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第6話 弟子の成長と誤解


アルモニア市の朝は、今日も活気に満ちていた。

街角には人々が集まり、噂話で持ちきりだ。

「賢者アルト様、また弟子たちを導いたらしい」

「山脈の試練も突破したって聞いたぞ」


アルト・シルヴァンは小さく眉をひそめる。

「……俺は、何もしていないんだけどな」

リリス・フェンウェイは、元気よく跳ねながら言う。

「でもアルト様、私たちすごく強くなりました!」

カイ・レンフォードも静かにうなずく。

「俺も、成長できた気がします」


昨日の魔獣騒動で、都市中の人々は弟子たちの活躍を

「アルトの采配」と勘違いして称賛していた。

アルトは苦笑するしかない。

「……勝手に伝説を作られるとは、思わなかった」


街を歩くと、商人や学者が近づき、熱心に話しかける。

「賢者アルト様、弟子たちをどう導いたのですか?」

「次の試練に備えて、特別な修行法を?」

アルトは言葉を選びながら答える。

「いや……特別なことはしていません。見守っただけです」


しかし、弟子たちは都市の注目を浴びることでさらに自信を深める。

リリスは魔法の閃光を街の広場で披露し、

カイは剣技の演舞で市民の喝采を浴びた。

アルトは横に立ち、静かに見守るのみ。

だが、街の人々はそれを「賢者の指導」と認識している。


昼下がり、アルトは小さな屋敷に戻り、弟子たちと作戦会議を行う。

「次の修行は、山脈の洞窟だ」

「洞窟? 楽しそう!」リリスは目を輝かせる。

カイも冷静に計画を練る。

「罠や魔獣がいるはずです。慎重に行動しましょう」


アルトは深く息をつく。

「……また、勝手に暴走するんだろうな」

しかし、弟子たちの自発的な成長は確かだった。

街での称賛が、彼らの実力をさらに引き上げている。


その夜、街の広場では人々が噂話に花を咲かせる。

「賢者アルト様、弟子たちを魔獣から守ったそうです」

「山脈の試練も突破したとか。本当に天才だわ」

アルトは小屋の窓からその様子を見つめる。

「……俺は、横にいただけなのに」


リリスが笑顔でアルトに近づく。

「明日も修行しますよ、アルト様!」

カイも剣を肩に掛け、静かにうなずく。

「俺も、さらに強くなる」

アルトは小さく笑った。

「分かった、ただし怪我だけはするな」


翌朝、弟子たちは街の市場を散歩していた。

人々が声を掛け、祝福の言葉を贈る。

「賢者アルト様、弟子たちと一緒にいるとは幸運だ!」

アルトは苦笑しながらも、少し誇らしい気持ちになる。


「……弟子たちは、もう俺の手をほとんど借りなくても

成長できる」

アルトはふと実感する。街の誤解は、弟子たちを

さらに強くし、結果的に都市を守る力になっていた。


アルトは小屋の窓から夜空を見上げ、思った。

「これが、追放された俺の新しい居場所なのかもしれない」

弟子たちは勝手に成長し、都市は騒ぎ、

俺は静かに観察する――

無能扱いの青年が、伝説の賢者として歩む日々は

まだ始まったばかりだった。


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