赤ちゃん、ローガル家の財政を救いたい!?だけど伝わらない問題
ローガル家が 意外とビンボー だという衝撃が発覚して1日。私はベビーベッドの中でじーっと天井を見つめていた。
(……どうにかして、稼がねば……!)
赤ちゃんとは思えない使命感が胸に燃える。
もちろん私はまだハイハイもおぼつかない赤ちゃん。でも、異世界転生者としてできることがある……はず!
(まずは、家族に「稼ぐ方法があるよ」って伝えなきゃ!)
そう思った私は、父様に向かって腕を伸ばした。
「ばぶっ!!(※聞いて!)」
「フィリア、抱っこか?よしよし」
(違う!まずそこじゃない!)
だが赤ちゃん語は父様にとって “可愛い音” 以上の意味を持たない。
そこで私は考えて!!まずはコレ!!!
■1.ジェスチャーで伝える作戦
私は、魔力でピカっと光る小石を浮かせた。
(これを売れば儲かる!)
「ばぶー!(=これ光るよ!売れるよ!)」
しかしミュネは目を輝かせて叫んだ。
「フィリア様すごいですにゃ!また新しい遊びを覚えたんですにゃ!?」
(遊びじゃない!!経済効果!)
私の必死のジェスチャーは、完全に「可愛い赤ちゃん芸」として処理された。
次の作戦は!!
■2.絵で伝える作戦
次は母様の執務室で、紙に魔力でじわ〜っと絵を描く。
(畑→成長→売れる→お金!)
絵が完成すると、母様が優しい笑みで言った。
「まあ……可愛い野菜の絵♡」
(違う!これは経営案!!)
赤ちゃんの描いたものは何でも「可愛い」で片付けられてしまうのだ。
次の作戦は!!!
■3.ミュネにだけは伝わるかも作戦
ならば猫族で感覚が鋭いミュネなら……!
「ばぶっ、ばぶばぶ!(※領地の魔力肥沃化で収穫量アップ→商業拡大→税収増だよ!)」
ミュネは真剣に私の顔を覗き込む。
(伝われ……!)
「……フィリア様……」
(きた!?)
「今日もとっても可愛いですにゃ♡」
(伝わらなかったーーーー!!)
ミュネは頬をスリスリしてきて、議論どころではない。
次の作戦は!!!!
■4.それでも奇跡は起きた
そんな私のもがく姿を見て、レオン兄様がぽつり。
「……もしかしてフィリア、何か伝えたいの?」
(兄様!?)
兄様は頭はあまりよくないが、家族のことには敏感だ。
「お金のこと……心配してくれてるの?」
(そう!!それ!!兄様今日は天才!!)
兄様はドヤ顔で言った。
「分かった!僕がいっぱい食べて元気になるね!」
(そっちじゃないーーーーー!!!)
次の作戦は!!!!!
■5.でも、少しだけ前進した
しかし父様と母様は、兄様の言葉に首をかしげた。
「……フィリアが心配しているように見えた、か?」
「まあ……あの子は不思議なタイミングで泣いたり笑ったりするけれど……」
そして父様は私を抱いて言った。
「……よし。無理に贅沢せず、堅実に暮らす努力をしよう」
(……ちょっとだけ、伝わった?)
さらに母様は私を頬ずりしながら微笑む。
「フィリアのためにも、領地をちゃんと立て直さないとね」
(うん……よかった)
赤ちゃんだから言葉は通じないけど、それでも少しだけ気持ちが伝わった気がして。
私は「ばふぅ(=がんばろうね)」と小さく呟いた。
ミュネがしっぽをゆらゆらさせながら言う。
「……フィリア様が笑えば、きっと領地も明るくなりますにゃ♪」
(それはちょっと……責任重いけど……まぁいっか)
――こうして、赤ちゃんなりの経済改革(?)はゆっくり進み始めた。




