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第4話 賢者の噂


アルモニア市の街角には、ささやきが渦巻いていた。

「ねえ、聞いた? 山奥に賢者アルトがいるらしい」

「本当? あの無能扱いされた青年?」

都市の人々は、不思議そうな目で話し合う。

だが、その噂は徐々に確信に変わりつつあった。


アルト・シルヴァンは、弟子たちと共に街へ戻る途中だった。

リリス・フェンウェイは、元気よく話しかける。

「アルト様、みんな、私たちのこと絶賛してます!」

「いや……俺は何もしてないんだけど」

アルトは苦笑した。だが、噂の広まりは止められない。


街の広場に着くと、人々が集まり、アルトの姿に注目する。

商人も行き交いながら、声を潜めて話す。

「賢者アルト様が弟子たちを導き、魔獣を退けたんだって」

「山脈の試練を突破したって話もあるわ」


アルトはため息をつく。

「……何もしてないのに、伝説扱いか」

だが、弟子たちは誇らしげに胸を張る。

リリスが目を輝かせ、カイも静かに微笑む。


街の権力者、ノア・タルクスはこれを聞き、眉をひそめた。

「無能だったアルトが……まさか都市に名を轟かせるとは」

彼は都市の安全を理由に、アルトを警戒する。

しかし、証拠もなく、民衆はすでにアルトを英雄視していた。


その日、弟子たちは市民の質問に答える形で魔法や剣技を

披露した。リリスは炎の魔法で空に光の輪を描き、

カイは剣技で複雑な動きを見せる。

アルトは傍らで観察するのみ。口を出すことはほとんどない。


「素晴らしい……」市民たちは拍手喝采する。

アルトは少し顔を赤らめた。

「……いや、俺はただ、横にいただけで」

しかし、人々の目には「賢者が弟子を指導している」と映った。


その夜、広場の小屋に戻ったアルトは、静かに考え込む。

「追放された俺が、こんなことになるなんて……」

リリスが肩に手を置き、元気よく言う。

「アルト様、私たちもっと強くなります!」

カイも小さくうなずいた。

「俺も、さらなる修練を積む」


アルトは微笑むしかなかった。

「……分かった。怪我だけはするなよ」

弟子たちははしゃぎながら、次の課題に向けて準備を始める。


翌日、都市の噂はさらに広がった。

商人、魔法使い、学者、どの階層も「賢者アルト」の話題で

持ちきりだった。街の噂は誇張され、アルトの伝説は膨らむ。

魔獣を退け、弟子を導き、山脈の試練を突破した英雄――

誰もがそう信じて疑わない。


アルトは静かに眉をひそめる。

「……これは、俺が意図したものじゃない」

だが、弟子たちは都市の人々に称賛されることで、

自信と実力をどんどん伸ばしていた。

アルト自身も、知らぬ間に自分の存在価値を再確認する。


その日、アルモニア市の広場で、市民の一団が話す。

「賢者アルト様が、弟子たちを導いたのは偶然ではない」

「山脈の試練を突破したとは、まさに天才!」

アルトは、ただ静かにその光景を見つめる。

「……弟子たちが、勝手にやっているだけなのに」


こうして、無能扱いされた青年は、都市で伝説となった。

弟子たちの成長は止まらず、アルトの名声は加速度的に

膨らんでいく。山脈での試練が、彼の静かなる反撃の

序章であることを、まだ誰も知らないのだった。


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