第一話 死闘(笑)
「はぁ、はぁ・・・っ くっそがぁっ」
俺は、息を切らせて目の前の敵を見据えた。相変わらず、俺の攻撃を見極め、避けてきやがる。
この死闘を、大きな草原を舞台に、俺は1時間近く続けている。正直、体力も、精神力も限界だ。相手が好戦的ではないのが唯一の救いだが、俺はコイツを倒さない限り前に進む事ができないのだ。
「くっ! これでどうだぁっ」
右手に握る片手剣を、敵に向かって振り下ろす。が、相手はさらりと避けて、今度は俺にアタックしてくる。
勢いに負けて後ろ向きに思い切り倒れる。HPを表すゲージは赤色になり、そろそろ命が危険である事を警告している。
「ここで、負けるわけには・・・っ」
気力で立ち上がった。節々が痛む。苦しい、苦しい、苦しい。
その痛みを奥歯でかみ殺して、右手に再び力を蓄え、身構える。ここで、必殺技を相手に決めるしか勝つ方法はなかった。
ふう、と息を吐き、目の前の敵にだけ意識を働かせる。目を閉じ、集中モードに入る。
意識が敵にだけへ絞られたとき、俺はマックスのスピードで走り、右手を大きく振りかぶった。
「くらえ! 敵殺し!」
敵を正確に捉えた、良い流れだった。どれだけ強い相手でも、この間合いでは避けられまい。
勝った―――!!
と、確信した、次の瞬間、目の前の敵がいなくなった。まさか、避けられたのか!?
「あのさー。」
声がした。この死闘が繰り広げられている時には聞く事のない、気の抜けた、少年の声だ。
俺はすぐさま声の主の方を見た。金髪の少年が、草原の草の上で寝転がっている。
「お前、さっきから、『ぐおー』とか『まさかっ』とか言ってるけど、」
やめろ、その先を言わないでくれ―――っ!!
「そいつ、青スライムだよ」
・・・本当に、言わなくて良かったのに。