王都内部の温度差
王都――中央政務院。
長い机を囲み、複数の役職者たちが顔を揃えていた。
議題はただ一つ。
「原種管理地の今後」
だが、その空気は――決して一枚岩ではなかった。
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■ 推進派
「成果は明白だ」
農務大臣が、資料を机に広げる。
「青天麦は試験農場で再現性を確認。銀光豆も保存性に問題なし。
蒼霧草についても、軍医局が“現行薬草を上回る”と評価している」
学術院の若手研究官も続く。
「原種の管理が徹底されているからこそ、改良も段階的に進められる。
フィリア領は、理想的な管理地です」
「ならば――」
宰相が静かに口を開いた。
「管理体制を維持したまま、国として支援を厚くすべきだろう」
■ 慎重派
しかし、反対側から声が上がる。
「……それが“一地方領”であることが問題なのだ」
発言したのは、古参貴族出身の官僚だった。
「原種を一領地に集中させるなど、危険すぎる。もし反乱、事故、災害が起きたらどうする?」
「管理者が“子供”である点も見逃せん」
別の者が続く。
「才能は認めるが、年齢は事実だ。判断力をどこまで信用できる?」
空気が、重くなる。
■ 中立派(様子見)
「……結論を急ぐべきではない」
王直属の調整官が、両者を制した。
「今のところ、フィリア領は規則を守り、結果を出している。問題は“これから”だ」
・外部圧力に耐えられるか
・内部不満が噴き出さないか
・王命と領地判断が衝突しないか
「王都が過度に介入すれば、逆に歪みが出る」
宰相は小さく頷いた。
「……つまり」
「温度差があるうちは、静観です」
■ 王の一言
その時、これまで沈黙していた王が口を開いた。
「……あの子は」
一同が、息を呑む。
「“守る”と決めた場所を、簡単には手放さぬだろう」
王は静かに続けた。
「だからこそ、王都も試されている。――力で奪うか、信頼で繋ぐか」
会議は、その言葉で締められた。
だが――
王都内部の温度差は、確実に広がり始めていた。




