第10話 伝説の賢者としての最終試練
アルモニア市の空は、夕焼けに染まっていた。
アルト・シルヴァンは街の広場に立ち、深呼吸をひとつする。
「……これが、最後の試練か」
弟子たちは目を輝かせ、彼の周囲に集まった。
リリス・フェンウェイは元気いっぱいに跳ねる。
「アルト様、私たち、全力で挑みます!」
カイ・レンフォードは剣を軽く握り、静かにうなずく。
「俺も、限界まで力を出す」
アルトは肩をすくめ、小さく微笑んだ。
「……怪我だけは絶対にするなよ」
その時、都市の中心から警報が響く。
「魔獣が市街に侵入!」
民衆は恐怖で逃げ惑う。
アルトは静かに弟子たちを見る。
「……これは、俺たちの最終試練だな」
弟子たちは即座に行動を開始する。
リリスは魔法で空を飛ぶ魔獣を牽制し、
カイは剣で地上の魔獣を迎え撃つ。
アルトは指示を出すでもなく、後方から全体を観察する。
だが、弟子たちの動きは完璧で、魔獣を次々と制圧していく。
市民たちは驚嘆する。
「賢者アルト様、弟子たちを導き魔獣を撃退!」
「都市を守ったのは本当にアルト様だ!」
アルトは小さく息をつく。
「……俺、また何もしてないのに」
リリスは魔法の閃光を放ち、最後の魔獣を撃退する。
カイも剣で正確な一撃を決める。
民衆は歓声を上げ、広場は拍手喝采に包まれる。
アルトは肩をすくめ、苦笑した。
「……勝手に英雄が完成するとはな」
その夜、都市の広場では人々が話題を交わす。
「賢者アルト様、伝説通りだ!」
「弟子たちを導き、都市を守った!」
アルトは静かに見守る。
「……俺は横にいただけなのに」
リリスが目を輝かせ、アルトに近づく。
「アルト様、私たち、これで一人前ですよね?」
カイも静かにうなずく。
「俺も、強くなれた気がする」
アルトは小さく笑う。
「……分かった、怪我だけはするな」
翌朝、都市は伝説の賢者アルトを称える式典で賑わう。
市民、商人、学者、どの階層も弟子たちとアルトを讃える。
アルトは弟子たちの成長を静かに見つめる。
「……追放され、無能扱いされた俺が、こうなるとはな」
リリスは肩に手を置き、笑顔で言う。
「アルト様、これからも一緒に修行しましょう!」
カイも剣を肩に掛け、静かに微笑む。
「俺たち、さらに強くなります」
アルトは胸の奥で小さく誇りを感じる。
「……これが、俺の新しい居場所かもしれない」
ルイアン・ベイルも広場に現れ、静かに頷く。
「君の力は、弟子たちと共に真価を発揮した」
アルトは軽く頭を下げる。
「……ありがとう、だが俺はただ見守っただけだ」
民衆の目には、アルトは間違いなく伝説の賢者だった。
夕暮れ、街の灯りが星のように輝く中、
アルト・シルヴァンは弟子たちと共に歩く。
「無能と呼ばれた俺が、伝説になった」
勝手に英雄を作る弟子たち、都市での称賛、
そして自分の存在価値。
全てが、静かに、しかし確かに繋がった日々だった。
こうして、アルト・シルヴァンの物語はひとまず幕を閉じる。
弟子たちは自らの力を証明し、都市は安全を取り戻す。
無能扱いの青年は、伝説の賢者として静かに笑みを浮かべる。
彼の静かな反撃は、今日もまた、確かな光となったのだった。




