自業自得2人
「ねぇ楓、アンタ何でそんな笑顔な訳?」
ニコニコと真と接する時以上に上機嫌な楓に、ついに友人の1人が問いかけた。
「さっきの時間で文化祭の委員を決めたでしょ?」
「ああ、そう言えばアンタ立候補してたわね」
開催まで2ヶ月切った文化祭。
その運営に携わる文化祭実行委員会は、企画から準備、そして当日のサポートに至るまで仕事が多く、毎年生徒には不人気だ。
「何企んでるのよ?
アンタが委員なんてやりたがるような子じゃないって事、とっくに知ってるんだから」
「ふふふ…
実はある筋から今年の文化祭委員に草田君がなるって情報を入手したんだよね」
「草田が?」
「同じ委員で力を合わせて文化祭を盛り上げ、序でに心の距離も縮めようって作戦よ」
友人たちが顔を見合わせる。
「楓、その情報信用出来るとこからなの?」
「草田って確か学級委員よね?
文化祭委員に学級委員はなれないはずだけど」
「騙されたんじゃない?」
「…………」
「あんの馬鹿男――――!!」
楓の怒声に、やっぱりかと苦笑した。
「――――よくも騙してくれたわねこの馬鹿男!!」
勢い良くドアを開け、教室中に響き渡る声で楓が怒鳴る。
相手は、真が委員に入るという嘘の情報を流した昶だ。
「相変わらず喧しい奴やなボケ女」
ニヤニヤ顔の昶に確信犯だった事を悟る。
「アンタのせいでなりたくもない文化祭委員になっちゃったじゃない!!
どうしてくれんの馬鹿男!!」
「俺もまさか真が委員に入られへんかったとは、気付きもせんかったわー。
すまんすまん」
「ホントウザい!!
知ってたくせに!!」
「まあ精々頑張ってくれや文化祭委員」
ケラケラ笑う昶にどうしてやろうかと楓が思ったその時、真と昶のクラスの担任が前のドアを開けて入ってきた。
「文化祭委員のあみだクジの結果が出たぞー」
「おら、別のクラスの奴はとっとと出てけ」
しっしっと昶が片手を振る。
イラッとしながら舌打ちし、仕方なく教室を出ようとドアの方へ歩き出した。
「厳正なるくじの結果ー、うちの文化祭委員は火狩に決まったー」
「…は?」
「…え、」
「って訳で頼むぞ火狩ー」
「は、え、ちょっ、俺!?
嘘やろ先生!?」
「嘘じゃないですーホントの事ですー」
「最ッ悪や…!!」
「まあ精々頑張りなさい文化祭委員」
鼻で笑って見下してくる楓に、昶の顔がぴくりと引き攣った。