表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
関ヶ原に棲む悪魔  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/14

第12章 処刑:英雄の終わり

 秋の空は澄み渡り、

 その青さが残酷なほど美しかった。


 石田治部少輔三成は、

 護送されながら静かに歩いていた。


 縄で縛られた手。

 疲れ切った身体。

 だが、その眼差しには曇りがなかった。


 (刑部……あなたは、あなたの正義を貫いた)


 治部は、吉継の死を聞かされていた。


 「大谷刑部少輔は、あなたを思って自害したのだ」と。


 治部はその言葉を聞いたとき、

 涙を流した。


 だが、その涙は悲しみではなかった。


 (刑部。

  あなたは最後まで、私を支えてくれたのだな)


 治部は、吉継の“真実”を知っていた。

 吉継が家康側と通じていたことも。

 吉継が自分を利用していたことも。


 だが、恨みはなかった。


 (刑部は、刑部の正義を貫いた。

  私が私の正義を貫いたように)


 処刑台が見えてきた。


 群衆がざわめき、

 石を投げる者もいた。


 だが治部は、静かに微笑んだ。


 「皆の者。

  私は、正しさを貫いた。

  それだけだ」


 その声は、敗者のものではなかった。

 **正義を貫いた者の声**だった。


 処刑人が刀を構えた。


 治部は最後に、空を見上げた。


 (刑部。

  あなたは、どこかで見ているだろうか)


 治部は、静かに口を開いた。


 「大谷刑部少輔は――

  善人であった」


 その一言が、

 群衆の空気を変えた。


 処刑人の手が震えた。

 見物人たちはざわめき、

 やがて誰かが呟いた。


 「……大谷殿は、忠義の士だったのだな」


 その呟きは、

 瞬く間に広がっていった。


 治部は微笑んだ。


 (刑部。

  これでいい。

  あなたの悪は、永遠に隠れる)


 刀が振り下ろされた。


 治部の身体は崩れ落ちたが、

 その言葉は生き続けた。


 ――大谷刑部少輔は善人であった。


 その言葉が、

 後世の史料を形づくり、

 美談を生み、

 吉継の悪を完全に覆い隠した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