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プロローグ

無駄に暑いが風はほんのり涼しい、まだ夏休み前のこと。

僕、寺本てらもと そうは美術室に呼び出されていた。


可愛い女の子から告白の呼び出しとなれば気分は上々なのだが、無論そんな幸せなことではない。

高二の夏……つまり進路の話だ。


担任の先生が美術部の顧問で、その担任の美術室の方がクーラーが効いてて涼しいからそっちでやろうという身勝手な発言により、僕は美術室で面談をすることになったのだった。


普段は全く行かない芸術棟二階の突き当たりにある美術室へ向かう。

突き当たりということもあってなのか太陽の光があまり届いておらず、昼間だというのにどこか薄暗い。


「あの……先生、いますか?」


重い美術室の扉を僅かに開け、中を覗き込む。

ぱっと見では誰もいない。

想像していたよりも綺麗に整った室内は確かに涼しく、面談用であろう机と椅子二脚も用意されていたので僕は椅子に腰掛けて待つことにした。


辺りを見渡すと、棚の上に絵の具やらパレットやら画用紙やら画力皆無の僕には無縁のものが沢山置かれている。

額に入れられた賞状やトロフィーも沢山あり、初めて美術部が校内でも有数の強豪部であることを目の当たりにした。


賞状に書かれた大会は全て違うものだったが、名前は全て同じだった。

見たことも聞いたこともない名前。

これだけ受賞しているとなれば必ず校内の表彰伝達式で名前を読み上げられるであろうに、僕は彼女の名前を一度も耳にしたことがなかった。


賞状の横には同じように額に入れられた絵が飾られている。

どこまでも続いているかのような細い道に大きく華々しい一本の桜の木。

見慣れた風景……僕の通学路である河原の風景だと思われるが、あそこはもうとっくに寂れている。

ここまでの温かみを感じられる場所ではない……。


美術にはとことん疎い僕にもわかるほど、その絵は人の目を惹きつけるものだった。


あまりの凄さにしばらく唖然としてしまう。

額の下に貼られた学年を確認すると同学年であることが判明した。

そして学年の横に書かれた名前をもう一度確認する。



桐島きりしま 桜空さくら


それが、彼女の名前だった。

小説裏話


原作ノートでは中学二年の頃からの話の設定でした。

中二から大人までの成長を主にノートに書き詰めていたんですが、またこれがすごい量で、同じイベント何回来るんだよと思うくらいだったので三年短縮して高校二年からの話となったのでした。

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