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第5話 ツンヤン

多摩川美桜は腫れ物だが、そんなのおかまいなしな仏のような人もいて。


「多摩川さん。報告書すごく良かったよ。わかりやすいし、見やすくまとめられてたね。ありがとう」


女性の先輩である下丸子(31)さんだ。

産後1年で復帰したが、時短パート契約をされてるらしい。

誰にでも優しい人で、わからないことがあれば何でも教えてくれるし頼りになる人だ。


「…や…別…仕事っつーか…」


声、ちっちゃ!!!

多摩川美桜は威勢がいいとばかり思っていたが、褒められると弱いのか?

それとも、下丸子さんには心を開いてるのかもしれない。

このシーンだけ切り取ればれっきとした″ツンデレ″なんだろう。

だが、物珍しそうに見る連中に気付くと


「よそ見してねーで仕事しろ!」


と怒鳴り散らすので、やっぱり″ツンヤン(ツンデレヤンキー)″だ。


いつもならうるせぇなとしか思わないが意外な一面を見てからは、照れた顔を見られたくはないんだろうなと思う。


「元気があっていいわね」

と下丸子さんはそんな多摩川美桜の頭を撫でていた…

まるで3歳児への対応にしか見えないが、大人しくなるんだからこれでいいんだろう。


俺は今日こそは残業しないと決めていたので、

「お先に失礼します」

と挨拶の言葉だけを残してとっとと退勤した。

ゆっくりしてたらまた雑用を押し付けられかねないと思ったから…

多摩川美桜が残っていることには気付かなかった。





翌日、朝の離席(10分休憩)で下丸子さんとすれ違った時に声をかけられた。


「昨日のお礼は言えたかな?」

と。


お礼とは…?


「すみません、何のことでしょう?」


「多摩川さんのことよ」


ますます意味がわからない。

なぜここで多摩川美桜が出てくる?


「あら、知らないのね。あの子も言わないなんて、やっぱり可愛いわ」

ふふふを鼻と口の前に手を当てて品良く、下丸子さんは笑った。


多摩川美桜が、可愛い…?



「あの子ね、蒲田さんが鵜木君に仕事をお願いしようとして探していたところを見て、自分が代わりにやると言って、ひったくるように資料奪ったのよ」


またあの上司(蒲田)俺に押し付ける気だったか!

というか、多摩川美桜が代わりにやるって?


「だから、会ったらありがとうって言ってあげて。きっと喜ぶから。」


「はあ…。教えていただきありがとうございます。」


喜ぶ…のだろうか?

それはわからないが、変わってもらったのは事実だし、言ってみようとは思う。

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