくらい分かってる。それでも、国を見捨てるわけにはいかない」
「犠牲を作ってでも守るだけの価値が、今のこの国にあると思うのか?」
「無くても、戻さないといけないんだ。あの頃のような国を。このままじゃダメだ」
額に手をあててそのまま前髪を掬うようにして動かす。
それからふう、と周りに聞こえるか聞こえないかくらいの大きさでため息を吐く。
視線は一様に冰熬の方を見ているが、見られている当の本人はその視線を跳ね返すように不敵に笑う。
「本当に守るべきは、形あるものじゃなく、形なきものじゃねえのか」
冰熬のそんな言葉に、ソルミは一歩踏み出そうとしたが、ジェイドに止められた。
「物も国も人も、形あるものはいずれは朽ちる。留めておくのは難しい。だがそれを後世に遺そうと思うなら、やるべきことは変わってくる」
隅の方に座っていたモルスがゆっくりと目を開ける。
それに気付いている者はほとんどいないだろうが、モルスは耳に届く僅かな呼吸音や振動を感じ取り、不安や恐怖なのか、自信か傲慢かそれとも嘘か、それを感じる。
今聞こえてくる声には、負の要素が一切含まれてはいない。
だからといって、自信なわけでも傲慢さもなく、色であらわすとするなら、空のような色。
「若ぇからこそ出来ることがある。生き急ぐな。気付いたときに何も出来ねえことほど、悔しいことはねえぞ」
「あんたは一体」
「さて、祥哉、行くぞ」
「へ?ああ」
いきなり名前を呼ばれ、祥哉は素っ頓狂な声で答えた。
「ここを出て行くのは、もうちっと後にするよ。お前等が戦争をするのが勝手なら、俺達が出て行くのも勝手だろ」
「巻き込まれて死んでも知らないぞ」
「死なねえよ、こんなところで」
おっさんくさい声を出しながら立ちあがったかと思うと、冰熬はさっさと出口に向かって歩いて行ってしまった。
祥哉も後を追おうとしたとき、ワーカーに声をかけられた。
「あいつに言っておけ。俺達のやることに口出しするなって」
「・・・・・・」
祥哉はワーカーたちの方を見ると、少し何か考えた後、こう言った。
「なら、お前等も口出しするな」
「なんだと・・・?」
「生き急ぐな。俺も言われたことがある。俺も初めは、人の気も知らないで何言ってんだって思ったけど、でも、今はそれが分かる気がする」
「俺達がガキだって言いたいのか」
「違う。間違いをするのもまた、若い奴の特権だって、あいつなら言うだろうな」
そう言って笑う祥哉の顔は、自分よりも少し前を進んでいるような気がしたワーカーだが、それを認めることも出来なかった。
心から笑ったのなんて、どれくらい前だろうか。
そんなことを思っていると、祥哉はワーカーに背中を向けて歩いていた。
「祥哉!!」
「ん?」
階段を上ろうとした祥哉はその足を止め、青い髪を靡かせる。
「ばーか!!!」
「は?」
子供のように、いきなり祥哉に向かって馬鹿と罵ると、ワーカーはその後急に大声で笑い出した。
それにつられて、祥哉も「ばーか」と言って笑った。
それからすぐに冰熬の後を着いて行った祥哉は、冰熬が知らない人の家に勝手にあがりこみ、そこで昼寝を始めてしまったため、隣に座った。
「レイタ」
「わかってる」
冰熬と祥哉が去ってから、レイタたちも動きを開始していた。
あの日、アルベージュたちに戦争を仕掛けてからというもの、この気持ちは変わることはなかった。
いつか変わるかもしれないと年月をしたためてはみたものの、アルベージュへの恨みも憎しみも消えることはない。
レイタやワーカーが兵士としてこの国のために仕えていたとき、ビルダという男は下働きのみ行っていた。
目立つことは決してなく、無口だが淡々と仕事をこなす男だった。
レイタたちが第一線で戦っている間も、ビルダは召使のようなことばかりしていた。
しかし、アルベージュが即位してからというもの、なぜか急にビルダはレイタたちの敵となった。
モンタナに世話になったことには変わりないはずなのだが、レイタたちとは違い、アルベージュの側に着いたのだ。
最初はそれほど戦力にはならないだろうと油断していたレイタたちだが、それは間違いだった。
何処で、いつ、誰から教えられたのかは分からないが、ビルダの剣の強さも武闘の強さも、これまで下働きだけをしていたとは思えないほどだったのだ。
だからといってアルベージュと手を組んでいたわけでもないようで、ビルダが最初にアルベージュの味方をしたことに対して、アルベージュが一番驚いていただろう。
レイタやワーカーとて、国で5本の指に入るほどの実力の持ち主であったにも関わらず、一度は敗北したのだから。
