表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

三日目



「……ミネ、サキ」

「えっ、何?」

 崩れた社の木材を、まだ使えそうなモノと、完全に折れてしまっているモノにより分けていると、しばらく無言だった彼女は、突然そういった。

「あたしの名前。まだ言ってなかったよね」

「うん」

「これから、しばらく一緒に作業するんだし。名前くらい知らないと不便でしょ」

「そうだね……でも、ミネサキさん。コレ、よく考えたら、僕関係ないよね。壊したの僕じゃないし」

 ってか君だし。そう言うと。ミネサキさんは、

「はあ!? 何言ってんの? そもそも雨矢くんが来なければ、こんなことにはなってないんだからね!?」

 と、よく分からない怒りをあらわにしてきた。

「え? ……え? 君が勝手にどっかから降ってきてぶっ壊したんじゃないの?」

 僕はもう、ポカーン? である。怒られる理由が分からない。

「だぁかぁら! 突然ヒトが来たりしなければ、あたしもびっくりして木から落ちたりなんかしなかったでしょ!」

「君なにしてんの!?」

 見たところ、彼女は僕と同年代だから、高校生くらいだろう。……そうかぁ、田舎の高校生は、独りで木登りとかするものなのかぁ。

 なんて、偏見満載な妄想をアクセル全開で膨らませていると、ビシッ! と音が聞こえそうな程のキレで腕を振り上げ、近くの木の上を指差した。

 注連縄しめなわが巻かれているから、御神木ごしんぼくか何かなのだろう。かなり幹が太く、手が届く様な低い場所に枝は生えていない。おそらく、この木に素手で登るのは無理だろう。

「あそこ見える?」

 そう言われて、指の先を探すと、なんとか鳥の巣の様なものが見えた。

「鳥の……巣?」

「そう。あそこの親鳥が他の動物にやられちゃったみたいでね。だからあたしが毎日餌をあげてるの」

 餌をあげてる、って。

「これを登って……?」

「そうよ。ちょうどいいから、今あげてきちゃうわ」

 何やら袋を取り出すと……昆虫が入った袋を取り出すと、それをポケットに詰め込み――虫が入ってるのに――躊躇なく詰め込み。御神木を駆ける様にして――土足で遠慮なく……地を駆けるが如く登って行った。

 人間の運動能力であの枝まで届くんだ……いや、問題はそこか? 僕。

「野生の人間……もうサルだろ、あれ」

 サルも木から落ちることを知った、僕とミネサキさんの三日目。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