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第4話 望まない力

プロローグ部分がこれで終わります。

 マルクスは愕然としていた。


 神であるラロッカが相手の為、刃は掠りもしなかったが、『木の葉落とし』が描く刃の軌道は鋭く洗練され、自分の身体が何かに操られるような感覚に襲われていたからだ。


 其処らの魔物相手ならば一刀両断の元に捩じ伏せていたであろうことが、魔物討伐経験のないマルクスにも何故か分かった。


 「おいおい何の冗談だ…。本当に使徒になっちまったのか…?」


 自身に訪れた劇的な変化に思考が追い付かず、呆然と立ち尽くしていると、あまりに場違いな明るい声がマルクスの耳に届いた。


 「フフフ、我が使徒マルクスよ、突然の変化に戸惑っている様ですね。あなたは強大な力を手に入れたのです。それこそ才ある人間が一生を武に捧げても、到底届くことのない絶大な力を」


 「おい本当に勘弁してくれよ…。俺はこんなこと望んでないぜ。加護ってより呪いの類じゃねぇか…。…一応聞くが返品は出来ねぇのか?」


 「呪いとは失礼ですよ、我が使徒マルクス! 加護を与えられた者は、その命尽きるまで使徒として生を全うするのです。そして…」


 力なく座り込んでしまったマルクスの頭にそっと手を置き、ラロッカは続ける。


 「あなたにはもう1つ、特別な力を与えます」


 マルクスは顔を引き攣らせ焦りながら懇願する。


 「もう本気で勘弁してくれ。さっき剣が掠りもしなかったからよ、ラロッカ様に敵わねぇのは分かってる。渡せるものも大したものは持ってねぇけど、俺が出来ることなら何でもするからよ、もうこれ以上は何も与えないでくれ。頼む!」


 「『出来ることなら何でもする』ですか…。そしてこれ以上の施しを受けぬという高貴な姿…! 本当に素晴らしい使徒です、マルクスよ! あなたを使徒と定められて私も幸せです!」


 「そ、そうだろラロッカ様。いやぁ俺もホントそう思ってよ。貰いすぎると俺も恐縮するっつうか、すげぇ迷惑っつうか…ゴホンッゴホンッ! いや、とにかくよ、これ以上何もいらねぇよ! ありがとうございました! 俺はこれで!」


 ラロッカが発した『私()幸せ』という言葉に引っ掛かりと苛立ちを覚えながらも、マルクスはどうにかこのままラロッカの気持ちが収まるように話を合わせ、立ち去ろうと背を向けた。


 しかしその高潔な姿に感激したラロッカは、より面倒な力をマルクスに授ける。


 「我が使徒マルクスよ。英雄への最短距離をあなたに贈ります。

 生命神ラロッカの名の元に。我与えるは神々の試練。乗り越えしは英雄の筋書き。光満ち足りてその方を照らさん」


 ーー《テンプレートをあなたに》ーー




 逃げるように走り去っていくマルクスの背中に向けてラロッカが放った、祝福という名の呪いの言葉。


 ここにマルクスの平穏で平凡な、愛すべき生活は消え去った。

次回からマルクスにテンプレが襲いかかります。

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