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俺が変えた未来

 30年後の世界で当時の科学に関する知識すべてをマスターした俺は、再び元の時代へ戻り、義父のところへ行った。


 義父には全て本当のことを話した。


 「そうか。。。私より先に逝ったか・・・。」


 義父は沈んだ声でつぶやいた。


 「お義父さん、このまま未来で司博士となり、未来を変えてきます。もしかすると、お義父さんと会うのはこれが最後になると思います。俺が変える未来は、俺と洋子がこの時代で出会うことのない未来になるかも知れません。でも・・・・、でも・・・・。

 未来は変えて見せます」


 義父は俺の方を見ながら、

「未来でも君は娘の夫になっているよ。間違いない。私は・・・そう信じている」


 これは義父との最後の会話だった。


 俺は未来商事で島村と近藤と入念な打ち合わせをして、30年後の未来へと向かう準備を進めた上、未来へと向かった。


 知識を完全にマスターする装置ができたからといって、新しいもの生み出す知恵、「創造力」だけは機械で作ることはできない。


 知識があっても、応用ができなければ意味がない。

 

 未来では、知識よりも、創造力の有無が大事な時代となっていた。


 俺は習得した知識を生かして転送機の開発に専念した。


 そして、俺はついに転送機を完成させた。

 

 実際に司博士が完成させ、洋子達が俺の時代へ向かうことになるよりも数年前だった。


 俺は未来商事からもらった装置を取り付け、電磁波が出ないことを点検した上で、洋子達親子を送り出した。


 以前に俺が近藤と戦国時代で世界制覇した結果、地球の環境悪化はあまり進んでいなかったが、それでも火星に人類は移住し始めていた。


 環境悪化があろうとなかろうと、人類は火星に移住するし、洋子達家族は俺のいた時代へと移動する。


 それだけはまったく変化しない未来だったようだ。


 洋子達が出発した後の転送機を見ながら、俺はその後のことが気になった。


 俺は洋子と出会えたのだろうか・・・。

 俺と洋子が一緒にならなければ、真由は、近藤はどうなるのだろう。


 義母は、義父は・・・。


 考え始めるときりがない。


 しかし、未来で俺のやるべきことは全て無事にやり終えた。


 そんな時、転送機から近藤が出てきた。


 「お疲れ様でした。」


 「久しぶりだね、もうすっかりおじいちゃんだよ」


 「戦国時代に行ったときのデータを改良して、今回は年もとるようになってますから。」


 「そうだね。無事に任務完了だよ。」


 「それでは早速戻りましょう」


 近藤はそう言って、俺にリモコンを向けてスイッチを押した。


 徐々に俺の視界が真っ白になり、意識がとんだ。











その時俺は気付かなかった。


俺を見ている近藤の目から涙がこぼれていることに。



消えた俺を見送り、近藤は呟いた。


「さよなら・・・・。お父さん。」



そして、近藤もゆっくり体の輪郭が薄くなり初め、最後に近藤自身が消えてしまった。



・・・・消えて行く彼女を見送る者は誰もいなかった。


彼女が消えた場所は、涙で濡れた跡だけが残っていた。


 意識を取り戻し、徐々に視界が戻ってくると、そこは未来商事の事務所の奥にある部屋、俺が戦国時代やゲームのテストプレイをしていた部屋だった。


 「おかえり、お疲れ様」


 島村がにこやかに出迎えてくれた。


 とても懐かしい気がする。


 「お久しぶりです。」


 「私はまだ3時間くらいしか離れていないよ」


 島村が笑いながら答えた。


 そう、俺は一旦30年後の未来で科学の知識をマスターした後、再び戦国時代へ行ったときと同じようにして、未来へいったのだった。


 ・・・司博士として・・・。


 戦国時代へ行った時は、年をとらなかったが、今回は改良を加えて、自分の思う年齢に姿を変えて行くことが出来るようになっていた。


 俺は、洋子が死んだ今、もうこの時代に未練はなかった。


 だから、そのまま転送機で未来へ行くつもりだった。


 しかし、近藤から


 「私はどうなるのですか。」

 

と言われた。


 真由はそのまま未来商事の本社に預けたままだ。


 近藤はできることなら父親である俺と一緒にいることを望んでいるのだ。


 近藤の言葉もあり、更に未来の委員会からも依頼を受けた。


 委員会は既に義父のことも、妻のことも知っていた。


 委員会からの依頼は、俺が開発した転送機を委員会に引き渡すことだった。


 転送機には謎が多く、委員会でも完全に把握できない面があり、以前から司博士を探していたのだ。


 そして、偶然未来商事の社員となった俺が司博士であることを知り、俺に転送機の引渡しを依頼したというのだ。


 俺は断る理由もないので、その依頼を受け、今回の任務という形で未来で転送機を完成させたのだった。


 

 しばらく椅子で休んでいるうちに、ようやく感覚が戻ってくる。


 改良したとはいえ、終了後のこの感覚はまだ改良できないようだ。


 「課長、どうですか?」


 「ああ、そのことなんだが・・。」


 俺は島村に義父や、洋子のことを尋ねた。


 「今日はもうこのまま家に帰ってみてはどうかな」


 「はい、そうします」


 俺はまっすぐ家に向かった。










  家に向かいながら、


   家って、朝出てきたあの家でいいのか?

   なかったらどうするんだ?


等と考えていた。


 俺の開発した転送機では、電磁波の影響は全くないはずである。


 つまり、洋子も両親も電磁波で死ぬことはないはずである。


 もしかすると俺が洋子と結婚することはなかったかもしれない。


 そうなれば今向かっている場所には、俺の家はないはずである。


 やがて最後の角を曲がり、家の前までたどり着いた。


 ・・・・・・・。










  ・・・・・・・あった。



  ちゃんと「山本」の表札がある。


 しかし、見覚えのない植木が並んでいるな。


 それの花も多い・・・。


 俺は少し疑問に思いながらも期待しながら家の呼び鈴を鳴らした。



  「はーい」


 ・・・・年配の女性の返事が聞こえた。


 そして、洋子に良く似た年配の女性が出てきた。


 「あら、おかえりなさい、今日は早かったのね。」


 「ああ、ただいま。早く仕事が終わったもので。」


 俺は驚きを隠しながら答えた。


 義母だったのだ。


 義母は健在だった。


 俺が開発した転送機が成功したことを実感した。


 「洋子はいますか?」


 恐る恐る洋子のことを尋ねた。


 「今裏の庭で花に水をあげているところよ」


 俺は家の中に入った。


 幾分、間取りが変わっている気がする。


 どうやら義父母も一緒に住んでいるようである。



 「おかえりなさい。」


 洋子が笑顔で出迎えた。


 「ただいま」


 俺はとてもうれしかった。


 そして、義母がいるにもかかわらず、俺はそのまま洋子を抱きしめた。


 「え?やだ、何よいきなり」


 嫌がる洋子に構わず、俺は洋子を抱きしめた手を離さなかった。







 あきれる洋子と、ただ笑っている義母。





 義父は未来で委員会の重鎮として、火星に単身赴任中だそうだ。



 家族にとってはごく普通の一日だったと思うが、俺にとっては忘れることの出来ない日であった。




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