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犬猿トップ



放課後、帰宅する生徒たちの波に逆らい、重い足取りで会議室へ向かう楓の後ろから「おーっす」と昶が声をかける。

思わず足を止め、昶をじっと見つめた。



「な、何やねん?」

「(今朝のあの真剣な目付きとは程遠い馬鹿面…)」

「…お前何や失礼な事考えてへんか?」



勘は鋭い。



「被害妄想は止めてくれる?

馬鹿面が来たって思っただけだし」

「そうかそれはすまんかった…って、お前それ大概失礼な事やないか!!」



アホな事言うとらんと早よ行くで!!

チッ。

舌打ちすんな!!

ぎゃあぎゃあ騒ぎつつ足は進み、委員会の担当教師にうるさいと怒られ、2人は漸く会議室の席に着いた。



「ったく…

全員揃ったな。

これより文化祭実行委員会を始めるが、ここから先は前回決めた委員長と副委員長に進めてもらう。

2人共、前へ」



机の上の資料に書かれていた名前は、

委員長、3年火狩昶

副委員長、3年水森楓



「意義ありッ!!」

「却下」

「いや、私前回休んでましたし!!

普通外れますよね!?」

「火狩がお前を副にするなら委員長になっても良いと言ったんだ。

諦めろ」



またアイツか!!

何となく嫌な予感がしていただけに悔しい。



「アンタ後で覚えてなさいよ」

「呪いみたいで怖いからそのボソッと喋るん止めや!!」



犬猿の2人を見る後輩は唖然、同じ学年の3年生は相変わらずといった風な苦笑に分かれた。



「あー、昨日も自己紹介したけど、委員長の火狩や。

暫くの間よろしゅー」

「不本意ながら副委員長になりました水森です。

分からない事や面倒くさい事は全て委員長任せでお願いします」

「お前もちゃんと仕事せぇやボケ副委員長」

「アンタが巻き込んだんだから私に押し付けないでよ馬鹿委員長」

「お前が金曜に休んだからこうなったんやろが!!」

「そもそもアンタがくだらない嘘つかなきゃこんな事にならなかったし!!」



睨み合う2人に、低く唸るような声で一言。



「お前ら委員会が終わるまで廊下で正座するか今すぐ会議を続けるかどっちか選べ」

「「進行します」」



慌てて書類を捲る。

各クラスの出し物やイベントは次の集まりまでに用紙に書いて提出。

もし予算や申請書類など分からない事があれば委員長か副委員長にまで聞きに来るなど、大体話し終わって本日は解散となった。

因みに、2人がまた些細な事で喧嘩を始め、今度は本当に廊下へ摘まみ出されそうになった事は言うまでもない。



「水森」

「…………」

「露骨に嫌そうな顔すんな。

これ、俺の連絡先。

ないと不便やから渡しとく」

「え、ゴミ以上にいらないんだけど」

「あーあ、真面目に副委員長として委員長の俺をサポートしてくれたら、これもやろうと思ってんけどなー」



ポケットから覗くのは、笑顔で犬とじゃれ合う真の写真。



「欲しい!!」

「副委員長としてしっかり仕事するか?」

「ぐっ…草田君には代えられない。

アンタが思ってる以上に仕事してあげるわ!!」

「因みに俺のスマホには激レアの眼鏡姿や寝顔もあったり…」

「さっさと連絡先寄越しなさい!!

但し文化祭が終わったら即消去するから!!」

「お前本間キモい程に真好きやな…」



仮にも片想いの相手でありながら流石に引いた。




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