今やアルベージュの側近となっているが、こうした経緯がある。
「モルス、どうした?」
ふと、目が見えないはずのモルスが、両手で目を覆って下を向いていた。
それに気付いたレイタが声をかけると、小さく小刻みに震えるモルスの身体に、ソルミがそっと触れた。
「怖いの・・・」
「怖いなら無理に戦えとは」
「違う!そうじゃないの・・・。戦うことが怖いんじゃないの。死ぬことだって怖くないの・・・。でも・・・」
目が見えないモルスは、視覚以外の感覚が研ぎ澄まされている。
それは時に人間離れしたようなものだ。
だからなのか、モルスは恐怖という概念がないようにも見えた。
「仲間と離れ離れになることが、怖いの」
「・・・・・・」
そう言うと、モルスは自分の肩に触れているソルミの手に触れた。
アルベージュたちに捕まるかもしれない。
死ぬかもしれない。
これから起こることなんて誰にも予想出来ないはずなのだが、モルスの言葉を聞くと、そこにいる誰もがゴクリと唾を飲み込んだ。
「何か感じるのか?」
沈黙が響くその場に、レイタの柔らかい声が振動する。
それは心地良いもので、戦争が始まるなんて微塵も感じさせないような、そういう声だ。
「分からないの・・・。でも、大地が揺れてる。空も、海も、全てが壊れてしまいそう」
モルスが小さく震えていたため、ソルミはモルスの身体ごと、優しく包んだ。
ソルミから伝わる温かい人の体温は、急激に冷えていたモルスの身体を暖めると、それは安心に変わる。
いつから目が見えないのかなんて、モルスは分からない。
物心ついた頃にはすでに見えなくて、それがきっかけで両親は喧嘩が絶えず、家族という温かさなど知らずに育った。
どうして喧嘩をしているのかも、どうして目が見えなのかも、世界がどういう色をしているのかも、何も分からなかった。
女だとか男だとか、太陽だとか月だとか、朝だとか夜だとか、ましてや戦争だとか平和だとか、どういうものかなんてよく知らずに生きてきた。
「モルス、何か飲む?」
上から降ってきたソルミの声に、モルスは無言で首を横に振る。
ただ、ぎゅっと強くソルミの服を掴みながら、みぞおち辺りに顔をくっつけて目を閉じる。
「私、思ったんだけど」
「なんだ、ソルミ?」
「ビルダも勿論警戒するようだと思うけど、ギミルとゾールは?」
ギミルとゾールは双子だ。
顔も性格もほぼ同じで、声も身長も体格も、それら全てが似たり寄ったり、というよりも同じだ。
ギミルとゾールは、アルベージュが女王となってからこの国にやってきた。
訪れた理由は不明だが、アルベージュに気に入られたようで、城にいる。
「あの2人に関して、強さは不明。それに、双子だって知ったのも、つい最近でしょ?」
ギミルとゾールが双子だと知ったのは、本当にここ3カ月ほど前のことだ。
それまでは、1人の男だと思っていた。
それは、2人が同時にいるところを見たことがなかったからだ。
たまたま2人が街に来て、動物をいじめているところを見つけたため、双子だということが判明した。
害はないと思っていた2人だが、どうもそうではないようだ。
「しばらく観察してたけど、強いとか弱いっていうよりは、暴力的な感じ。女だろうと子供だろうと構わず攻撃してくるわ」
剣を使ったところも、これといった武闘をしているのも見たことはない。
だが、何か獲物をみつけると、執拗なまでに殴り続け、その時の表情といったら、恐ろしくおぞましいものだ。
同じ人間とは思えないほど、野獣の顔。
「それに、他にもアルベージュ側に寝返った連中はいる。そいつらともどう太刀打ちするか」
「太刀打ちするも何も、戦うしかない。言葉で心が変わるようなら、とっくにこっちに来てるはずだ」
「まあ、そうだな」
自分たちが戦争に関わるなんて、思ってもいなかった。
それはモンタナが戦争をしないよう努力していたこともあり、この国がそれなりに地位があったこともあり。
それがどうして、国内でこのようなことになってしまったのかと問われれば、きっとレイタやワーカーは即答するだろう。
「アルベージュがいる限り」と。
何人の仲間を失ってきたか、分からない。
普段、レイタはあまり感情の起伏が激しい方ではないように見えるが、それは心に負った傷の深さにもよるのだろう。
なんとも言えない表情をしたまま、一点をじーっとというか、ぼーっとというか、見ているレイタを見ているワーカーもまた、同じように何かを背負っている。
