第9話 都市の陰謀
アルモニア市の朝、空は薄い霧に包まれていた。
だが、都市の奥では不穏な動きがあった。
「アルト・シルヴァン……また都市で英雄扱いか」
ノア・タルクスは暗い部屋の窓辺に立ち、眉をひそめる。
彼は権力を握る市の重鎮であり、かつてアルトを
無能と決めつけ追放した張本人だ。
「弟子たちの力で伝説を作られるとは……」
ノアは拳を握る。
「計画を立てる。都市の評価を操作して、彼の評判を落とす」
ノアは複数の密使に指示を出す。
「賢者アルトに関する偽情報を流せ。弟子たちの行動も
混乱させ、民衆の不信を煽るのだ」
密使たちは頷き、暗い通りへ散らばった。
アルト・シルヴァンは弟子たちと市の広場を歩く。
リリス・フェンウェイは元気いっぱいに魔法を試し、
カイ・レンフォードは剣技の演舞を披露する。
「アルト様、今日も称賛されてます!」リリスが笑顔で叫ぶ。
「……またか」アルトは苦笑した。
しかし、その日、街角で不可解な事件が起きる。
小さな商店の扉が壊され、魔法の痕跡が残されていた。
人々は騒ぎ立て、アルトの弟子たちに疑いの目を向ける。
「賢者アルト様の弟子が暴れたって本当?」
「いや、でも昨日は活躍していたはず」
混乱が広場に広がる。
アルトは弟子たちを集め、冷静に指示する。
「落ち着け。誰かが仕組んだ罠だ」
リリスは心配そうに眉をひそめる。
「アルト様、でも市民の目は……」
カイも剣を握り直す。
「偽情報の可能性が高い。落ち着いて対処しよう」
アルトは都市の裏通りへ向かい、痕跡を確認する。
煙と魔法の残滓、そして巧妙に隠された符印。
「……やはり、誰かが仕組んだ」
弟子たちは驚くが、アルトの冷静さに従う。
その時、ノア・タルクスが暗闇から現れた。
「なるほど、賢者アルト、君の弟子たちを混乱させるか」
アルトは少し眉を上げる。
「ノア・タルクス……あんたの仕業か」
ノアは冷たい笑みを浮かべる。
「都市の秩序を守るためだ。君の無能は、もう見過ごせぬ」
リリスは叫ぶ。
「アルト様、やめてください! 弟子たちを責めないで!」
カイも剣を構える。
「俺たちが守る」
アルトは肩をすくめ、静かに指示する。
「無理に戦うな。まず民衆を落ち着かせろ」
弟子たちはそれぞれの力を駆使する。
リリスは光の魔法で街角の煙を晴らし、
カイは剣技で倒れた障害物を除去する。
民衆は次第に冷静さを取り戻し、
偽情報の混乱も徐々に収束した。
アルトは苦笑し、弟子たちを見つめる。
「……また、勝手に解決するんだな」
リリスは誇らしげに笑う。
「アルト様、私たちやりました!」
カイも静かにうなずく。
「俺たち、成長してます」
ノア・タルクスは悔しそうに立ち去る。
「次は計画を練り直す……」
だが、市民の目にはアルトの采配が光り、
弟子たちの活躍はますます評価されるばかりだ。
夜、アルトは街灯の下で星空を見上げる。
「……弟子たちが勝手に英雄を作る」
都市は騒ぎ、弟子たちは成長し、俺は静かに観察する――
無能扱いの青年が、伝説の賢者として歩む日々は
今日も確かに続いているのだった。




