第一回漢会 ジンギスカンと嫁の愚痴 後編
後編です。
「それはどういう意味で?」
山田くんの質問は俺にとってはなんとなくだがわかる気がする。
「いや、よくテレビとかの女子会の特集や奥さんたちのインタビューを流してるけどそう言うのを見ると旦那さんや彼氏への文句が多いじゃないですか。たしかに浮気したとか相手を裏切ったと言うならまだ言われても仕方ないとは思うんですけど、俺はお二人を含めて、浮気もせずにひたすら家族に大変な思いをさせないように頑張っている男のことを知っています。だからこそ、そういう風に言われるくらいなら結婚なんてしない方がいいと思っちゃうんですよ。」
山田くんはそんなことを言ってきた。たしかに女性が強くなったことにより俺もかなりひどいことを嫁さんに言われてきた。
「たしかに、そう思うよ。俺なんかさぁ、嫁さんがなんかやらかすたびに俺のせいにされるしさ。家の片付けができないのは実家に嫌々入ったからだとか、専業主婦なのに食事を作らないのは子育てや洗濯とかで忙しくて作る暇がないだとか、何でも俺のせいにされてるよ。それに何より、嫁さんがかまってくれない。最近おもうんだけどさ、よく離婚理由で旦那がかまってくれない。とか言う女性がいるけどさ、その前に貴方は旦那さんを蔑ろにしてないか?と言いたいよ。子供ができたら女性から母親にしか見えなくなるって言うけどそれの引き金を引いてるのって男じゃなくて女性じゃないのかな?」
「佐藤さん、それってどういうことですか?」
山田くんが身を乗り出して聞いてくる。木村さんも俺がなにを言いたいかわかっているみたいで黙って聞いている。
「いやさ、うちの場合っていうのが前提なんだけどもさ、子供が生まれるとそれまでは二人だけだったからお互いに想い合う時間があるけど、子供が生まれるとその子供にかける時間が増えてしまう。だけど時間は1日24時間しかないから子供にかける時間を旦那との時間から割くしかないんだよな。そうなったときに自分の女から子供たちの母親になったんだな~。って思うんだよね。それが悪いって言うのじゃないんだけどさぁ~。女性としては痛い思いをして産んだ子供でお腹の中にいるのだからそういった心構えが出来てるんだけど男の場合はお腹の中居る訳でもないし、嫁さんの方が先に母親になっちゃうからその速度についていけないんだよな。だけど嫁さんからすると私が苦労してるのになんでお父さんのあんたができないんだとか思ってるんだろうと感じるところがたくさんでてくるのさ。まして、夜の生活についても子供が大きくなってくると遅くまで起きてたりするから家でするのも気をつけないといけないし、ホテルに行こうとすると金がかかるから嫌だとか言われて、挙げ句の果てに私は別にしなくていいとか言われると愕然とするよ。」
カウンターにおかれたビールを飲み、焼き上がったラム肉にタレを浸けながら話を続ける。
「ぶっちゃけさ、好きで結婚したわけだから男としてはやっぱり嫁さんといつまで経っても仲良くしたいはずなんだよ。だけどそういうことを何回も言われると男の心が折れてしまって違う拠り所を探すんだよね。そこについては人それぞれなんだけど家族が大事だっていう人は仕事だろうし、子供たちからまでないがしろにされているなら浮気までいっちゃうのかな~。奥さんにまったくないがしろにされず家族との関係も良好だけど欲望で浮気をする男はどうなってもいいけど、そういう状態で浮気をする旦那さんには多少だけど同情するかもな。まあ、やっていいことと悪いことがあって悪いこと何だから反省しろとは言うけどね。でも奥さんがたが旦那がかまってくれないと言う前に、そもそも、奥さんが旦那にかまってあげていますか?って聞きたいね。」
俺の言葉を聞いてた木村さんは頷いている。多分思うところは同じっぽいな。
「うちも同じだな~。俺も単身赴任でこっちに来たけどさ、嫁さんと子供たちもはじめはこっちに来る予定だったのが直前になって友達と離れたくないって言い出して着いてこなかったし、家に電話すると忙しいとか言ってすぐに切られたり逆にこっちに電話きて取れない時とかなんて浮気を疑われたりするしな。」
木村さんも色々あるらしい。ボヤキながらハイボールを飲み干す。山田くんはそれをビールを飲みながら聞いている。
「大将、一○者ロックであと、ご飯一つお願い。木村さんと山田くんは?」
「俺はハイボールもう一杯で。」
「俺はビールで、あとご飯大盛もお願いします。」
「あいよ。」
大将はそう言うと注文の品を用意する。ジンギスカンがなくなっめホルモンとタン、ハラミ、豚トロ、野菜を焼きながら話は進んでいく。その中で山田くんがポツリと呟く、
「結婚ってなんなんですかね?」
その言葉に俺は考えてから口をひらいた。
「う~ん、難しい問題だな。結婚する理由は人それぞれだけど、何かあった時に頼りになんのは家族との絆なんじゃないかな?正直言って結婚自体が違う環境で育ってきた他人と一緒に住むということだし、そこで子供が出来て初めて家族となる。夫婦間には血のつながりが無いんだから考え方が違うのも当たり前、好きになって結婚したらあとは二人で話し合いながら同じ年月を暮らしていけばいんじゃね?それで別れるっていうんなら仕方ないことだしね。まあ、一つ言えるのは奥さんを大事にして、裏切らないようにした上で奥さんにやられたことは日記に書いておけば離婚離婚するときに慰謝料取られないっていうことだ。」
「なんかはじめはいい話だったのが最後は離婚前提になってるのは佐藤さんクオリティーですね。たしかに、踏み出さないとわかんないッスね。元々、明日のデートでプロポーズする予定だったんで挑戦しますね。」
「「ブッ!!なっ、なんだと?」」
飲み物吹き出して、木村さんとハモる。大将はすかさずおしぼりを渡してきたので吹いた飲み物を拭き取った。
「結果報告よろ。骨は拾ってやる。」
「実況はどこでやるの?会場は?安価は?」
俺と木村さんはそう言いながら詰め寄ると山田くんは、
「えーい、うっさい。て言うか佐藤さんは玉砕確定で言うのやめて。あと、木村さん、実況しないし。て言うかくんな。」
「じゃ、プロポーズの言葉は」
「俺に毎日味噌汁作ってくれか?」
「木村さん、古い。やっぱシンプルに俺と結婚してくれ。だな。」
「安価やめて、もっと真面目にするから黙ってて。」
そんな事を話ながら漢たちの夜はふけていった。
なお、次の日の夜に山田くんからの報告があった。結果については無粋なので発表しないが山田くんは終始ご機嫌だったと言うことだけは付け加えておこう。
ーーーー今回はここまで。
次回、仕事についてかな?