腕組をしながら壁に背中を凭れかからせると、ワーカーはゆっくりと息を吐いた。
「もう、いくしかねぇよな」
「・・・ああ。そのために、今日まで生きてきたんだ」
レイタが立ち上がると、ワーカーも自然に身体を動かし、ナイフや拳銃、上半身には固いものを入れて準備を始める。
それぞれが準備を整えていると、1人だけ、動かずにいる影があった。
「モルス、お前はここに残ってもいいんだぞ」
「私も行くわ」
「お前には酷かもしれない。本格的に戦闘になれば、お前のことを守れないかもしれない」
レイタのその言葉に、モルスは視点は合わないまでも、顔をこちらに向けてきた。
「馬鹿にしないで。守ってもらおうなんて思ってないわ。目が見えない私は足手まといになるかもしれないけど、連れて行って。ここで待ってるだけなんて、お月さまに申し訳ないわ」
「・・・わかった」
レイタはソルミを呼ぶ頃には、すでにソルミは戦闘準備が整っており、レイタに言われてモルスにも出来る限りの装備をつける。
ソルミは女性にしては筋肉質な体つきをしており、黒のタンクトップに黒のズボンに黒のブーツ、上半身につけられた拳銃のホルダーも、腰に備え付けられたナイフも、腕につけられている手甲も、女性とは思わせない風貌だ。
上から黒の上着を羽織ると、ソルミは髪の毛を1つに縛った。
「・・・ソルミ、髪縛った?」
「ええ」
「やっぱり。ソルミのシャンプーの香りがした。良い匂いね」
「ふふ。それが今から戦争に行く人の台詞?」
壁に手を置き、ゆっくりと1人で立ちあがると、ソルミはモルスの身体を支える。
「私、みんなと会えて良かった」
「モルス?」
「ありがとう」
「何よそれ。これから死ににいくみたいじゃない」
クスクスと笑うだけで、それ以上モルスは何も言わなかった。
それからレイタ率いる新月軍はアジトを出ると、夜明けとともにのろしをあげる。
「朝っぱらから元気ね」
「アルベージュ様、避難なさってください」
「いいわ、ここで。私は逃げも隠れもしないの。それに、ここからの方が、良く見えると思わない?」
「何がです?」
真っ赤なルージュで笑みを浮かべ、アルベージュは長い髪をかきあげる。
「無様な英雄の死に際が」
「・・・・・・」
妖艶に微笑みながらそういうアルベージュを横目に、ビルダも同じように窓から見える国を眺めていた。
一望するにはあまりにも広いこの国には、何人の人が生活しているのだろうか。
それさえ知らないが、そもそもそんなこと、アルベージュには興味がない。
コツコツとヒールの音を奏でながら椅子に腰かけると、スラッと伸びた足を組み、五月蠅くなってきた外の音をBGMに紅茶を嗜んでいた。
「遅れをとるな!!」
「おらっ!!!邪魔だどけぇえぇ!!」
レイタとワーカーを筆頭に、新月軍は国の兵士たちに立ち向かって行った。
果敢というには、あまりにも兵力の差がありすぎる。
「臆するな!!」
それでも彼らを動かしているのは、レイタの言葉、ただひとつ。
臆病風が吹いても、さっきまで隣にいた仲間が倒れても、それでも戦い続けなければいけない理由はなんだろうかと考えながら、足を動かすしか前に進む手立てはないのだから。
血を流しても、目の前が眩んでも、躓いたらそこまでだと自分に言い聞かせ奮い立たせ、ようやく身体は心に着いてくる。
「よくやるわね。負けるのは目に見えているというのに。理解不能だわ」
「勝てるという微かな希望がない限り、このような馬鹿げた行動は通常取らないかと思います」
「希望?ふふ、ビルダ、希望っていうのはね、私達のような上にいる人間が持つものなのよ?あいつらみたいな下の人間には、希望なんてないの。欠片もね。あるのは真っ暗な闇、絶望、閉ざされた未来、それだけよ」
「さようですか。凡人の私には気付きませんでした」
アルベージュとビルダがそのような会話をしている間も、城の外では1人、また1人と血を流して倒れていった。
朝日が昇ってからまださほど時間は経っていなかったが、城の近くにまで悲鳴や怒声、銃声などが聞こえてきた。
「あいつら一体何をやってるのかしら。あれだけの人数がいながらまだ終わらないなんて。情けないわ」
「そろそろ俺達の出番ってことかな?」
いつの間にいたのか、アルベージュの部屋にはビルダの他にも人影があった・
2人揃って現れたその影に、アルベージュは口角をあげて妖しげに笑みを浮かべると、人差し指で誘導する。
2人もその細く長い指に誘惑されるかのように近づいて行くと、1人はその指を掴んで自分の舌を這わせる。
