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第2話 弟子たちの暴走


アルト・シルヴァンは、朝もやの残る山道を歩き

ながら、弟子たちの顔を思い浮かべていた。

「……俺は本当に、教える資格があるのか?」

胸の中でつぶやく。だが、答えは出ない。


リリス・フェンウェイは、元気いっぱいにアルトの

前を走り回っていた。両手を広げ、魔法の光を

ちらつかせる。小さな火の玉がぽんぽんと跳ねるたび、

木々が揺れる。


「アルト様、見ててください! これ、新しい魔法!」

「リリス……落ち着け。魔法は慎重に――」

アルトが言いかけた瞬間、火の玉は地面に落ち、

小さな爆発音とともに煙が上がった。


「うわっ!」

リリスは後ずさり、顔を赤く染める。

しかし、炎は奇跡的に何も燃やさなかった。

アルトは目を丸くする。

「……やっぱり、俺が教えたわけじゃないのに、

勝手に成長している……」


一方、カイ・レンフォードは静かに剣を振っていた。

山道の巨岩に向かって、鋭い切っ先を連続で打ち込む。

「カイ、それ、危険だろう。無理に力を入れるな」

アルトは制止する。しかし、カイの集中力は途切れない。


岩が砕け、砂煙が舞う。その様子を見て、アルトは

つぶやいた。

「……どうして俺はこんな目に遭うんだ。弟子たちは

勝手に成長するし、俺の評価だけが上がる……」


リリスが興奮気味に叫ぶ。

「アルト様! 次はこの魔法で大きな敵を倒せます!」

「いや、敵なんてまだいないから! まず落ち着こう!」

アルトの声は風にかき消される。


山道をさらに進むと、突然、魔獣が現れた。

巨大な四足獣で、灰色の鱗が光る。

「来たか……」アルトは小さく息を吐いた。

弟子たちの反応を観察するため、あえて指示は出さない。


リリスは魔法の光を飛ばし、魔獣に立ち向かう。

火の玉が命中し、魔獣は咆哮する。

カイは剣を構え、正確な斬撃を浴びせた。

魔獣は混乱し、ついに山道の先へ逃げ去る。


アルトは思わず息をつく。

「……俺、何もしてないのに、解決したな」

しかし、二人の弟子は満面の笑みでアルトを見上げる。

「見ましたか、アルト様! すごいでしょう!」

「え、いや……俺はただ、横にいただけで……」


その時、空から声が響く。

「おお、賢者アルト様!」

アルモニア市の使者が山道に到着したのだ。

弟子たちの活躍は、すでに都市に報告されていた。


アルトは慌てる。

「待て、誤解だ。俺は指示なんて――」

使者はうれしそうに言う。

「都市では、賢者アルト様が弟子たちを導き、

魔獣を退けたと噂になっています!」


アルトは頭を抱えた。

「……俺、伝説扱いされてる……」

弟子たちは目を輝かせ、アルトを尊敬の眼差しで見る。

「アルト様、これからも一緒に修行してください!」

「いや、俺は何も……」言葉が追いつかない。


夕暮れ、山道の景色が赤く染まる中、

アルトは思った。

「これから先、弟子たちの暴走はさらに加速する……」

だが、どこか心の奥底で、微かな期待も芽生えていた。

自分が無能とされた理由が、少しだけ報われる気がした。


こうして、無能扱いの青年は、弟子たちの暴走に

巻き込まれながらも、伝説への第一歩を踏み出した。

静かなる反逆の物語は、山道の霧とともに始まったのだった。


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