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第2話 奇妙な始まり

今日はいつも通り残業をしていた。

隣で座ってキーボードを打ち込んでいるのは、同期の多摩川美桜(22)だ。

見たくれはいいし、仕事にも真面目で結果を出しているのだが、少々難があって同じ部署の人間からは腫れ物扱いされている。

どんなものかと言うと…


「あ?てめ今こっち見てたか?」


口が極めて悪い…


「言いたいことあんだったら言えよ!」


鬼のような形相で俺を睨みつけてそう言った。


「何もないわ。自意識過剰女が。」


「んだとてめぇ!」


俺本当にこいつ無理苦手。

だいたい、ちらっと見ただけでそんな怒ることか?

残業してるのは俺ら二人だけだから大声出しても誰にも咎められないのが幸いだろうか…。


「口動かす暇あったら、さっさと手を動かせよ」


売り言葉に買い言葉なのかもしれないが、腹減ってる中嫌々残業してるせいか、イライラがおさまらずに俺はそう返してしまった。


「っざけんじゃねぇーよ!!」


ガバッと多摩川美桜が椅子から立ち上がった。

俺はまずいっと思って体を彼女がいる方向とは逆に引いた。


「待っ」


だけど、間に合わずに顔を真っ赤にさせた彼女に胸ぐらを掴まれた。

途端…



「もうっ!健太郎くんと喧嘩なんてしたくないのにぃっっっっ!」




!?




「…は?」



多摩川美桜はびっくりした顔で俺の胸ぐらを掴んでいた手をぱっと離して後ずさった。


健太郎っつったか…?

俺の名前は鵜木健太郎(22)だ。

間違ってはいない。いないんだけど…。


「てっ…てめぇ今私に何した!?」


顔を真っ赤にさせたまま彼女は俺を指差して叫んだ。


「い、いや、なんかごめん」


どう考えても何かをされたのは俺の方なんだが、触れられたことで彼女の″心の声を物理的に口から吐き出させたこと″は事実だ。


「…っっっ」


果たして最初から彼女は、怒って真っ赤だったのか?それとも俺と話すことで真っ赤になってしまってたのか?

訳がわからない。


彼女は慌てたように自分のビジネスバックを持つと俺と目も合わせずに


「殺すっっ!」


と怒鳴って、かざすだけでいいはずのカードキーを叩きつけるようにして部屋を出ていった。


何だったんだ…?

俺、疲れてたか?

幻聴と幻覚だよな?

友達でもあるまいし、下の名前で呼ばれるはずがない。

あんだけ口が悪いやつが、君付けする訳がないし。


頭を振ると、椅子に座ってまたキーボードを叩いて冷静に仕事を片付けた。





これが、始まりだった。

多摩川美桜との奇妙な関係の…。

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