もう1人はアルベージュの後ろの回ると、桜のような髪の毛を指で梳かしながら指先で持ち上げ、自分の口に触れる。
「ギミル、ゾール、頼んだわよ」
「わかってますよ」
「全員殺せばいいんでしょ?」
「ダメよ」
「「え?」」
てっきり、アルベージュのことだからと思っていた双子、ギミルとゾールは、さすがと言うべきなのか、ハモっていた。
アルベージュに触れていた手を解き、互いの顔を見合わせていると、アルベージュは人差し指を下に向けてこう言った。
「捕えなさい。新月軍の主要人物を。そして一生、恨んでも恨みきれないこの私の下で、働いてもらおうじゃない」
「他のは殺していいの?」
「そうね・・・。使えそうなのは生かしておいてもいいわ。兵士たちも減っちゃってるみたいだし。洗脳でも暴力でも使って、言う事を聞かせればいいだけの話よ」
「おっけー。ゾール、行こう」
ギミルとゾールが部屋から出て行くと、アルベージュはまた外を眺める。
戦争だというのに、とても晴れ晴れとした青空で、小鳥たちの囀りさえ聞こえてきそうなのだが、耳に届くのは別の音たち。
真っ青な空も綺麗だが、強い青から徐々に薄くなっていくグラデーションの空は、とてもじゃないが人間では作れない表現だ。
そしてそこに浮かぶ真っ白な雲も、風に流されながら右のほうへと動いて行く。
「気楽なもんね。流されるだけなんて」
アルベージュの部屋から出ていったギミルとゾールは、激戦区へと向かって行く。
「あーあー。この様じゃあ、アルベージュ様が文句いうはずだよ」
「これだけ兵力さがありながら、ここまで攻められるなんてね」
「俺達が止めればいいだけの話だ」
「そりゃそうだ」
その頃、休息もせずに戦い続けていたレイタたちは疲弊しきっていた。
はぁはぁ、と息を切らしながらもなんとか城の近くまで来ていたレイタたち。
銃に弾を込めながら、体力の回復をしつつ、どこに敵がいてどこに仲間がいるのかを知ろうとしていた。
「くそっ。連絡も取れねえ」
みなに持たせた小型の無線機も、壊れてしまったのかザーザーと音を発するだけ。
「ワーカーか?」
「レイタ!!」
丁度ワーカーとばったり会ったレイタは、誰が倒れたのを見たとか、どの方向に行ったのを見たとか、そういう話をしていた。
「やべぇな。もう半分以上やられてる。このままじゃ全滅かもな」
へへ、とこんな状況にも関わらず笑いながらそういうワーカーに、レイタも思わず小さく笑って返す。
「全滅するとしても、やらなきゃならねぇ。それが例え、茨よりも険しい道だとしてもな」
「わーってら」
そのとき、近くから悲鳴が聞こえてきた。
それはとてもじゃないが断末魔の叫びの象徴とも思えるようなもので、レイタとワーカーは息を顰める。
次々に鳴り響くそれに、2人はそっと物影から様子を窺う。
「あれは・・・」
するとそこには、以前みたあの双子がいた。
これまでの兵士とはわけが違う、強さ。
「ぐああっっっ!!!」
「あーあ。醜い醜い」
「それよか、首謀者はどこ?ちゃんと聞けた?」
「この状況で聞けると思うか?まだどっかで生きてるってことくらいしか分からないよ」
「なら、こいつらの悲鳴を囮にして誘き寄せる?優しいリーダーなら、すぐに出て来てくれるはずだよね」
「その手があったな」
ニヤリと笑うと、2人は新月軍に躊躇なく手を下していく。
「っ!!」
「レイタ!行くな!」
罠だとは分かっていても、仲間の悲鳴が聞こえてきて助けにいかないわけにはいかない。
そんなレイタの腕をワーカーは掴んだ。
「ここは耐えろ!!」
「新月軍のリーダーさん、早くしないとみーんな死んじゃうよ?」
「それとも何?もう怖くて逃げちゃったとか?」
「あ、それ有り得る」
「とんだ喰わせ者だな」
「つまんねーの。全然戦えねえんだもん、こいつら」
ケラケラ笑いながら、楽しそうに無邪気に話す2人。
地面に横たわっているレイタたちの仲間の身体を足で蹴飛ばすだけでなく、まるで蟻でも踏みつけるかのように無情に、冷酷に、無邪気に、そう、ただ無邪気に戦う。
「お?誰だ?」
2人の前に、男が現れた。
緑の髪に黒のタートルネックの服装の男、ジェイドだ。
「俺達のリーダーは、お前たちなんかに殺されない」
「はあ?助けにも来ねえそいつを信じてるわけ?目出たい奴だな」
「所詮はお前も、お前のリーダーも、俺たちからして見れば白アリなんだよ。駆除されて当然の存在なんだ」
ジェイドは剣を構えると、ギミルとゾールはまるで鏡映しのようにして互いに近づいた。
そして、不敵な笑みを浮かべる。
「ジ・エンド」




