一章:戦闘
平均数2500~3000を基準に書いていくつもりです。
しかし前回と今回の話は時間の関係上
少なくなりました。なお、プロローグから地道に
文章の修正を行っていきます。
よりいっそう読みやすい文章に出来ればいいのですが……
町の片隅にある屋敷、そこで夜な夜な悪魔のような叫び声が聞こえると言う。
そして声は日に日に移動し、自然温泉の沸き立つ湯煙の森へと移動した。
その後、今まで出現していなかった魔物たちがどこからか突如現れ
観光客や町の住人を襲い始めた。
その調査、並び撃退が学園の生徒に依頼された内容だった。
ギルドや討伐で例えるならばこの依頼は難易度B級の中級者向けの
依頼だろう。それを踏まえ、さらに森の中にいるであろう
謎の人物Aに警戒しつつとなるとかなりの精神を浪費する。
体力は温存し、その時に備えるが上策、しかしエリィーナの考えとは裏腹に
人生とはそうも簡単には出来ていないらしい。
内心そう彼女は思いつつ、目の前に迫る攻撃を
背後へ足を蹴り、跳ねて避ける。
数秒前にいた足場は何かによって盛り上がり土ぼこりを空に舞い上げて
空間に篭った空気が散乱する。
そのまま逃げずあの場にいたのなら、今頃は生者ではなく亡者の仲間入りを
果たしていたであろう。
一息吐き出しながら、己が無事であった事をしばし喜んだ後、再び気を引き締めて前を見た。
グネグネとうねる謎の生物、植物のような魔物のような奇妙な存在。
ソレは周囲を無差別に攻撃し、草木を破壊している。
同時にハッとした表情を浮かべ、エリィーナは周囲をさらに見渡した。
「シルフィー!」
第一声がそれだった。
胸の底からあふれ出る気持ちは彼の事を心配していた。
もっともこの中で実力が乏しく、突然の対処力が無い彼の事が心配だった。
「何か言った? 今ちょっと手が離せない状態なんだけど……」
声は信じられない場所から漏れる。
攻撃のもっとも激しい敵の本体がある場所、その場から彼の声がした。
同時に緑の触手のような物の隙間から彼の姿を確認する事が出来た。
しかし、彼は何時もとは違い信じられないほど機敏にそして舞うようにして
無数の攻撃を避けてる。
「え……嘘……だってアイツは……」
エリィーナはわが目を疑った。
普段は生気の抜けたような動きで、行動で、仕草で、
万年落第点を取るダメな男。
そんな彼が今、いまだかつてみせた事の無い
機敏な動きで魔物の鋭い攻撃を避け、さらに
敵の間合いに入り込んでいる。
ソレはエリィーナの思考を完全に混乱へと追いやった。
「エリィーナ! 何を一人で呆然と傍観者になられているんですか
今は戦いなさい。私も彼の動きには驚かされましたが、しかし彼だけでは
役不足です。我々の援護なくしてはおそらく……」
エルナの声でエリィーナは我に返り、そして頭を左右に振って
余計な事を頭の片隅に追いやると、すぐに行動に出た。
「すみません。でももう大丈夫です。いけます」
(そうよ……避けてるだけじゃいずれ……だから私が!)
彼女の眼差しはしっかりと魔物の姿を捕らえ、魔物に向けて
空中に魔方陣を展開し始めた。
魔法詠唱にかかる時間は人それぞれであるが
人と人とに相性があるように魔法と人とも相性が存在する。
魔術師の9割は万能型と呼ばれている類の物で、残り一割が
特化型と言われている。特化型は万能型には無い高速性の
ある詠唱と抜群の破壊力を要する事ができ、万能型よりも
より強く、より素早い攻撃が可能なのだ。
エリィーナはそんな特化型の人間だ。
雷撃であれば人の常識を超える速さで詠唱が可能だった。
彼女は言葉を発する。
同時にすばやく空中に手を走らせ魔法式を構築していく。
「天空が式、雷鳴のごとく現れし鋭き刃よ、我の名の下に
その姿を示し、我にライギョの籠を持って外敵を駆逐せよ」
『雷撃風神斬』
繰り出される魔法、構築される電流の刃。
ソレは一瞬で膨れ上がり、魔方陣の中央より
剣のような核を中心にして雷の渦を起こしながら標的に向かって放たれた。
周囲の硬い地表を抉りつつ放たれた魔法は速度を落とすことなく
さらに加速し標的へと向かう。数秒後---激しい閃光と爆音に似た音が
空間に響いた。
次回から更新時間は19:00と固定になります