内部人材の台頭
領地生え抜き研究者
フィリア領――原種管理区画・観察棟。
そこでは今日も、静かな作業音が続いていた。
紙をめくる音。
土を測る音。
魔力反応を記録するペン先。
中心にいたのは――
領地で育った人間たちだった。
■ 最初の変化
「……あれ?」
若い青年が、記録を二度見する。
「青天麦、同じ畝なのに成長差が出てる」
「水量は同じ?」
「同じです。土壌……いや、微量魔力の分布か?」
彼らは、王都から来た研究官ではない。
・元・農家の次男
・寺子屋一期生
・木工見習いから転向した観察担当
フィリア領で学び、育った人材だった。
■ “研究”が日常になる
「仮説を立てよう」
「数字で見よう」
「失敗も記録しよう」
それは、フィリアがずっと言い続けてきた言葉。
誰かが特別扱いされることはない。
肩書も、血筋も、関係ない。
「結果があれば、意見は聞く」
その文化が――
静かに根付いていた。
■ フィリアの気づき
ある日、フィリアは観察棟を訪れた。
「……あれ?」
想定より、作業が進んでいる。
「これ、誰が考えたの?」
青年が一瞬緊張し、答える。
「えっと……皆で話し合って」
フィリアは、ぱちぱちと瞬きをした。
(……私、指示してない)
それは――
自走だった。
■ ガルドの評価
後で、ガルドが静かに言った。
「フィリア。これはもう、“人を育てた結果”だ」
「……うん」
「王都の研究官が来ても、主導権は簡単には渡らんぞ」
フィリアは、小さく笑った。
「渡さないよ」
■ 内部から生まれる“盾”
この日を境に。
フィリア領では――
王都の研究官を“迎える側”ではなく、
対等に議論できる内部研究者が、明確に育ち始めた。
それは、武力ではない。
命令でもない。
だが確実に――
この領地を守る、新しい力だった。
フィリアは、心の中で思う。
(……これが、私の領地)
守るべきものは、もう植物だけじゃない。
人も、だ。




