表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名家の末娘に転生したので、家族と猫メイドに愛されながら領内を豊かにします!  作者:
守る仕組み

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/105

外部の“次の一手”が見え始める

原種管理地としての内部ルールが発布され、

それが“実際に守られた”という事実が、領内に静かに浸透してから数日。


領地は、一見すると落ち着いていた。


作業は通常通り進み、

原種区画では監視と記録が淡々と続き、

学校では子供も大人も机に向かっている。


だが――

その静けさは、嵐の前のものだった。


■ 封緘使の違和感


最初に“何かおかしい”と感じたのは、封緘使だった。


「……報告書が、増えています」


執務室で資料を整理しながら、低い声でそう言う。


「増えてる?」


フィリアが顔を上げる。


「はい。王都から届く“照会”が、微妙に変わってきています」


書簡を一枚、机に置いた。


・原種管理地の警備体制

・登録制の運用方法

・研究記録の保管年数

・立ち入り拒否時の対応基準


「……全部、もう提出した内容だよね?」


「ええ。ですが――質問の仕方が変わっています」


ガルドが腕を組んだ。


「探りを入れてきている、ということか」


封緘使は頷く。


「“規則を破らせる”のではなく、“規則の隙を探す”段階です」


空気が、少しだけ張り詰めた。


■ 王都の“空気”


同じ頃、王都では。


正式な対立も、抗議も起きていない。

だが、水面下では確実に動きがあった。


「フィリア領、思ったより硬いな」


「子爵家を引かせたのは、想定外だ」


「王命を盾にされた以上、正面からは動けん」


そんな会話が、貴族の私室や商人の集まりで交わされていた。


注目されているのは、ただ一点。


原種管理地が“閉じている”という事実。


「……独占ではない、と言い切れないだろう?」


「登録制だ。登録できなければ触れない」


「だが、登録基準は領地が決めている」


不満は、まだ言葉にならない。

だが、確実に溜まり始めていた。


■ 領内に届く“間接的な圧”


その変化は、少しずつ領内にも現れ始める。


「フィリア様、商人からの問い合わせが増えています」


「内容は?」


「“加工前素材だけでも買えないか”

 “研究用の少量譲渡は可能か”

 “視察の同行者を増やせないか”……」


フィリアは、深く息を吸った。


「……全部、ルールに触れるね」


「はい。ですが、どれも“ギリギリ触れない言い方”です」


ガルドが苦笑する。


「露骨な違反ではない。だが、狙いは明確だな」


“例外を作らせたい”。


それも――

こちらが断りにくい形で。


■ フィリア、理解する


フィリアは、しばらく黙ったまま考え込んでいた。


「……ねぇ」


「なんだ?」


「これってさ」


小さな手で机を指し示す。


「“奪いに来てる”んじゃないよね」


封緘使が答える。


「はい。“引き出そう”としています」


「力じゃなくて?」


「交渉、慣例、同情、効率、国益――いろんな言葉を使って、です」


フィリアは、ぽつりと言った。


「……大人のやり方だ」


ガルドは、その言葉に一瞬、目を細めた。


「そうだな」


■ 内部を試さず、外から削る


封緘使が続ける。


「内部規律が固いと分かった以上、次は“内部を揺らさずに外から削る”動きになるでしょう」


「例えば?」


「研究協力という名目での人材派遣要請。

 流通網を押さえる提案。

 あるいは……」


一拍置く。


「“国益のために協力すべきだ”という圧です」


フィリアは、ぎゅっと唇を結んだ。


(来るって分かってたけど……)


(ちゃんと、来るんだ)


■ フィリアの決断(静かなもの)


「……でも」


顔を上げる。


「ルールは変えない」


「はい」


「守るって決めた場所だから」


ガルドが、ゆっくりと頷いた。


「では、次は――」


「“想定”を増やそう」


フィリアは、はっきり言った。


「どう来られても、迷わないように」


■ じいじ、ぼそっと言う


その夜。


じいじは茶を飲みながら、ぽつりと呟いた。


「……昔はな。

 何もない土地は見向きもされんかった」


「うん」


「だが、“価値がある”と分かった途端、今度は皆が“正しい顔”で手を伸ばしてくる」


フィリアは、静かに答えた。


「だから――手を伸ばせないように、枠を作った」


じいじは、ふっと笑った。


「二、三歳のやることじゃないのぅ」


「言わないでって言ったでしょ」


■ 次の波は、静かに来る


この時点で、まだ衝突はない。


拒否も、対立も、声高な抗議も。


だが――

外部は、確実に“次の一手”を考え始めていた。


正面からは来ない。

だが、引き下がりもしない。


それを、フィリアは理解していた。


(守るって、こういうことなんだ)


作るよりも、

増やすよりも、

ずっと難しい。


フィリアは、小さく息を吐いた。


「……よし」


次に来るのは、

“交渉”か、“要求”か、

それとも――“善意”の顔をした圧力か。


どれであっても。


ここは、もう揺らがない。


原種管理地は、

外から見て「簡単ではない土地」になった。


そしてそれは――

本当の意味で、国に認識された瞬間でもあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